tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

田中利典師の『体を使って心をおさめる 修験道入門』集英社新書(6)/「修験道の成り立ち PART.Ⅱ」

2022年03月28日 | 田中利典師曰く
田中利典師の名著『体を使って心をおさめる 修験道入門』(集英社新書)の内容を、師ご自身の抜粋により紹介するシリーズ、今回は「修験道の成り立ち PART.Ⅱ」、修験者(山伏)が身につけているという験力(げんりき=超能力)の話で、これは興味深い。師のFacebook(2/27付)から抜粋させていただく。

シリーズ「修験道の成り立ち」
拙著『体を使って心をおさめる 修験道入門』(集英社新書)は7年前に上梓されました。一昨年、なんとか重版にもなりました。「祈りのシリーズ」の第2弾は本著の中から、「修験道」をテーマに、不定期にですがいくつかの内容を紹介いたします。よろしければご覧下さい。 

************ 

「修験道は里の行」
豊かな大自然に育まれてきた日本人は、山を拝み、火を拝み、水を、風を、大地を…と、私たちを取り囲むあらゆるものを拝みながら暮らしてきました。

その中で、里における庶民の願いに応じた種々の加持祈祷(護摩・地はらい・厄はらい・病気治し・憑きもの落としなど)に携わるのも修験者の役割のひとつでした。前項で述べた役行者以来の優婆塞宗教である修験道の大きな特徴です。

修験者は山で修行し、智慧と力を身に付けます。ここでいう力とは法力とか験力といわれる、いわゆる超能力です。しかし、ただ身につけて、ひとり悦に入るというのではなく、その力を市井で役立てることに修験者の本分があるのです。

山伏が身につけると言われる験力には、主に次のようなものがあります(けっして、私自身が持ち合わせているということではありません)。

・災いを除く力
―身にかかるさまざまな災いや障害を、神仏の力をもって打ち砕いていくことです。

・病を治す力
―山伏は、生薬・漢方薬の類に精通していて、それらを調合して、「なんでも治る魔法の薬」のようなものをつくるのが得意とされました。「陀羅尼助」という薬は、万能薬として有名です。また、護摩供や一尊法など密教にも精通して、病者加持なども行います。

・前世を知る力
―山伏の験力は、仏教でいう神通力にも通じますが、宿命通と呼ばれる、人の前世がわかる神通力のことです。

・他人の心中を知る力
―同じく神通力で他心通という、相手の心の中を見通す力です。

・空を飛ぶ力
―役行者のように本当に飛べたという逸話も残っていますが、確認はなかなか難しいところです。現実的に考えて解釈すると、険しい山でもものすごく速く走れる山伏はいたと思います。比叡山やわれわれ大峯の千日回峰行者などは、いまでもまるで天狗のような速さで山を駆け抜けます。仏教の神通力のうち、神足通と呼ばれる力です。また、一般の人は知らないような山の抜け道なども知っていたことでしょう。それで、飛んだとしか思えない速さで移動できたため、山伏は空を飛べると言われている、ということは充分考えられます。

「現代の山伏のスーパーパワー」
では、現代の山伏はどうでしょう。超能力的な力を発揮しているのでしょうか。実は、現代にも法力は受け継がれているのです。密教や修験における法力を使った人々へのアプローチをひと言でいえば「魔、邪気をはらい、福徳を授ける」ということです。わかりやすくいえば、災いをなすものをはらい、神仏のご加護を授ける秘法です。

具体的な方法としては、護摩を焚いたり(特に修験独特の作法として採灯大護摩供もあります)、火渡りをしたり、一尊法を修したり、あるいは霊符を使いこなしたり、卜占や占いを用いたりします。一尊法とは、ひとつの主尊を定めて供養法を行うことで主尊の力を得る密教の行法で、私も金剛蔵王法や愛染明王法などを行じています。これら山伏の法力については、改めて詳しく解説します。

*写真は自坊で行っている火渡り(火生三昧)の様子
#ウクライナの人々に1日も早く平和がもたらされることを念じます!
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 歴史に憩う橿原市博物館で、... | トップ | 命蓮(みょうれん)の霊験(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

田中利典師曰く」カテゴリの最新記事