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精神科医師のブログ。
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イクセロンパッチと断酒パッチ

2011年06月03日 | Weblog
アルツハイマー型認知症への新薬としてイクセロンパッチという薬が発売されるそうだ。





向精神薬としては初の経皮吸収型製剤(パッチ剤)である。
同様に皮膚にはる製剤として湿布やクリーム軟膏など表皮や筋肉に直接影響を与えるという方法はあるのだが、パッチ製剤は皮膚から吸収され、血中濃度をあげて血流に乗って運ばれることで作用部位で作用する。


緩徐に吸収され血中濃度が安定しやすい、服薬の確認が一目瞭然、消化管や経静脈などの他のルートが使いづらい時に使えるなどのメリットがある。
1日~数日間有効で、数日間効果があるものには貼り変えた日を油性マジックでテープに書いておく。

よく使われるパッチ製剤にはフランドルテープやニトロダームなどの硝酸剤、ホクナリンテープなどのβ刺激薬、デュロテップパッチなどの麻薬性鎮痛薬などがある。

フランドルテープ、ニトロダームなどの硝酸剤は血管拡張作用があり、狭心症や心不全の患者に用いられるが、在宅療養をおこなっているようなベッド上ADLの高齢者によく用いられている印象がある。

ホクナリンテープ(ベーター刺激薬)は気管支拡張作用があり吸入などの難しい小児の喘息発作に対して用いられる。

デュロテップパッチ(麻薬性鎮痛薬)は、癌性疼痛をはじめとする難治性の疼痛に対しての鎮痛を目的とした薬であり、主に緩和ケア領域で消化管の悪性腫瘍など腸管が使いづらいときに用いられる。

ニコチンパッチはニコチン依存症(禁煙したい人)のために用いられる。
ニコチンを皮膚から吸収させることでニコチンが切れた時の禁断症状を減らし禁煙外来でもちいられている。



さて、アルツハイマー型認知症の新薬の貼付剤(イクセロンパッチ)だが、いまいちメリットが思い浮かばない。
初期の方は「やっぱり私はアルツハイマー型認知症なのか」・・と毎日思いながら貼るのは嫌だろうし、高齢者はどうせ抗血小板薬や降圧薬などの他の薬も飲んでいるだろうし。
消化器の副作用が少ないとのことだがそれなら導入期だけ使えば良いと思う。
多くの薬がパッチ製剤で供給されるようになればまた違うのだろうが・・。

果たしてニーズはどれくらいあるのだろうか。

一方あったらいいなと思うのは嫌酒薬(シアナマイド、ノックビン)のパッチ製剤。

嫌酒薬はアルコールが分解されてできるアセトアルデヒト(二日酔いの原因物質)が分解されるのを邪魔し、飲酒した際には体内にアセトアルデヒトがたまり頭痛や吐き気などの症状が出現する。(飲めない人、下戸が飲んだときと同様の現象が起きる。)

嫌酒薬には飲酒自体の欲求を抑える効果はなく、嫌酒薬を飲んだ上で飲酒をすると急性アルコール中毒となり危険である。
しかし嫌酒薬を使うことで周囲の人に「自分は飲まない」と宣言することになり、また自分に対しても「飲まないぞ」と戒めることができる。
嫌酒薬、通院、自助グループの3つで断酒の三本柱ということになっている。

せっかくのパッチ薬なのだから「断酒中」とか「飲ますな危険」とでも書いてあれば飲み会の時は額にでもはっておけばOKだ。

さらに毎日貼るのなら断酒パッチ1年シリーズとかにすればいいかも。
回復者からの「2ヶ月断酒おつかれさまガンバろう。」とか「辛い時期、投げやりにならないで。」などのメッセージと顔写真入りにしたり、断酒会でメッセージを書くという使い方もできるだろう。

パッチ薬が増えてきたらそのうち体中にパッチを貼りまくって救急搬送されるような自殺企図がでてきたりして・・・。