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精神科医師のブログ。
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罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦

2013年06月16日 | Weblog
地域の病院で何でも屋の精神科医をしていると、否応なく司法精神医療や矯正医療などにもかかわらざるをえない。
バザリアらによるイタリアの精神医療改革は有名であるが、イタリアの犯罪者の処遇について書かれた本があったので読んでみた。

罪を犯した人を排除しないイタリアの挑戦―隔離から地域での自立支援へ
浜井 浩一
現代人文社


日本では刑事司法システムを構成する、警察、検察、裁判、矯正、保護が縦割りで分断されており、刑事司法と福祉が二律背反的に分離し、連携が全くない。日本では刑罰は更生ではなく応報が目的と考えられ、法曹は更生=謝罪・反省どまりの思考である。
そんななか山本譲二氏の「累犯障害者」などでも描かれたように、知的障害者や高齢者などの社会的弱者が微罪で刑務所に入りやすく、出所後も支援が乏しいため再犯をくりかえすという悪循環がうまれている。これは早急に手をうたねばならない課題である。

イタリアの制度に共通しているのは、社会的に困難に陥った人に必要な支援を届ける、その際に、困難に陥った理由によってクライアントを差別しないということにある。
障害者も薬物依存者も受刑者も困難から回復するための支援が必要な人として等しく支援を受けることができる。イタリアでは行政の中に、犯罪は司法の問題ではなく、社会問題であり、市民が社会的困難を抱えることによって犯罪が生まれるという認識を共有している。
すっかり有名になった精神医療改革と同様の方法で、司法でもソーシャルワークを中心とした地域ネットワークによる犯罪者の社会復帰モデルにより、社会資源を有機的に連携させながら活用することで対象者のニーズに即した効果的な処遇を実施することができる。
依存症者は罰せず、地域依存症サービス、居住型、通所型の治療共同体、就労支援を行う社会協同組合までが有機的に連携している。

乏しい予算措置しかせずに一部の病院にまるなげしたり、安易なセンターやコーディネーターばかりを増やすが、実力とネットワークを持った医療者やケースワーカー、地域の資源が育たない日本。
われわれがイタリアから学ばなければならないことは多そうである。