特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第501話 殺人警察犬MAX

2009年09月28日 23時33分17秒 | Weblog
脚本 長坂秀佳(原案 会川昇)、監督 辻理
1987年2月5日放送

【あらすじ】
老訓練士のもとで訓練に励む警察犬「マックス」を、老訓練士の娘とともに見守る犬養。マックスはかつての犬養の愛犬「アマデウス」であり、その名の由来であるモーツァルトの曲を耳にすると、昔に戻って犬養にじゃれつくのだった。
そんななか、警察犬が相次いで行方不明となり、消えた仲間を探して出動したマックスも同様に姿を消す。マックスが消えた現場にはスタンガンが残されており、何者かに拉致されたものと見られた。犯人の狙いは?マックスは無事なのか?焦る犬養のもとに、深夜スーパーの客が犬にかみ殺されたとの連絡が入る。防犯カメラには、マックスが客の喉笛に襲い掛かる姿が映っていた。時を同じくして、マスコミに「警察犬は殺人犬だ。この犬は無差別に人を襲う」との犯行予告が送られる。「厳しい訓練を受けた警察犬が、犯人の言いなりになるはずがない。あれはよく似た別の犬です!」と主張する犬養。だが、老訓練士の眼にも、マックスの犯行であることは間違いなかった。
予告どおり、マックスによる凶行は続く。今度は派出所勤務の警官がかみ殺され、犯人は警官の拳銃を奪う。一方、防犯カメラの映像を拡大した桜井は、犬の頭部に電極が埋め込まれているのを発見。大脳生理学の権威である教授を訪ねたところ、犯人はマックスの脳に電流を流すことで、攻撃行動を取らせていることが判る。時を同じくして発見された警察犬たちの無残な姿は、犯人の実験の過程を物語っていた。
「ワシは犯人を許さん・・・」マックスを鍛えた訓練所近くで、犬養とともにモーツァルトを聞きながら、静かな怒りを燃やす老訓練士。その耳にマックスの声が届く。慌てて音楽を消すものの、犬養の耳には何も聞こえなかった。
そんなか、特命課は2人の被害者のつながりを発見。第一の被害者は税関の職員で、帰国した男の手荷物に麻薬犬が吠え掛かるという事件があった。手荷物は別人のものと判明するが、男は「犬を殺せ!」と激昂したという。その同日、第二の被害者である警官は、散歩中のシェパードを殴打していた男を尋問。男は酔ってシェパードを警察犬と間違え「昼間の仕返しだ!」と主張したという。2件の男は同一人物であり、かつて教授の研究所で働いていたが、実験動物を殺すことに異様な興奮を見せるため、教授から解雇されていた。
「次は教授が狙われるのでは?」特命課の不安は的中し、教授がかみ殺される。男を犯人と断定し、その行方を追う特命課に、老訓練士の娘が救いを求める。「父を助けてください!」老訓練士は単身、犯人への復讐を誓って姿を消したという。だが、老訓練士はどうやって犯人の居所を?犬養には心当たりがあった。あの日、老訓練士が聞いたマックスの声は本物だったのだ。訓練所近くを懸命に捜索する犬養たち。その耳に銃声が響く。工場跡で発見された老訓練士の死体。その手にはカセットデッキが握られていた。老訓練士はモーツァルトの曲でマックスとの絆を取り戻そうとしたが、果たすことなく犯人の銃弾に倒れたのだ。
マックスに対する射殺命令が出るなか、犬養は一人拳銃の携帯を拒否。マックスの相棒であった警察犬を駆使して追跡するが、犯人の臭いは絶たれてしまう。そこに、桜井が意外な情報をもたらす。かつて犯人が殴打したシェパードの飼い主は、老訓練士の娘だったのだ。娘が助けを求めたことで、犯人は警官に連行された。犯人の次なる狙いは娘に違いない。その事実を知った娘は、老訓練士の残したカセットデッキを手に姿を消す。
娘の危機を知った犬養は、マックスが訓練に励んだ河原に向かう。そこではまさに、犯人がマックスに娘を襲わせていた。「よせ、マックス!」娘をかばい、マックスに立ちはだかる犬養。「なぜこんなことをする?」犬養の問いに、犯人は空ろな顔で答える。「犬が俺の人生を殺した。警察犬は人殺しだ。世間にそれを教える義務がある」娘とともにモーツァルトの曲を聞かせる犬養だが、マックスは攻撃姿勢を止めない。「ムダだ。そんなものは利かない」犯人の言葉に、教授の声が重なる。「攻撃の部位を刺激されれば攻撃する。脳はそうできてるんです・・・」だが、その一方で、老訓練士の言葉が犬養を勇気づける。「要はハートだ。心さえ通じりゃあ、何だってできる・・・」再度、モーツァルトの曲を響かせる犬養と娘だが、犯人の非情な指令が飛ぶ。「やるんだ、マックス!」「アマデウス!」犬養の呼びかけに、マックスが宙を舞う。銃声。銃弾に打ち抜かれながらも、犯人の手首をくわえて引きずり倒すマックス。夕陽のなか、マックスの亡骸を抱きしめる犬養。「俺のアマデウスは、死の直前、電気に勝ってアマデウスに戻った・・・」

【感想など】
卑劣な魔手に堕ち「殺人犬」と化した警察犬と、かつての飼い主である犬養との心の絆を描いた一本。これまで特捜で「犬」といえば叶でしたが、今回は名前つながり(?)で犬養がメイン。犬とたわむれる無邪気な表情は、三ツ木氏ならではであり、本作を犬養の代表作の一つに挙げてもよいのではないでしょうか?
なお、老訓練士役は、特捜ではむしろ悪人としてお馴染みの小林昭二氏。犬養とのからみでいい味を出していましたが、野暮を承知で言えば、少しは桜井とのからみが見たかった。

今回と次回は一般からのプロット公募による入選作を長坂氏が仕上げたものですが、原案ありとはいえ、本作には長坂テイストが満載です。脳に電極を埋め込むという仕掛けといい、教授の談話という形で強引に説得力を与える展開といい、偏執的な犯行動機(犯人役の偏執ぶりが今ひとつなのが残念。西田健を起用していれば、さぞや動機に説得力が増したことでしょう)といい、まるで過去の長坂作品のオマージュのようです。さらに言えば、今ではすっかり人口に膾炙したスタンガンも、当時は珍しかったらしく詳細な説明が加えられており、新しいモノ好きの長坂氏の面目躍如といったところでしょう。

ちなみに、原案の会川昇(現在の表記は會川昇)氏といえば、アニメや特撮で御馴染みの脚本家(最近では物議をかもした「ディケイド」の前半のみを担当して降板)。デビューは83年の「亜空大作戦スラングル」(懐かしいなぁ・・・)とのことですので、本作を応募した時点ではすでにデビュー済み。長坂氏とは師弟関係との話もありますが、その辺りの事情はどうだったのでしょうか?
そう言われて見れば「主人公の仲間が犯人に脳を操作されて悪事を働くが、主人公の呼びかけ(とか思い出となる何か)で絆を取り戻す」という展開は、アニメや特捜では定番のパターン。この際、仲間がレギュラーの場合は助かるものの、ゲストの場合は大抵死んでしまうわけですが、その点でもセオリー通り。ベタなだけに、悲しみがストレートに胸に迫り、特に犬好きの人にとってはたまらないものがあるでしょう。

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