国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

振り返らなくても帝王はいる

2009年08月05日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
マイルスの『ビッチェズ・ブリュー』の
「スパニッシュ・キー」が分かったのは車の中だった。
それまでは今ひとつピンとこなかった。
ところがある日、車で「スパニッシュ・キー」を聴いていた時、
天から啓示が降りるように、全身に衝撃が走った。
等々力警部のように「分かった!」と手を叩きたい気分だ。
それまでバラバラに感じていた音が、
ピタリとある場所にはまり、
全体が大きな流れを作っていたことが分かり、驚愕ものだった。

さて、今日、車の中で「ビビビッ」と走り抜けたのが、
『ウィー・ウォント・マイルス』である。
1曲目の「ジャン・ピエール」の良さがどうもよく分からなかった。
『フォー&モア』のように疾走感があるわけでもない。
テーマもどこか脳天気で、少々ポップ気味でもある。
でもそれは僕がちゃんと聴き取れていなかっただけのこと。
自分の耳の悪さを棚上げして、
「ジャン・ピエール? 分かんないなぁ~」なんてマイルスに失礼この上ない。
ホントにスミマセンでした。

マーカス・ミラーのベースが「ドゥン・ドゥン」と低い唸りを上げながら
リズムを取っていく。
そこにアル・フォスターが乗れば
おのずと道にいる人々が脇に避けていくだろう。
そこに帝王の登場である。
静かに、威厳を崩さずクールにトランペットを吹くマイルスは、
まさに帝王の名に相応しい振る舞いだ。
しかもマイルスが吹く、吹かないにかかわらず、
曲全体がマイルスの支配下にしっかりと置かれていて、
金太郎飴のようにどこを切っても、マイルスの音しか聞こえてこないのだ。

実際にはPDのテオ・マセロの編集がずいぶんとあるようだ。
だがこれはこれでライブにはない
コンパクトながらもダイナミックな音楽を聴くことができる。
まさにそこにあるのは「マイルス・ミュージック」なのだ!!