東京災害支援ネット(とすねっと)

~おもに東京都内で東日本太平洋沖地震の被災者・東京電力福島第一原発事故による避難者支援をおこなっています~

原発事故による母子避難者等に対する高速道路の無料措置に関する要望書

2013年07月03日 11時21分45秒 | とすねっとの要望書

                       とすねっと要望書第43号

平成25年7月3日

原発事故による母子避難者等に対する高速道路

の無料措置に関する要望書

国土交通大臣 太田昭宏 殿

 

             東京災害支援ネット(とすねっと)

               代 表(弁護士)  森 川   清 

             東京都豊島区駒込 1- 43- 14 SK90 ビル 302

              森川清法律事務所内 (連絡先電話)080-4322-2108

 

私たちは、東日本大震災の被災者及び福島原発事故の被害者の支援に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです(代表・森川清弁護士)。インターネットやブログ等を通じて被災者に必要な情報を提供するとともに、無料の電話相談や、避難所や被災者に提供された公営住宅や旅館・ホテルでの訪問相談、避難者等に対する物資支援・子育て支援等の活動を行っております。

 

要 望 の 趣 旨

 

1.平成25年4月12日に御省より公表されました「原発事故による母子避難者等に対する高速道路の無料措置」(以下「本件無料措置」といいます)につきまして、警戒区域以外の福島県浜通り・中通り(具体的には、中通りは福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、郡山市、須賀川市、田村市、鏡石市、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町、白河市、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村の29市町村・浜通りは相馬市、南相馬市、新地町、いわき市の4市町村)又は宮城県丸森町に限定せず、放射線量の影響が懸念される地域を、福島県外も含めて広範囲に対象地域とする措置を要望いたします。

2.「本件無料措置」の対象者につきまして、原発事故発生時に福島県浜通り・中通り(原発事故による警戒区域等を除く)又は宮城県丸森町(以下「対象地域」)という。)に居住しており、原発事故により避難して二重生活を強い  られている母子避難者等(妊婦を含む)及び「対象地域」内に残る父親等(妊婦の夫を含む)に限定せず、(1)すべての避難世帯を対象とし、(2)対象地域の住民で一時避難や週末避難する場合も認める措置を要望いたします。

3.「本件無料措置」の実施期間(平成25年4月26日0:00~平成26年3月31日24:00)につきまして、平成26年3月31日24:00までとせず、少なくとも放射線の子供達に与える影響が、科学的に解明されるまでの間継続する措置を要望いたします。

4.「本件無料措置」の対象走行区間を東北自動車道、常磐自動車道等の対象路線に限定しないこと及び途中乗車・下車を認める措置を要望いたします。

5.「本件無料措置」の申込方法である証明書の交付申請につき、特段の事情が無くても郵送申請を認める措置を要望いたします。

 

要 望 の 理 由

 

1.「本件無料措置」について

  御省が公表されました「本件無料措置」は、これにより母子避難者等の家族が会うための負担が緩和され、家族と会いやすい環境が整えられたといえるため、一定の評価をいたします。

  しかし、以下の理由により今回の「本件無料措置」は十分ではないと考えます。

 

2 「本件無料措置」が十分でない理由

(1)対象地域が警戒区域以外の福島県浜通り・中通り又は宮城県丸森町に限定されている点

 

   原発事故により広域避難をする家族の多くは、放射線に対する感受性が高いとされる年少者や妊婦を県外にやむを得ず避難させながら、生計を維持する者が被災地や被害地に留まり就労するという避難形態をとっています。このため、現在被災地と避難地との二重生活を送らざるを得ず、こうした家族の多くは、高速道路を利用して週末に再会している状況です。

   しかし、二重生活は食費・水道光熱費等ただでさえ出費が嵩むうえ高速料金を自己負担するとなると、避難世帯特に東京電力からの補償が充分でない区域外避難者の家計は圧迫されてしまいます。

   こうした経緯から二重生活の負担軽減を図り、避難により分断された家族の再会を支援すべく御省は、「本件無料措置」を実施されたものと思われます。そうだとすると、対象地域を上記地域に限定する理由はありません。すなわち、上記地域以外の区域外避難者も、放射線が年少者や妊婦に与える影響の程度が科学的に解明されていない中、将来起こり得るかも知れない生命や身体に対する影響を恐れ止む無く避難したという点では対象地域の方々と全く同様である上、「対象地域」の方々より更に補償が充分ではないため、この方々の二重生活による負担の軽減を図る必要があると考えます。

   また、こうした方々は週末の高速道路を利用して再会することで、家族の絆をかろうじて維持して来られたのですが、今後家計の圧迫が進むと週末の再会を控える家族が現れることも容易に想定でき、家族の絆に影響を与えかねません。

   こうした見地から、「本件無料措置」の対象は「対象地域」のみならず放射能の影響が懸念される地域を、福島県外も含めて広範囲に設定していく必要があります。

   

(2)対象者が二重生活を強いられている母子避難者等に限定されている点

 

   御省は、「本件無料措置」の対象者を「対象地域」に居住しており、原発事故により避難して二重生活を強いられている母子避難者等(妊婦を含む)及び「対象地域」内に残る父親等(妊婦の夫を含む)に限定しております。

   しかし、このような限定がなされると例えば子が学校の都合などで父母双方と離れて暮らしている場合、「本件無料措置」適用されないことになります。このような子どもたちも、週末に再会することによる家計の圧迫の恐れが生じ得る上、週末の再会の差し控えにより家族の絆に影響を与える点においては、「本件無料措置」の対象者である母子又は父子避難者と同様です。

   そもそも、二重生活による負担の軽減を図るという「本件無料措置」の趣旨からするならば、対象者を限定する理由はありません。

従いまして,「本件無料措置」の対象者はすべての避難世帯を対象にすべきであると考えます。

   また、週末や夏休みなど長期休暇の際に一時的に避難している方々もいます。この方々は、広域避難までは出来ないが、少しでも子どもの被ばくの累積量を減らしたいという思いから週末や長期休暇等を利用して一時的に避難をしています。

この方々が、「本件無料措置」の対象にならないとすると、家計負担の圧迫が進み一時的避難をあきらめざるをえなくなり、「本件無料措置」の対象者と類似の不都合が生じる恐れがあります。

そこで、このような対象地域の住民で一時的避難や週末避難する場合も「本件無料措置」の対象者に含めるべきであると考えます。

 

(3)実施期間が平成26年3月末日とされている点

 

   そもそも、現在は放射線の子どもたちに与える影響が科学的に解明されていない上、除染も進んでおらず且つ除染自体に本当に効果があるかについても疑問視されている状況にあります。

このような危険かどうか判明しがたい状況にある以上、避難や一時的な避難は、危険の見極めのためおのずと長期的にならざるを得ません。

そこで、「本件無料措置」は平成26年3月末日まででは十分とはいえませんので、少なくとも放射線の子どもたちに与える影響が科学的に解明されるまでの間、期間を定めずに継続する必要があると思います。

   また私たちは、これまで避難者の方々を対象にアンケートを実施して参りましたが、いずれも東北地方の高速道路の無料開放期間の延長を要望するものは7割近くを占めています。

   このような点からも、実施期間の延長を要望いたします。

 

(4)対象走行区間が東北自動車道、常磐自動車道等に限定されている点及  び途中乗車・下車が認められていない点

 

   「本件無料措置」の対象走行区間からは、NEXCO以外である首都高速、阪神高速及びNEXCO均一区間である東京外環道、山形自動車道、日本海東北道(湯殿山IC~酒田みなとIC)、米沢南陽道など、福島県・宮城県内のNEXCO路線と別料金の高速道路が外されています。

    しかし、首都高速や東京外環道などが利用できないと東京・神奈川以西から東北への行き来は遠廻りを余儀なくされ、時間がかかり過ぎることから家族が再会することが困難になります。

    また、山形自動車道、日本海東北道(湯殿山IC~酒田みなとIC)、米沢南陽道など福島県からの避難者が多いとされている地点の高速道路が利用できない点も現実的ではありません。

    そもそも、二重生活の負担軽減を図るべく「本件無料措置」を講じた趣旨からすれば、(対象走行区間を限定すると、対象走行区間外の方々は負担が重くなるのであるから)、むしろ対象走行区間に限定を設けるべきではありません。

    そして、こうした取り扱いを行う理由は、不正利用を防止する点にあるとのことですが、今の状況では特に神奈川以西に避難された方々の家族同士を会いやすくするための配慮を、まずは優先すべきであり、不正利用者は別に取り締まることで足りると考えます。

    また、避難元から避難先の往復は長時間運転になる方々もいらっしゃることが予想されるところ、途中乗車・下車が認められないとすると、例えば長時間運転で疲れてビジネスホテル等へ宿泊したい場合でも、下車すると負担がかかることからそのまま走り続けるという運転手にとって危険な事態が想定されます。

    そこで、対象走行区間は限定を設けず、途中乗車・下車も認めるべきと考えます。

  

 

(5)申込方法としての証明書の交付申請が、避難元市町村窓口への直接提出が原則とされている点

 

  「本件無料措置」の申込は、避難元市町村窓口への直接提出が原則とされ

ており、郵送は特段の事情が無ければ認められていません。

   しかし、平日は仕事で窓口へ行くことが出来ないという方々が予想され、

このような方々が、申込を躊躇するとすれば「本件無料措置」の二重負担の

軽減を図るという趣旨は没却されます。

 また、現在福島市やいわき市は郵送による取扱いを原則として受け付けて

いることからしても、実施が困難であるとは考えられません。

 そこで、「本件無料措置」の申込方法である証明書の交付申請につき、特段の事情が無くても郵送申請を認めるべきであると考えます。

 

3.結論

  

  現在避難・一時避難されている方々は、自分自身に対する危険回避ではな

く子どもたちのこれからの生命・身体への影響を恐れ、避難・一時避難を実施

しています。子どもたちは、将来の日本を担う主権者であり、大人である私た

ちはこうした子どもたちを保護して行く責務があると考えています。特に、少

子化が進んでいる今なら尚更保護して行くべきではないでしょうか。

 以上の次第で、御省が公表した「本件無料措置」につきまして、要望の趣旨

記載のとおり拡大していただきますよう要望申し上げます。

 

以上

 


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