智の庭

庭の草木に季節の移ろいを感じる、日常を描きたい。

お題「印象に残っている絵本は?」

2017年04月21日 | 日記
何度も読み返したのは「人魚姫」。

恋する人が住む、地上の世界へ行くために、魔女と取引をする。

2本の足を得た引き換えに、

一歩を踏み出す毎に、ナイフを突き立てられる痛みに耐え、

美しい声を失い、王子に「あなたを助けたのは私」と言えない。

そして、王子の愛を得られなければ、死ぬ、と。


王子が、命の恩人と誤解した別の女性に惹かれていくのに、

どうすることもできないまま、ついに王子は結婚してしまう。

その夜、人魚姫の姉たちが、ナイフを手渡し、

「この短剣を王子の胸に突き刺せば、あなたは人魚に戻れる。」

人魚姫は、新婚初夜を迎えた王子夫妻の寝室に入り、

王子の寝顔を見入り、短剣を持ち上げるが、

「私には、できない・・」海に飛び込み、泡となって消えてしまう。


幼かった私は、何度も読んでは、繰り返し考えました。

家族を捨て、自分の住む世界を捨て去り、痛みを抱え言葉を失ってでも、

誰かを恋い焦がれ、最後は自分の命を捨てる、激しい感情の世界を、

いつか、自分も経験するのだろうか・・・

自分が人魚姫だったら、どうするだろう・・・


大人になって、ディズニー・アニメ映画「リトル・マーメード」を見たとき、

アメリカ映画にありがちな勧善懲悪、お気軽なハッピーエンドの

あまりにものの「軽さ」に、喜劇からは、何も心に残らないのだな~と、

古典「人魚姫」の悲劇に、改めて感じ入りました。