リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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プライマリケア連合学会見聞録

2011年07月04日 | Weblog
大学時代の後輩の結婚式とプライマリケア連合学会があるので札幌に行って来た。
北海道に行くのは実に5年ぶりでずいぶんのご無沙汰だ。

プライマリケア連合学会は病棟総合医(ホスピタリスト)や医学教育が中心の総合診療学会、開業医の多いプライマリケア学会、新進気鋭の若手の多い家庭医療学会が合わさった学会であり、学生や薬剤師や看護師の参加も多くプライマリケアに関わる多職種の学会を目指しているようだ。
若手からベテランの町医者まで様々な立場の人がおりまとまるのは難しいところもあるだろうが、技術からではなく個人や地域のニーズをベースとし、地域づくりまで関わっていこうというスタンスは共通している。

理事長の前沢 政次先生の、良い加減な雰囲気と人徳でまとまっているのだろうとおもった。

学会は発表やシンポジウムは雑多な内容であったが、ワークショップなど参加型の企画が多くコンベンションとしての意味合いが強いように思えた。
ジェネラリストというのは地域や患者のニーズによって自分をあわなければならずアイデンティティを確立するのが大変と言われるが、若手部会なども活発なようで、こういう場をつかって繋がりを育て仲間を増やしているようだ。
クリニックの継承者を探したり、病院ごとの研修プログラムの紹介などでのリクルートの場にもなっているようだった。

懐かしい佐久総合病院時代の先輩や同期、後輩、そして北海道で地域医療をされている先生方とお会いすることができた。
自分が今は精神科でやっている聞いて、「(裏切って)違う世界に行ってしまったのね。」とでもいいたげな冷たい反応の人もいれば、「ほぼ近いことを多少違う立ち位置からやっている。一緒に頑張ろう。」と言ってくれる人もいた。

自分の興味や適正と、地域のニーズの合わさるところがたまたま精神科だっただけなのであるが・・・。
精神障がい者というのは医療支援をうけることそれ自体に支援が必要な人たちであることもあり、ある意味医療が行き届いていない過疎地でもある。
慢性疾患を多く相手にするプライマリケア医に、付き合いの難しい患者さんと付き合って行く技術やスタンス、リカバリーやエンパワメントの視点があってもいいし、精神科医にもプライマリケアの技術(コモンな疾患とエマージェンシーの対応)も求められていると思うのだが・・。
実際、うつや不安障害、アルコール依存症へのブリーフインターベンション、動機付け面接法、ワークライフバランス、医師の問題行動について考える・・など精神科的な内容のセッションも多かった。

そのようなことをみていると、どうせならせっかくプライマリケアの実践を行う人が集まる場なのだから、いろんな専門科の学会がブースやセッションをもって最新の知見を披露し、プライマリケア的には最低限どのような知識をもってどのような対応をしてほしいのかということをコンパクトに伝えられる場にすればおもしろいのにと思った。

P.S
ところで抄録をみると、ランチョンセミナーで1日目のファイザー(ジェイゾロフトの会社)が主催のときは、「かかりつけ医のためのリスクの少ない実践的なうつ病治療」とかいって血中濃度が投与量に比例して上昇する「線形性」の薬剤を推奨(ちなみにジェイゾロフトは線形、パキシルは非線形)とか言っていて、2日目には旭化成ファーマ主催(トレドミンの会社)で「生き辛くなった日本社会・急増するうつ病と自殺者ーうつ病治療の第一洗濯としてのSNRIの意義」とか言ってデュアルアクションの薬剤を推奨・・とか言っているのは露骨すぎ。ランチョンセミナーはスポンサー付きのフリーランチだからこんなものなのか? どっちもいい薬なんだけど。