智の庭

庭の草木に季節の移ろいを感じる、日常を描きたい。

弘法、筆を選んでみたら・・・

2016年03月10日 | 書道、絵を描く


清書の最終日、気分転換も兼ねて、新品を下すことにしました。

墨を磨ろうと手にすると、細密な絵が浮き彫りになっていることに気が付きます。

すり減るのがもったいないので、写真をパチリ。




右側の硯は、学生の頃のもので、

中央の書は、前日までの、今の自分の精一杯の作品。

これを、越えられるであろうか・・・・

期待と不安、プレッシャーの中で、最後の清書に挑戦します。


果たして・・・・新しいお道具の書き味は?


まず、墨。  

なるほど、以前の墨は、細かい粒子状のものが目視できましたが、

新しい墨は、きめ細かくなめらかな墨液が出来て、さすが値を張っただけの価値はありました。


次、硯。

これまでは、ざらざらと摩擦音がするようでしたが、

新しい硯は、ぬめ肌のような表面で、墨が吸い付くようで、怪しい触覚に囚われます。


そして、筆。

穂先の細長いのと、太く短いのでは、タッチの加減を変えないと、目的の太さに至りません。

細長い方が、コントロールしやすかったです。


最後に、半紙および清書用の和紙への墨の染み込み、濃淡や、にじみ具合は、以前のものと異なりますので調整をします。

道具を良くして分かったことは、これまで、気障りだったことが消え去り、

運筆にこれまで以上に集中しやすくなりました。


そして、自分の現在の実力、能力の壁、を思い知りました。

現段階で、これ以上同じ書を練習しても、伸びない、と見極め、

今期は、これにて良し、と自分の限界を受け入れよう、と筆を置きました。

2、3年経って、もう一度、挑戦して、自分の成長を見届けようと、自ら慰めました。

弘法、筆を選ぶ

2016年03月07日 | 書道、絵を描く
甥っ子と始めた書道も、2年目に入りまして、

目下、漢詩 「春眠不覚暁 処処聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少」 

昨年12月から練習を重ね、現在 化粧和紙にて清書に取り組んでいます。

10cm*12cm 四方に、小筆で書きます。


日々練習していますが、成長期と緩慢期が交互に訪れ、スランプに陥ったとき、

先生から「気分転換に どう?」と渡された和歌

「田子の浦にうちいでて見れば白妙の 富士の高嶺に雪はふりつつ 」

これも同時進行で練習し、現在 短冊に清書しています。


ある日曜日、練習を中断して、夫のために昼ごはんを用意した後、再開しますと・・・

墨の具合が悪くなり、連動して筆も変になり、こんなことになるものか・・・と驚きました

そこから諸問題が起きて、筆、下敷き、墨、硯、お道具の全てが気になりだし、

やはり、学生の頃、考えなしに使っていた道具では、いけないのでは・・・・?と疑念が湧きました。


丁度タイミング良く、夫の長姉が訪問し、義姉は長年書に親しんでおり、

「小筆を仕入れたから」と、5本も分けてくださり、お道具について、様々な助言をいただきました。

早速、意気揚々と頂いた小筆を用いますと、、、、、残念なことに、腰が弱くて、私には合いません。


しかし、「道具には こだわるべきで、自分の筆を探さないといけない」と理解しましたので、

意を決して、神田司町の「栄豊斎」の戸を敲きました。

このお店、日本橋三越に行く途中にあり、以前より気になる存在でしたが、

門構からして、いかにも老舗の専門店の風格で、敷居が高く感じられ、躊躇していましたが、

気合を入れて「こんにちは~、筆を見にきました~」とご挨拶して入りましたが、お昼時のためか、誰もいません。


奥行きのある店の片壁一面は全て、筆。圧倒されます。

白髪交じりのダンディーな男性が、「何をお探しですか?」 と近づきます。

「小筆を」と申しますと、

「何を書いていますか?」と問われ「漢詩と和歌です。」と答え

「漢字は何文字?」と質問され 「20字です。」と応え、

「何に書いているの?」 「半紙で練習して、化粧和紙で清書しています」

何やら技量を問われているようで・・・、答えと同時に 汗が出ます。


義姉から、羊の毛の筆をいただいたが、自分に合わず、これまでタヌキの毛の筆を使っていた、

と事情を説明しますと、「イタチ、しかも国産を勧めます。」

羊は柔らかく、タヌキは強く、イタチがほどよい腰、弾力だそうです。

国産と中国産、各メーカー全種を取り揃えているようで、その中から

穂先の太さ、長さ、持ち手の太さを見て、これまで使ってきたものと比較して、2本選び出しました。


お次は、墨。「きめ細かく、なめらかな墨であること。」と希望を伝えると、

店員は「では、これ。」私「それにします。」


引き続き「硯も探しています。」と申しますと、

店員は目を輝かして「筆、墨、どんなに良くても、硯が駄目だと、活きないからね、重要だよ。これを勧めます。」

さすがに値が張るので、念のため対比となる他の候補の説明も受けて、「お勧めの、これにします。」


更に、「フェルトはありますか?」

「下敷きなら、2mm、3mm厚があり、大きさは・・・」と、希望のサイズを出してくれます。


「半紙をしまうものは、ありますか?」

最初のプラ製には、首を横に振り「他には?」、それならと、化粧和紙で装丁された紙入れ数種を出され、

私が装丁の柄を選びますと、店員も「趣味がいいです」と頷きます。


以上、お会計の段、レジにいる店員に、ロマンス・グレーの店員が金額を指示します。

「これとこれ、3割引。・・・・いや、全部3割引きにしてあげて! 若くてきれいな人には、割り引くよ~。

店には、おばさんか、おばあちゃんしか来ないしね~」

「私も、十分、おばちゃんですよ。」と笑いながらうつむきますと、二人の店員は「えっつ!?」という顔でこちらを見ます。


最後に、一緒に選別してくださったことにお礼を告げて、「次回もまた、教えてください」とお願いしますと、

「いつも店にいるわけじゃ、ないんだ。暇な時、顔出しているんだけど。でも、また、応対しますよ。」

もしかして、かのロマンスグレーさんは、店員さんではなく、社長さんなのかもしれませんね。


3割引きは大きいです! 「若くて綺麗」という褒め言葉で、すっかり気を良くした私、

これからも、このお店に通うことでしょう~