国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

催眠術師の作り上げる曲たち

2010年02月17日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
バリトンサックス奏者のジェリー・マリガンは、
ある人物があまりにも絶妙にバンドメンバーを操るために
感嘆の意味を込めて「スヴェンガリ」と
ある小説に出てくる催眠術師のあだ名を付けた。
このあだ名はあまりにもよく考えられており、
そのある人物のアナグラムになっている。

「GIL EVANS」→「SVENGALI」

名アレンジャーとして名高く、
帝王マイルスが最後まで心許せる友として名を挙げている人物、ギル・エヴァンスである。

僕はギル・エヴァンスという人が何をしているのか全く分からなかった。
アレンジャーという人がいかに意味があるか理解するのはなかなかに難しい。
同じエヴァンスつながりで、
「ビル・エヴァンスの親戚?」と最初は思っても仕方がない。
(実際にギルもピアノを弾いているのだが、関わりはどうやら…ないようだ)
まぁ、既存の曲に手を加えて、よりスリリングに、
より情緒的に、より素晴らしくしていくのが
アレンジャーの仕事ととらえておけば大丈夫だろう?
ギル・エヴァンスの有名作には
クラシックの名曲「アランフェス協奏曲」をアレンジして
マイルスと作り上げた『スケッチ・オブ・スペイン』がある。

さて、今日のアルバムはギルに付けられたあだ名がタイトルの『スヴェンガリ』である。
アレンジャーであるためリーダー作のアルバムは多くない。
ここにはビックバンドジャズとまた違ったギル・エヴァンスバンドがある。
不思議な明るさと底が抜けるような不安との間にかかった一本橋と例えようか。
新しい響きを求めて、ギル本人もピアノとして参加をしながら、
試案を続け、構成していく様が伝わってくる。
練り上げられていく曲は、中央でぐーっと天へと引き延ばされていくような感じだ。

いつの間にか催眠術師の手の内で快楽を覚える自分がいる。