智の庭

庭の草木に季節の移ろいを感じる、日常を描きたい。

振り込め詐欺

2014年03月17日 | 日記
実家の母の元に、お昼の2時過ぎに、

「おばちゃん、俺、久しぶりだから、名前忘れちゃった?」

と男の声に、母は「Mちゃん?」と訊ね、男は「そう、Mだよ。」

そうして、母はMだと思い込んだ相手と会話を進めた。


相手は、「重要な書類と通帳を鞄に入れて、電車の中に忘れた」とあわてた様子、

すぐに金の用立てを言い出さず、一旦電話を切って、間を開けて、また電話を寄こす。

「自分で手立てが出来ないから、おばちゃん、3百万円、用意できる?」

母が、すぐには無理、と答えると、

「百万は?」と相手は母の値踏みを始め、母が「50万円なら」と答えた。


しばらくして、JRの駅員を名乗る人物から電話があり、

「荷物の本人確認のため、本人のフルネームと会社名を」問われ、母は答えた。

そして、3時の時間が近づき、小学生の孫が帰宅すると、

「スーパーにちょっと買い物に行くから、電話にでちゃいけないし、玄関扉を開けてもいけないよ」

と言い残して、郵便局へ向かった。


母は、郵便局で満期の貯金を解約できるか、問い合わせたところ、

逆に、職員から事情を問われ、母は素直にこれに答え、職員が警察に通報し、

事情を知った警官は、母と共に家に戻り、

孫から「男の人から電話があって、おばあちゃんに、お金を6時に取りに来る、って伝えて」と知り、

警察官は6時まで留まり、犯人は来なかった。

そして警官は自宅の電話に、冒頭「この電話は振り込め詐欺防止のため、会話のすべてを録音します。」旨のメッセージが流れる録音機械をつけて帰りました。


以上が、事実関係です。


母は後期高齢者の年齢ですが、自分では、振込み詐欺にかからない、と自負していました。



そして、「Mちゃん」は、私のいとこですが、

チェッカーズのフミヤ君を、身長179CMのイケメンにした感じで、

若い頃の彼は、東京への出張の折、よく母を頼り、実家に泊まっていきました。

母は、彼を可愛がり、何くれと気配りをしていました。

彼は順調に歩んで、この次元のトラブルを起しそうもない人物であり、

彼の両親も、九州から神奈川の彼の自宅傍に移り、

金銭問題が万一あっても、年金暮らしの寡婦である母より、両親を頼るはずです。

冷静に考えれば「ありえない」ことを、母は信じ、郵便局に行きました。

母の「老い」を深く感じました。


母には、息子がいません。  

Mちゃんなど、母の甥が訪問すると、もう、大喜びで持て成していました。

母親にとって、異性である息子は、娘以上に可愛くて仕方ない、という話はよく聞きますが、

オレオレ詐欺に、娘バージョンをあまり聞きません。

愛は人を盲目にするのでしょう・・・・


もとより、母は人を信じ、相手に合わせようとする性格。

 「お人よし」 + 「愛は盲目」 + 「老い」 

これが犯罪グループに付け込まれた原因だと思う、娘の私でした。 


もちろん、老いた母を 責めたりはしません。

ただ、母の「もう、知らない人を、気安く信じない」との反省の弁を聞き、

「ママ、知らない人を信じないのは、当たり前のことでしょ。

 ママが、勝手に自分から、知っている人と思い込んだことが、今回の問題だよね。

 次、犯人達は「Mだけど」って、Mを名乗って電話を寄こすからね。

 ママは、Mが本物か、偽者か、電話で見分けつけられるの?」

黙る母に、

「Mちゃんに、今後の連絡は、姉か私の携帯にしてもらうように、話します。

今後、Mを名乗る電話は、全て、詐欺集団だ、と考えてね」と念を押しました。


悲しく、やるせない、出来事でした。