
知人のSさんから、こんなショッキングな話を聞いた。豊住書店(奈良市東向北町25)が、本年(2021年)10月末をメドに閉店(廃業)されるのだという。ご主人の豊住勝郎さん(享年85)がお亡くなりになり、後継者もいらっしゃらないので廃業を決断されたそうで、もうご近所やお取引先には、お知らせされたようだ(本件の続報は、こちらに書いた)。
豊住書店は歴史関係の本が充実していたので、近くのベニヤ書店(奈良市花芝町16)とともに、よく立ち寄った。奈良女子大学が近かったからだろう、アカデミックな品揃えが特徴だった。先代の豊住謹一氏のことも、よく覚えている。

レトロな看板が目印だった(上記2枚は9/30撮影)
朝日新聞の「勝手に関西遺産」(2017.12.27付)では、「創業150年 ホントはサバ読み」と紹介されていた。チラシなどに「創業 慶応三年」(1867年)とあるが、本当はもっと古く、1816年(文化13年)年に伊賀上野で出版業を営んでいたという記録がありその後、奈良に移られたそうだ。すると、今年で創業205年という計算になる。もとは東向北町ではなく、もちいどのセンター街にお店があったという。

ブックカバーも、いい味を出していた(10/1撮影)
よく「本屋がなくなり、書店ばかりになった」という声を聞く。商店街などの個性的な本屋さんがなくなり、生き残っているのは無個性な大型書店ばかり、という嘆きの声だ。最近ではAmazonなどのネット書店も、売り上げを伸ばしている。豊住書店では、北側の入口を入ったところの棚に司馬遼太郎の文庫本を揃えたコーナーがあり、私はここをよくチェックした。ご店主のこだわりが感じられた。もちろん突き当たりの歴史書のコーナーも、よく拝見した。朝日の「勝手に関西遺産」には、考古学者・石野博信氏のこんなコメントが紹介されていた。
奈良県立橿原考古学研究所の研究員になって1年ほどして、奈良市の県庁に数年出向していたことがあります。近くにいい本屋さんがあると聞いて行ったら、店に入ってびっくりです。歴史系の本がどっさりあって。普通ありえないですよ。それからは、歴史関連の新しい本がないかとしょっちゅう行きました。奈良文化財研究所の人たちともばったり会うことがあったなあ。豊住さんは、確かに遺産ですね。
レトロなお店が減っているのは食堂だけではなく、本屋さんも減っているのだ。またひとつ「関西遺産」が消えていくのは、残念でならない。
※10/2(土)追記① この記事を私のFacebookで紹介しますと、Mさん(もとNHK奈良放送局勤務)がシェアしてくださり、そこにUさん(もと出版社勤務)が、こんなコメントを投稿してくださいました。
元出版社にいたものとして、こういう老舗の書店がなくなるのはとてもさびしいことですね。これは一つの書店がなくなったということだけではなく、出版社にとっても打撃です。というのは、出版社は各書店に「常備本」と言って過去に出版されて、ロングセラーの本を1年契約でその書店に置いてもらっているからです。出版社も新刊書籍だけでは、経営がなりたたないので、こういう過去に出版された本も売る必要があり、そういう意味で「常備」してくれる書店は出版社にとってありがたい存在なのです。それがなくなるというのはとても残念です。
10/2(土)追記② 昨夕、豊住書店を訪ねますと、東京でハイヤー運転手をされているご次男の豊住勝輝さん(55歳)が店番をされていて、少し事情をうかがいました。
「店をたたむと申し上げますと『それはもったいない、あんたが続けたら?』とよく言われますが、私には到底ムリです。奈良や歴史に関する知識がないので、十分な品揃えができず、質問にも答えられません。それでは当店の古くからのファンの方は、納得されないと思います。やはり廃業しかない、ということになりました」。
豊住書店は歴史関係の本が充実していたので、近くのベニヤ書店(奈良市花芝町16)とともに、よく立ち寄った。奈良女子大学が近かったからだろう、アカデミックな品揃えが特徴だった。先代の豊住謹一氏のことも、よく覚えている。

レトロな看板が目印だった(上記2枚は9/30撮影)
朝日新聞の「勝手に関西遺産」(2017.12.27付)では、「創業150年 ホントはサバ読み」と紹介されていた。チラシなどに「創業 慶応三年」(1867年)とあるが、本当はもっと古く、1816年(文化13年)年に伊賀上野で出版業を営んでいたという記録がありその後、奈良に移られたそうだ。すると、今年で創業205年という計算になる。もとは東向北町ではなく、もちいどのセンター街にお店があったという。

ブックカバーも、いい味を出していた(10/1撮影)
よく「本屋がなくなり、書店ばかりになった」という声を聞く。商店街などの個性的な本屋さんがなくなり、生き残っているのは無個性な大型書店ばかり、という嘆きの声だ。最近ではAmazonなどのネット書店も、売り上げを伸ばしている。豊住書店では、北側の入口を入ったところの棚に司馬遼太郎の文庫本を揃えたコーナーがあり、私はここをよくチェックした。ご店主のこだわりが感じられた。もちろん突き当たりの歴史書のコーナーも、よく拝見した。朝日の「勝手に関西遺産」には、考古学者・石野博信氏のこんなコメントが紹介されていた。
奈良県立橿原考古学研究所の研究員になって1年ほどして、奈良市の県庁に数年出向していたことがあります。近くにいい本屋さんがあると聞いて行ったら、店に入ってびっくりです。歴史系の本がどっさりあって。普通ありえないですよ。それからは、歴史関連の新しい本がないかとしょっちゅう行きました。奈良文化財研究所の人たちともばったり会うことがあったなあ。豊住さんは、確かに遺産ですね。
レトロなお店が減っているのは食堂だけではなく、本屋さんも減っているのだ。またひとつ「関西遺産」が消えていくのは、残念でならない。
※10/2(土)追記① この記事を私のFacebookで紹介しますと、Mさん(もとNHK奈良放送局勤務)がシェアしてくださり、そこにUさん(もと出版社勤務)が、こんなコメントを投稿してくださいました。
元出版社にいたものとして、こういう老舗の書店がなくなるのはとてもさびしいことですね。これは一つの書店がなくなったということだけではなく、出版社にとっても打撃です。というのは、出版社は各書店に「常備本」と言って過去に出版されて、ロングセラーの本を1年契約でその書店に置いてもらっているからです。出版社も新刊書籍だけでは、経営がなりたたないので、こういう過去に出版された本も売る必要があり、そういう意味で「常備」してくれる書店は出版社にとってありがたい存在なのです。それがなくなるというのはとても残念です。
10/2(土)追記② 昨夕、豊住書店を訪ねますと、東京でハイヤー運転手をされているご次男の豊住勝輝さん(55歳)が店番をされていて、少し事情をうかがいました。
「店をたたむと申し上げますと『それはもったいない、あんたが続けたら?』とよく言われますが、私には到底ムリです。奈良や歴史に関する知識がないので、十分な品揃えができず、質問にも答えられません。それでは当店の古くからのファンの方は、納得されないと思います。やはり廃業しかない、ということになりました」。
小生が中学・高校に通っていた頃、近鉄奈良駅近くで品揃え豊富な本屋は、三条通りの駸々堂、東向北商店街の豊住、ベニヤが三本柱でした。駸々堂はとうの昔に閉店(確か倒産?)していますが、豊住書店も今月末で閉店とは寂しい限りです。
> 三条通りの駸々堂、東向北商店街の豊住、ベニヤが三本柱でした。駸々堂はとうの昔に
> 閉店(確か倒産?)していますが、豊住書店も今月末で閉店とは寂しい限りです。
駸々堂は自己破産でしたね。本屋さんに限らず商店街からは老舗がどんどんなくなり、大資本のチェーン店が入ってきています。ベニヤさんと啓林堂書店さんには、これからも頑張っていただきたいです。
> この本屋はよく覚えている。営業で廻って
> いた時に店主と喧嘩になったことがある。
おお、そんなことがありましたか。ポリシーをシッカリと持っておられましたね。
豊住さんが閉店されるとのことを聞き、今日Kさんとこに行った帰りに覗いてきました。
古本屋が多い奈良市内の中で、数少ない新刊本の書店で、考古学書をよくチェックしに、京都からよく行っていました。
専門書では、発刊されて時間が経っている本が、豊住さんに行けばまだ慌てて買いにった慌てて買いに行った思い出があります。
京都市内も嘗ては、こういう本屋さんが家の近くにあったんですが、大型の味気ない書店ばっかりになってきています。
誠に残念、奈良のまた行きたい場所が減るのかぁ~
豊住さんの続報は、こちらに書いています。
https://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/2eb01abfe7626f40bff7268f18c5c22b
> 京都市内も嘗ては、こういう本屋さんが家の近くにあったん
> ですが、大型の味気ない書店ばっかりになってきています。
全く残念です。ご店主のポリシーが光っていました。私はいろんな大型ショッピングセンターに足を運ぶたび、書店をチェックしますが、満足できる店は少ないです。
いよいよ今日で閉店。最終日にはたくさんの方に足を運んでいただきたいです。