![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/74/9b65a06fd35606b31368ea8d9f0025c5.jpg)
北京に続いて上海でも領事館による講演会があったので、聞きに行ってきました。
北京にある大使館の書記官(環境省出身)と医務官、それぞれの講演と、質疑応答で1.5時間。
情報としては目新しいものはそれほどなくて、感想としては中国政府の発表をなぞっているだけ、という感じもありました。
でも、医務官による健康被害のお話は十分怖かったし、上海在住参加者の意見が直接聞けたのは良かったです。
書記官は大気汚染による景色の見え方の違いや、ご自宅の空気清浄機の1か月使用のフィルターを画像で紹介していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/4e/46128a7e87a1fc381469db0f6b5ae949.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/3b/ad8ff2c7f951179053afa4138466d69d.jpg)
北京の講演の際は、この写真を見ながら「自分の子供の肺がこうなっているかと思うと、ぞっとする」と仰ったようですが、今回は何もなし。
怖い事言って、あとで怒られたんですかね。
こっちに住んでる人だいたい知ってるよ、という情報を除いて、いくつか知識が増えたのでご紹介します。
・PM2.5は水に溶けやすいので、室内では水拭きが有効
・PM2.5の測定には、1立方メートルの箱の重さを精密な機械で測定する。(粒子状物質の数を測定)
・SPRINTARS では汚染物質の飛来予報が動画で見られる。(下記参照)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/85/c0ed072a0e73341a5ee02f84a29e6855.jpg)
・アメリカ(および日本)と中国のPM2.5濃度に対する指数基準が違うので、それぞれの国発表のAQIが違う。(下の表を参照)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/b4/88c40877ce23255ed76981f58fcf83c6.jpg)
質疑応答では30分の時間では足りなくなるほど、いろんな意見や質問が出ました。
それをいくつか。
Q 以前から空気は汚れていると感じるが、この1月に非常に汚染が進んだというのは本当か?
A この冬は悪い気象条件が重なり、特にひどい状態になったのは事実。
Q 花粉症のマスクでは防げないか?
A 通常のマスク(サージカルマスク)では、微粒子であるPM2.5を20~30%しか防げない。ただし、PM2.5は角度のついた場所に弱いので、マスクの角度やひだで減らす効果はある。
Q PM2.5は水に弱いとの話があったが、それゆえ飲料水が影響されているという心配は?
A 今後の長期的データを取らなくては分からない。が、中国の場合は水や野菜そのものの汚染(農薬など)の方が深刻だと思う。
Q エアコン・加湿器・空気清浄器を使うのはどうか?
A PM2.5は水に弱いので、加湿器は効果的。エアコンや空調は外気を取り込むし、フィルターもPM2.5には(おそらく)対応していないので、汚染がひどい日には使用を控える、または出力を弱める方が良い。
Q 上海の中で具体的にどのエリアが汚染がひどい/どのエリアより汚染が広がっているのか?
A 拡散しているので、全体が汚染されている。
Q 建物の高さや方向により、汚染の違いはあるのか?
A 海の近くであれば、空気の流れがあり比較的軽微かもしれない。
Q 目視で汚染度合いを判断するのはOK?
A 目視もある程度確実だが、加えて発表データの確認を。
Q N95を上海で求めようと思っても、偽物が多い気がする。どこできちんとした物が買えるのか情報提供を。
A 「3M」はホームページを通して購入できるので安心だが、それ以外は周囲と情報交換をして頂きたい。
Q N95はとても高価。子供用も少ない。政府で、領事館を通してマスクの安価販売や配布はできないのか
A 領事館では情報提供に努めるが、健康を守るための出費は必要なので、個人レベルで対策を。
Q インドなど近隣国からの流入があるのではないか?
A 現在モニタリング中
Q 中国の発表数値を鵜呑みにしているようだが、数値に疑問を感じる事も。日本で独自に観測しないのか?また、日本人学校の屋外活動基準を、米国大使館測定値にするなども必要ではないか?
A 米国の測定は市内1か所であり、それを基準とするのは難しい。(日本の独自観測についてははっきりした回答なし)
Q 製造業として工場停止などの政策はつらい。(事実、北京で数日間の稼業停止があり、多額の損失が出た)ある場合は事前に知らせて頂きたい。
A 事前通告については中国へ要請している。
Q PM2.5の暴露により、肺ガン発症などのリスクはいつまで続くのか?
A 長期的データがないので分からないが、PM2.5が25→75に増えると、死亡率が5%上がるというデータはある。
まぁ、政府側としてはこう答えるだろうな、という回答が多いですけどね。
書記官の方が「我々は被害者ですが、同時に加害者でもある」と仰っていたのが印象的でした。
中国の今の状況は、日本でも高度成長期に通ってきた道です。
今、なぜ急に中国がこんな事になってしまっているかというと、一部の責任は土地や人件費の高い日本から大陸に進出した日本企業にもあるのかもしれません。
もちろん、そこには大陸人のモラル問題や急激な人口・産業の上昇など複雑に問題が絡み合ってきます。
ただ、2ちゃんねるとかに書かれてるように「共産党のせいだ」とか「中国人が悪い」と一概に決めつけてしまって良いのか、というのは感じます。
私がいちばん怖いと感じてるのは、PM2.5の健康被害について長期的データがないから具体的には分からないという点。
どうしてもアスベスト問題を連想してしまいます。
数十年後に「あの時にもっと早く中国を去っていさえすれば」などという後悔をする事になるのが怖いのです。
家族は日本に帰る、という選択肢ももちろんありますが、上海は北京ほどに問題が深刻だという雰囲気になっていない事や(N95を使用する人も少ないです)子供たちを父親と離すリスクと天秤にかけて、結果そこまでには至らないのが事実。
それと心情的には、汚して見捨てて帰る、というイメージに繋がってしまうのもあります。
政府は助けてくれないって事は、よ~く分かりました。
はっきり仰ってました。
「健康への投資は惜しまず、健康をご自分で守ってください」と。
上海ではさほど深刻だという雰囲気がないんですが、数値が高い時はN95を使う、情報を細かくチェックする、など、やはり欠かせないと感じました。
後悔したくないですからね!