リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
弱さを絆に地域を紡ぎ、コンヴィヴィアルな社会をつくりましょう。

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「生きテク」科

2011年05月23日 | Weblog
Facebook上で知り合いの精神科医が

「これは、まさに Survivors からのメッセージ集だ。いま、関わっているケースのために○階病棟に1冊+ERに1冊+自分と心療科スタッフに1冊、買いました。」

とすすめていたので買ってみた。

生きテク
クリエーター情報なし
PHP研究所


驚いたのは前書きの言葉
年間3万人強もの自殺者を出してしまう日本の現実を、イランから日本へ主剤にやってきたメディアのスタッフが絶句したそうだ。
イラン人には「自殺」という発想が先ず無いそうだ。
「だって、逃げるとか親戚にかくまってもらうとか、方法はいくらでもあるでしょ。死ぬなんて誰も考えもしないんだよ。」と。
本当なのだろうか?

この本は「生きテク」というサイトからのコンピレーションだ。
多くの人のさまざまな生きテクを集めて、データーベース化し、共有できるようにしたものだ。
これはアルコール依存症やアダルトチルドレン、摂食障害などの自助グループや「べてる」の当事者研究と同様の発想だ。

本はテーマごとに恋愛、過労、病気、死別、暴力、借金、その他とカテゴライズされている。
1人のエピソードが2ページから4ページで読み切り完結で、苦しかったこと、かいけつ!その後!とコンパクトにまとめられている。

それはサバイバルとリカバリーの物語だ。
壮絶ないじめをうけたり、レイプされたり、人を殺めてしまったりなど、かなり激しい話しもある。
様々なきっかけでリカバリーを果たし、今度は人を助ける仕事をするようになった人が多いようだ。

この本、病院の外来の本棚においておくので興味のある人は読んでみてほしい。

ま、精神科は突き詰めれば「死にたくなった人」が受診するところである。
だから「生きテク科」といってもいいかもしれない。
精神科医とはある患者から教わった生きテクを他の患者に教えているような積極泥棒の様な仕事なのだ。
実はね。(もちろん薬も使うが・・・)

罪滅ぼしに自分の「生きテク」を紹介しよう。

それは、やっぱり旅だと思う。
凝り固まった頭が、自分の普段いる環境と違う環境、価値観の違う人々の中にいくことでほぐれていく。

死にたくなったら汽車に飛び乗り、乗り継いでとにかく北へ北へといく。
そして利尻島へ渡り、迎えのトラックに乗り伝説のユースホステル桃岩荘へ向かう。
トンネルをくぐった瞬間から、「知性、教養、羞恥心」は捨て去り、 時計の針を30分早めて「桃岩時間」の中で生活するという仕掛けがすばらしい。
ミーティングでは現代離れした雰囲気の中で歌い狂う。
そして圧縮弁当を持ち花の島利尻島の「愛とロマンの8時間コース」を歩く。
即席のグループだけで協力しながら歩いているうちにカップルもたくさんうまれるらしい。
その頃には死にたい気持ちも薄れているはずだ。

もう一つ。
屋久島もおすすめ。
こちらのユースホステルも生きるのにちょっと疲れた人が集まって語り合う雰囲気がある。
満潮時には海に沈む温泉に出かけたり、一緒にレンタカーを一緒に借りて一周したり屋久杉にいったり宮之浦岳に登ったり・・・。

それと四国八十八ヶ所の巡礼かな(順番に巡ったことは無いが。)

一番札所の隣に診療所をつくり、巡礼療法をするクリニックをつくりたいかも。
すると四国自体が癒しとリカバリーの島になるわけだ。

患者「死にたいんです。」
医師「88の札所を一周回って来なよ。」
患者「まだ死にたいんです。」
医師、「うーん、もう一周だな」と。

お遍路は、お大師さまと同行二人。
次の札所まで、また次の札所までととりあえず何も考えずに歩いて札所を順番にめぐり、人々の温かさに触れるうちに悩みは氷解していくだろう。
歩いて巡礼している人に地元の人は優しく、さまざまな接待をうけられる。
約2ヶ月の時間と約15万円の予算を用意すればだれでもいつでも回れるらしい。

えっ、クリニックは要らないって?