特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第508話 神代警視正・愛と希望の十字架(前編)

2010年02月05日 01時59分59秒 | Weblog
脚本 長坂秀敬、監督 宮越澄
1987年3月26日放送

【あらすじ(前編)】
特命課の奮闘と桜井弁護士の尽力により、新宿東署の悪行は白日の下に晒され、多数の不正警官が摘発された。だが、警察組織に根を張る腐敗の闇はなお深い。捜査の強引さと越権行為を問われ、査問を受ける神代。「警察内部の腐敗を見逃すようでは、市民の信頼を失います」毅然として持論を述べる神代だが、上層部にエリート署長の責任を問うつもりはなかった。
同じ頃、警視庁内にある噂が流れていた。神代がクビを切られ、特命課が廃止されるというのだ。さらに、捜査4課に特別室が新設され、その室長には特命課と因縁浅からぬ西岡刑事が就任するとも囁かれていた。「納得できません!私たち、正しいことをやっちゃいけないんですか!」江崎の涙を、沈痛な思いで見守る刑事たち。そこに神代が現れる。いつものスーツ姿でなく、珍しくジャンパー姿の神代は、心配げな部下たちに一瞥も与えることなく、自らの拳銃を取り出して何処かへ出かけていく。
「課長が東署に乗り込み、署長を殴っただと!」報せを聞いた橘たちは、慌てて新宿東署に駆けつける。そこには、頬を腫らせた署長とともに、なぜか西岡の姿があった。「なぜ、ここにいる?」橘の問いに「4課は暴力事件が担当だ。某課長のご乱心にも、むろん駆けつける」とうそぶく西岡。「ここで何が起こった?」「逆上と、愚拳だ」神代は署長の責任を問い質し、「上の決定に従う」との返事を聞くや、いきなり殴りかかったのだという。「課長職を追われるというので、よっぽど血迷ったらしい」「もう一度言ってみろ!」署長の暴言に、温厚な紅林までもが逆上する。だが、神代の暴挙はそれだけではなかった。東署の資料室から暴力団関係の資料を強引に持ち出し、制止する署員らに銃を向けたという。一体、神代に何があったのか?あまりのことに呆然とする刑事たち。
神代が資料を持ち出したのは、5つの新興暴力団だった。神代の真意をつかむべく、暴力団と署長のつながりを調べ始める特命課だが、神代はさらなる行動にでる。暴力団事務所に次々と殴り込みをかけたのだ。むろん、神代とて無傷ではすまない。その夜、神代夏子の墓前には、手負いの獣のような神代の姿があった。
「桜井よ、いろんなことがあったな・・・」同じ頃、橘と桜井は、神代の身を案じ、特命課で夜を明かしていた。二人の脳裏を、さまざまな事件の記憶が通り過ぎる。「俺たちの特命課が、消える・・・」「どうせ課がなくなるなら、こいつを叩き返して、課長のように暴れまくりますか」警察手帳を机に置く桜井だが、橘が制する。「だが、こいつがなけりゃ、俺たちには何もできん。刑事でいる間は、刑事でいよう。課長もそうしている」橘は、神代の暴挙が、刑事としての、そして特命課の課長としての行動だと信じていた。そして、自分たちにもまだできることがあると。「最後の仕事だよ。桜井」
神代が殴り込みをかけたのは、5つの暴力団だけでなく、暴走族、新興宗教、過激派にまで及んだ。これらの組織を調べたところ、その背後には「日本の将来を考え守る連合国民会議(略称:日将連)」なる正体不明の組織があると判明する。そこに、神代のさらなる暴挙の報せが入る。あろうことか、政治家の事務所に殴り込んだというのだ。現場に駆けつけたものの、事務所員らの白眼に耐えかね、なす術なく引き上げる特命課。そこに江崎の姿もあるのを認めた西岡は、何故か「婦警まで連れて、何をしに来た!」と血相を変えて咎め立てるのだった。
その後、桜井は保釈中の父親を、橘は拘置所の巡査(=前々話の犯人)を訪ね、それぞれ決意を新たにする。そして紅林と叶は、特命課を去った仲間たちに想いを馳せる。「二人の刑事が死んで、三人が辞めた・・・」涙ながらに退職を報告する高杉婦警、市民を守るために自らの命を散らせる津上、新たな人生を選択する滝、非情の銃弾に倒れる吉野、そして、最後の坂道を神代とともに歩む船村・・・そんな刑事たちの側には、つねに神代の姿があった。その神代は今、どこにいるのか?数々の暴挙の裏には、どんな狙いがあるというのか?そして、もはや風前の灯と化した特命課の運命は?(後編に続く)

【感想など】
ついに、10年にわたる特命課の歴史に終止符が打たれるときが来ました。最終三部作の、そして全509話(スペシャル含む)の悼尾を飾るエピソードは、あの「凶弾・神代夏子死す!」での乱心ぶりを彷彿とさせる課長の暴挙で幕を開けます。特命課消滅という最大の危機を前に、緊迫感あふれるスリリングな展開は、さすがに最終回。詳細な感想は、例によって後編でまとめさせていただきますが、一つ指摘しておきたいのが、特命課を去った刑事たちの回想シーンです。
皆さんもお気づきの通り、幹子の退職シーンはどう考えても高杉刑事(西田敏行)の退職シーンの間違い。実際、長坂氏の著書「術」に掲載されている脚本を見ても、やはり「高杉刑事」と記されています。もちろん、「間違い」ではなく、たとえば肖像権など「大人の事情」の可能性もありますが・・・長く特捜を見続けている視聴者からすれば、まさに“感極まる”シーンだけに、「あれ?」と思わされ、せっかくの感動に水をさされた(ちょっと大げさですが)のが残念でなりません。もちろん、幹子の退職シーンがあること自体には異論はないので、できれば幹子と高杉、両者の退職シーンを揃えて欲しいところでした。