特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第496話 魔のクリスマスプレゼント!

2009年09月03日 02時40分41秒 | Weblog
脚本 藤井邦夫、監督 北本弘
1986年12月25日放送

【あらすじ】
クリスマスイブの前夜、路地裏で刺殺死体と出くわす男。被害者のトランクからは、大量の紙幣があふれていた。被害者を追う足音が迫り、男は思わずトランクを手に逃げ去る。
特命課が捜査に乗り出したところ、現場に残された紙幣は精巧な偽札だと判明。また、被害者の着衣から、立ち去った男の指紋も検出される。男は横領罪で執行猶予中の元商社マンだった。特命課は紙幣偽造と殺人の容疑で男を追う。
ニュースで紙幣が偽札と知った男は、旧知の老スリに相談。執行猶予が取り消されることを恐れる男のために、老スリは一計を案じる。サンタクロースの衣装で浮浪者に偽札を配り歩くと、「あんたも『サンタクロースからもらった』と言えばいい」と男に言い聞かせる。
その頃、桜井と犬養は男の別れた妻子を訪ねる。男は離婚後も妻子を心配し、連絡を絶やさないという。だが、高校生になる娘は、男への怒りを隠さない。犯罪者の娘と指差されることが耐えられず、腹いせに不良仲間とともに万引きやカツ上げを繰り返す娘。見かねて補導する犬養と江崎に、娘は「親父に会ったら、ぶっ殺してやる」とナイフを見せる。
一方、紅林と叶は男のアパートを張り込む。アパートに戻ってきた男は、張り込みに気づいて逃走。アパート内を調べたところ、偽札につながるものは何もなく、代わりに娘名義の預金通帳と、娘へのクリスマスプレゼントが見つかる。男の娘への想いを感じ取った紅林は、男がもう一度戻ってくるはずと確信する。
その頃、被害者の交友関係から、金遣いの荒いヤクザ者の存在が浮上。橘の調べによれば、そのヤクザ者が偽造犯らしい。また、新宿で浮浪者が使った偽札から、老スリの指紋が検出される。老スリと旧知の時田には、偽札との関わりが信じられなかった。
同じ頃、桜井は妻から横領事件の真相を聞き出す。そもそもの発端は、娘が妻の連れ子であることだった。娘はその事実を知らずに育ち、男も娘を実子同然に愛した。だが、娘の実父であるヤクザが「娘に事実をバラす」と脅して妻に金を要求。妻の苦しみを知った男は、やむなく会社の金に手を付けた。その後、ヤクザは病死し、男は横領に気づかれぬうちに返済しようとしたものの、ついに発覚。男は娘のために動機を隠し、世間の眼や横領金の返済義務から妻子を守るために、自ら離婚を申し出たのだ。
男の妻子への想いを知った桜井は、犬養と江崎に娘へのマークを続けるよう指示。娘を案じて「あの子を父親の逮捕に利用しないでください」と反発する江崎に、桜井は妻から聞かされた真相を語る。
クリスマスイブ当日、老スリは警察の目を引き付けるため、引き続き新宿で偽札をバラ撒こうとするが、旅館からの通報で所在を知った時田らが包囲網を敷く。同じ頃、ヤクザ者も持ち去られた偽札を追って新宿にいた。時田の姿を見て逃走を図った老スリが、思わずブチまけた偽札に気づくヤクザ者。老スリに襲い掛かるヤクザ者を、時田らが逮捕。ヤクザ者の自白と老スリの証言によって、男が偽札や殺人とは無関係だと判明。これ以上罪を重ねさせないために、早急に男を逮捕せんとする特命課。
その頃、男は娘を電話で新宿駅に呼び出すと、プレゼントを取りに再びアパートへ。張り込んでいた紅林と叶に追い詰められた男は、「来るな!来たら死んでやる!」とナイフを自身の首に突きつける。「まだ遅くない」「罪を償い、出直すんだ」紅林や叶の説得にも耳を貸さない男。そこに桜井が妻を連れてくる。男に妻が差し出したのは、婚姻届だった。「あなた。刑事さんが、これを。もう一度、親子三人で、はじめからやり直すべきだって・・・」妻の、そして刑事たちの真心に触れ、泣き崩れる男を、安堵の思いで見守る桜井たち。
その頃、新宿駅では娘が男を待っていた。神代からの連絡で、男の逮捕を知った犬養と江崎。逮捕された父親を前に、娘はどんな行動を取るだろうか?「あの子、まさか本当に父親を・・・」江崎の呟きに、意を決した犬養は娘に真相を語る。「赤の他人だったら、もう憎む必要はないだろう。犯罪者の子供といじけることもないだろう。本当の父親だと思っているからこそ、憎むことができた。違うか?」犬養の言葉に、血のつながりがなくとも、確かな親子の絆があることに気づく娘。そこに、紅林と叶が男を連れて到着する。男の手錠を外し、「渡してやりなさい」とプレゼントを差し出す紅林。深々と頭を下げると、娘に歩み寄る男。「お父さん!」ナイフを捨て、男の胸に飛び込む娘。二人を見つめる刑事たちの眼は、喜びに輝いていた。

【感想など】
年末特有の群像劇ですが、下手にドラマを分散させず、一人の心優しい男を軸にしたことが奏功し、ベタではあるものの(ベタであるがゆえに)、非常に心温まる一本となりました。
妻の別れた夫への愛情を察知する桜井。不良への道に陥りそうになる娘を案じる犬養と江崎。プレゼントに託された男の想いを察知する紅林(と叶)。旧知の老スリの身を案じる時田など、それぞれの持ち味を活かした人物配置は絶妙なものがあります。神代と橘は無理にストーリーに絡めさせずにバックを固めさせ、杉はこの際無視するという判断も成功でしょう。藤井氏は下手にトリッキーな脚本を書こうとせず、こういうベタな話を書いた方がいい味を出せると思うのですが、そればかりだとやはりワンパターンになってしまうのでしょうか?
男と老スリの関係がよく分からないとか、娘のグレ方がステレオタイプすぎとか、突っ込みどころもありますが、この際、そこは目をつぶるのが正解でしょう。特命課刑事たちの非現実的なまでの優しさも、クリスマスならではの「大人のおとぎ話」として楽しみたい。そんな優しい気持ちにさせられる一本でした。

2 コメント

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大人のおとぎ話 に… (二葉ネーゼ)
2009-09-14 15:24:37
「大人のおとぎ話」って正しくその通りだと思いました。イイ話でしたね。
かなり好きな回になりました。中でも老スリがヤクザ者ともつれ合ってる最中、特捜の面々が駆けつけて来る場面!!
気が付かれてましたでしょうか、一匹のニャンコが特捜の最前線で走っているのを!!
話の本筋とは無関係ですが、猫好きにとってはタマラナイ一話となりました。



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おひさしぶりです (袋小路)
2009-09-16 02:28:14
二葉ネーゼさん、お久しぶりです。またコメントいただけて嬉しいです。
ご存知の方も多いと思いますが、一応お断りしておきますと「大人のおとぎ話」の元ネタは「必殺剣劇人」のOPナレーションです。剣劇人は「おとぎ話」と言うよりは「茶番」でしたが、本編は本当にイイ話でしたよね。
ご指摘の猫のシーンは気がつきませんでしたが、そんな楽しみ方もあったのですね。ひょっとして、撮影時のハプニングを「これはこれでよし」として放送したのかもしれませんね。
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