寅の子文庫の、とらのこ日記

本が読みたいけど本が読めない備忘録

秘録北満永久要塞~関東軍の最後を読む。

2010年08月15日 18時36分54秒 | 15年戦争
今日は65回目の終戦記念日。
日本は昭和20年8月15日、連合国に無条件降伏して太平洋戦争は終った。
しかし満州の東北端、ソ満国境に構築された永久要塞=虎頭要塞では今まさに死闘が展開されていた。2個師団2万人のソ連機械化兵団を相手に2週間以上持ち堪えた満州第15国境守備隊1500名は逐次玉砕して果て、8月26日難攻不落の要塞もついには陥落した。8月15日に戦争は終結した筈なのに、国境守備隊と辺境の開拓団は捨石となり多くの尊い命が無駄に失われたのだ。筆者である岡崎哲夫氏は昭和18年学徒出陣、同20年虎頭要塞に配属、生存者僅か数十名という激しい戦闘を生き延び要塞脱出に成功したが、8月30日ハバロフスクで捕捉され、3年間の抑留生活を経た後、昭和23年復員している。私たちは北満辺境の地に、彼の独仏国境のマジノ線にも劣らぬ堅牢な一大地下要塞が存在していたことも、終戦後なお二週間に亘り激戦が続いたことも知らない。氏は虎頭要塞の内部を平面・断面図で実に詳しく描いている。通称「丸一」と呼ばれた大口径砲は戦艦に搭載する40cm砲を陸揚げして榴弾200発、炸薬400本を装備、常時シベリア鉄道イマン鉄橋に照準を合わせていた。そしてその大口径砲台も最後の戦闘で百数十発討って砲身が内部より炸裂して木端微塵となる。本書には随所に凄惨な描写があり胸がつかえて繰り返し読むことができない。氏は文中の登場人物を殆ど実名で書いた。それは苦難の運命に倒れた人々の名を永く留めようという祈りからだと結んだ。


●秘録北満要塞~関東軍の最後/岡崎哲夫/秋田書店サンデー新書S39年
岡崎氏は昭和30年、森永ドライミルク中毒事件で長女が被災、全国被災者同盟協議会の委員長に選出されている。

秘録北満永久要塞―関東軍の最期 (1964年) (サンデー新書)
岡崎 哲夫
秋田書店

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