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住まいは人権! 一般社団法人協働舎
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元生活保護現業員が思うこと③

2010-05-20 | 福祉

先日3月5日付の中国新聞は広島市が今年4月から生活保護担当職員を20名増員すると報じています。

昨年の増員と合わせると40名近くになるのでしょうか(それでも職員一人当たりの担当世帯数は国の基準を超えたままですが)。

 今後も生活保護世帯が増えると見込んでいる市健康福祉企画課の「就労支援に力を入れ、自立できる保護世帯を増やしていきたい」とのコメントを載せていますが、まずは職員の研修をしっかりやり、生活保護現業員としての誇りと自覚をもった自立したスタッフを育てることから始まるでしょう。

 有資格者の採用と合わせ、配属された職員の資質向上のための研修や取り組みはまた、福祉事務所そのものが住民の福祉を高める専門機関としての機能をもつことにもつながっていけるでしょう。 (2010.3.7記)

広島ブログ

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元生活保護現業員が思うこと②

2010-05-20 | まいにち

退職前のある年のことです。前任者から担当地域を引き継いだ中に、高齢者がいました。私が担当する一年あまり前に配偶者を亡くしその後一人暮らしを続けておられたのです。家賃は国が決めた基準を3000円ほど超過していました。

指導監査に来た県職員は生活保護を実際に担当したことのない職員でしたが、「家賃が基準額を超えてるのに転居指導をしていない」というのです。

私は30年以上も同じところに住んでいる高齢者に転居指導など必要ではないし正しい「指導」だとは思えないと強く述べたのですが、後日送られてきた文書ではしっかり指摘してありました。

生活保護にかかわる現業員や査察指導員は社会福祉主事でなければならないとされていますが、生活保護制度が始まって60年「当分の間」資格に関する指定科目を履修していなくても「法学・民法・経済学」などの3科目を一般教養で履修しておれば社会福祉主事として任用できるとの「三科目主事」をそのままにしています。

 まず、生活保護担当者として配置される職員に対しきちんとした研修制度が確立されなくてはいけないでしょう。

全国にある27の町村設置の福祉事務所のうち8つが「権限委譲」という仕事の押し付けをどんどん進めてきた広島県にあります。

設置にあたっては町職員が県の福祉事務所で1年~2年の実務を担い経験を踏んではいますが、残念ながら書類をきちんと揃えて「指導・監査をどう受けるか」といった視点が主で、生活保護の本来の目的や役割をきちんと学んだとはお世辞にも言えないのが実情です。

このような中では、増え続ける生活保護受給世帯への関わりもどんどんと薄くなってしまいます。

また、できれば新たな保護申請は受けつけずに相談だけで終わらせたいということになってしまうのもやむを得ないかも知れません。

現業員が2人や3人程度の福祉事務所では職員が研修を受けたり、学習したりすることもままならないのが実情ではないでしょうか。

これでは厚生労働省が「生活保護担当員の資質の向上」をいくら叫んでも効果はないでしょう。まずは国が率先して新任職員の研修を始めるべきです。(私が福祉事務所から精神保健福祉センターへ配属換えになった時には、4週間の民間精神病院での実習と、3週間の国立精神神経研究所での研修がありました)

旅費や宿泊費も国が負担してはどうでしょう。

これまで生活保護は主として福祉事務所の外からの強い働きかけによって少しずつでも改善されてきたといえます。

これに合わせて福祉事務所の内側からの改善への努力が重なっていけば本当の意味での生活を守るネットになっていけると思うのです。

京都では福祉事務所のスタッフが生活保護ニュースを発行し、新たな制度や事業について説明していると聞いています。

私は退職前の数年前から生活保護受給者に保護変更通知を渡すだけではなく、保護費の計算書も見ていただいて、説明することをやってきました。これはある人から「私の保護費はどんなふうに計算されてるんですか」と尋ねられたことがきっかけでした。

説明する中で自分の計算の間違いに気づくことも幾度かありひやりとさせられたこともありました。

 広島ブログ

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元生活保護現業員が思うこと…①

2010-05-20 | まいにち

  以下は『消費者法ニュース』第83号に書いてものです。同誌が発行されたのでいいかなと思ってUPします。

 

全国と同じように広島県でも生活保護の受給者は急増してきています。

20084月には、24319世帯34,904人であったものが20094月には2,6347世帯37,846人となり、同年9月では27,469世帯40,062人の受給者となりました。

私は、1974年に広島県庁へ就職し、17年間生活保護現業員としてまた、児童相談所や精神保健福祉センター相談員として働き2009年に退職しましたが、この中で感じてきたことや考えていることを述べます。

私が就職した74年はオイルショックが始まり高度経済成長が終焉をむかえるころでしたが、福祉事務所は「生活保護事務所」ともいえるような生活保護がその業務の中心でした。たくさんの先輩が生活保護現業員や査察指導員として働き、「漏給防止」が語られている時代でした。何かあると小山進次郎の『生活保護の解釈と運用』(1951年)と読めと言われたものです。

ところが、他の部署へ配置替えとなり福祉事務所へ再配置となるたびに生活保護をめぐる状況は大きく変わってきていました。

特に生活保護の切り捨てに大きな役割を果たしたと思うのは1981年の「123号通知」です。この通知によって金融機関などへの照会のために白紙の委任状をとるようになったのです。

ある島の一部を担当していた時のことです。島の中には8つの集落があり、それぞれに特定郵便局がありました。従前どおり生活保護申請者の住んでいる地域と町役場の近くにある郵便局へ預貯金の照会をしていたのですが、指導監査に来た県の職員は島内にあるすべての郵便局と陸地部の隣接市内の金融機関へ照会するべきだというのです(貯金をするためにわざわざ船に乗っていくお年寄りがおられるとも思えなかったのですが)。

 だんだんと「不正受給の防止」や「適正実施」のみが強く叫ばれるようになってきました。

 また、福祉行政だけではなく様々な分野で即戦力になるのが優秀な公務員だといわれ積極的に他職種から福祉職場へ配置換えがなされるようになりました。(広島県ではすでに75年から福祉職の採用をやめています)

 私は土木や県税の職場から生活保護現業員に配置されること自体がおかしいとは思いませんが、配置後にきちんとした研修がなされることが必要だと考えます。

現在、福祉事務所に配置されている生活保護現業員の4分の1は経験年数が一年未満であり、3年未満で見てみると7割にのぼるといわれています。また、(彼らを指導する)査察指導員の4人に一人はこれまた生活保護業務の経験がありません。

広島ブログ

 

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