6月2日(木)読売テレビの「秘密のケンミンSHOW」の「へえ~!そうだったのか!? 県民熱愛グルメ 柿の葉寿司」を見た。この番組、過去にはトンでもない例があったが、今回は比較的マトモで、大きくはハズしていない。しかし、やはり気になるところがあるので指摘しておきたい。
※トップを含む4枚の写真は、吉野山の静亭(しずかてい)さんで4/29に撮影。
同行したOくんは柿の葉寿司6個を注文。静亭さんは塩漬けしていない柿の葉を使っている
■番組の冒頭では、いきなり近鉄奈良駅や般若寺(奈良市般若寺町)など、奈良市の市街地からスタートしていたが、そもそも柿の葉寿司は、「吉野川・紀の川流域」の行事食である。奈良県農林部のHPによると、
柿の葉でひとくち大のさば寿司を包んで押した夏祭りのごちそうです。江戸時代の中頃、高い年貢を課せられた紀州(和歌山県)の漁師が、金の捻出のため、熊野灘でとれた夏さばを塩でしめ、峠越えして吉野川筋の村へ売りに出かけたところ、おりしも吉野川筋の村々の夏祭りと重なり、以来、夏祭りのごちそうとしてふるまわれたという言い伝えがあります。柿の葉は、タンニンが多く緑色があざやかな渋柿の葉が使われます。東吉野地域では、山に自生している朴の葉を柿の葉のかわりに使い「朴の葉ずし」を作ります。
私は葛うどん。ここにも柿の葉寿司(=トップ写真)
「吉野川・紀の川流域の行事食」なので、奈良県吉野郡や五條市だけでなく、和歌山県の紀の川流域でも作るし食べる。九度山町(和歌山県伊都郡)の実家では、柿の葉寿司を作る道具(木枠や重石)があり、祭りの頃に手作りしていた。カレーライスではないが「わが家の柿の葉寿司が、一番おいしい」のだ。吉野では6月1日の吉野川の川開き、紀州では秋祭りの時に作った。
■始めのあたりに登場した「奈良県生駒市のOさん宅」のシーンは、明らかに「仕込み」である。ご近所さんを呼んで山盛りの(市販の)柿の葉寿司を持ってきて、「○個食べた!」というようなことは、普通はしない(特に奈良県北部では)。お正月の餅ではないのだ。オーブントースターに入れるシーンがあったが、あれは古くなった柿の葉寿司を安全に食べるOさん宅の便法だ。
私の実家では葉を外してフライパンで焼いたが、友人の家では葉のままで七輪で炙ったり、葉のまま電子レンジで温めたという。それはそれで悪くないのだが、あくまでも便法である。水餃子で食べる餃子が、古くなったので焼き、それが焼餃子として一般化した例はあるが…。
■奈良市出身の三戸なつめは、さも奈良市の郷土食のように自慢していたが、まぁ市販の大メーカーの柿の葉寿司を食べた程度だろう。「鯖は苦手」というのも、いかにもビギナー的だ。
■都道府県別の柿の出荷量で、1位は和歌山県、2位が奈良県とやっていた。それは間違いではないのだが、市町村別では五條市(奈良県)が全国1位なので、そのあたりのフォローがあれば良かった。まぁ、柿の葉寿司の葉は、普通は出荷されない渋柿の葉を使うので、あまり出荷量とは関係ないのだが。
■後半部分で「吉野町のNさん宅」を訪ね、柿の葉寿司を手作りする話や、スーパー(吉野ストア)で材料を売っている話は、本当だ。おそらく取材班は、奈良市や生駒市を取材するうちに「どうも県北部ではなく、吉野が本場だ」と気づき、方向転換したのだろう。吉野山の「ひょうたろう」でのロケなど、このあたりの取材はとても良かった。たなか、平宗、ヤマト、ゐざさと、大メーカーを公平に紹介していたのも、良かった。
最初はどうなるかと思ったが、後半で挽回したので、まぁ合格点はつけられるだろう。番組に登場したメーカーでは「ネット通販のオーダーが急増した」「翌日から、店頭客が増えた」と喜んでおられたので、この伝統的行事食の普及には役だったことだろう。
天川村では柿の葉ではなく朴(ほお)の葉寿司。いつも民宿あおばさんが送ってくださる
大阪の相川七瀬が「大阪で食べ過ぎて、奈良の食べ物とは知らなかった」と言っていたが、このような話はよく聞く。新大阪駅とか最近は京都駅でも売っているので、ローカル色が薄れているのだ。「たなか」が頑張って、今や全国のデパートで買える。
私は最近、高速のサービスエリアで加悦町(京都府)のメーカーや岐阜県の「まつ寿司」製の柿の葉寿司を目にしたが、これはパクリではなく、これらの土地でも郷土食として柿の葉寿司を作り、食べていたのだろう。このあたりは、もう少し調べを進めておきたい。情報をお持ちの方は、ぜひご教示いただきたい。
われらの伝統的行事食「柿の葉寿司」、ぜひ全国でお食べいただきたい。
※トップを含む4枚の写真は、吉野山の静亭(しずかてい)さんで4/29に撮影。
同行したOくんは柿の葉寿司6個を注文。静亭さんは塩漬けしていない柿の葉を使っている
■番組の冒頭では、いきなり近鉄奈良駅や般若寺(奈良市般若寺町)など、奈良市の市街地からスタートしていたが、そもそも柿の葉寿司は、「吉野川・紀の川流域」の行事食である。奈良県農林部のHPによると、
柿の葉でひとくち大のさば寿司を包んで押した夏祭りのごちそうです。江戸時代の中頃、高い年貢を課せられた紀州(和歌山県)の漁師が、金の捻出のため、熊野灘でとれた夏さばを塩でしめ、峠越えして吉野川筋の村へ売りに出かけたところ、おりしも吉野川筋の村々の夏祭りと重なり、以来、夏祭りのごちそうとしてふるまわれたという言い伝えがあります。柿の葉は、タンニンが多く緑色があざやかな渋柿の葉が使われます。東吉野地域では、山に自生している朴の葉を柿の葉のかわりに使い「朴の葉ずし」を作ります。
私は葛うどん。ここにも柿の葉寿司(=トップ写真)
「吉野川・紀の川流域の行事食」なので、奈良県吉野郡や五條市だけでなく、和歌山県の紀の川流域でも作るし食べる。九度山町(和歌山県伊都郡)の実家では、柿の葉寿司を作る道具(木枠や重石)があり、祭りの頃に手作りしていた。カレーライスではないが「わが家の柿の葉寿司が、一番おいしい」のだ。吉野では6月1日の吉野川の川開き、紀州では秋祭りの時に作った。
■始めのあたりに登場した「奈良県生駒市のOさん宅」のシーンは、明らかに「仕込み」である。ご近所さんを呼んで山盛りの(市販の)柿の葉寿司を持ってきて、「○個食べた!」というようなことは、普通はしない(特に奈良県北部では)。お正月の餅ではないのだ。オーブントースターに入れるシーンがあったが、あれは古くなった柿の葉寿司を安全に食べるOさん宅の便法だ。
私の実家では葉を外してフライパンで焼いたが、友人の家では葉のままで七輪で炙ったり、葉のまま電子レンジで温めたという。それはそれで悪くないのだが、あくまでも便法である。水餃子で食べる餃子が、古くなったので焼き、それが焼餃子として一般化した例はあるが…。
柿の葉すし本舗たなかの「若葉の柿の葉すし」(期間・店舗限定)
■奈良市出身の三戸なつめは、さも奈良市の郷土食のように自慢していたが、まぁ市販の大メーカーの柿の葉寿司を食べた程度だろう。「鯖は苦手」というのも、いかにもビギナー的だ。
■都道府県別の柿の出荷量で、1位は和歌山県、2位が奈良県とやっていた。それは間違いではないのだが、市町村別では五條市(奈良県)が全国1位なので、そのあたりのフォローがあれば良かった。まぁ、柿の葉寿司の葉は、普通は出荷されない渋柿の葉を使うので、あまり出荷量とは関係ないのだが。
■後半部分で「吉野町のNさん宅」を訪ね、柿の葉寿司を手作りする話や、スーパー(吉野ストア)で材料を売っている話は、本当だ。おそらく取材班は、奈良市や生駒市を取材するうちに「どうも県北部ではなく、吉野が本場だ」と気づき、方向転換したのだろう。吉野山の「ひょうたろう」でのロケなど、このあたりの取材はとても良かった。たなか、平宗、ヤマト、ゐざさと、大メーカーを公平に紹介していたのも、良かった。
最初はどうなるかと思ったが、後半で挽回したので、まぁ合格点はつけられるだろう。番組に登場したメーカーでは「ネット通販のオーダーが急増した」「翌日から、店頭客が増えた」と喜んでおられたので、この伝統的行事食の普及には役だったことだろう。
天川村では柿の葉ではなく朴(ほお)の葉寿司。いつも民宿あおばさんが送ってくださる
大阪の相川七瀬が「大阪で食べ過ぎて、奈良の食べ物とは知らなかった」と言っていたが、このような話はよく聞く。新大阪駅とか最近は京都駅でも売っているので、ローカル色が薄れているのだ。「たなか」が頑張って、今や全国のデパートで買える。
私は最近、高速のサービスエリアで加悦町(京都府)のメーカーや岐阜県の「まつ寿司」製の柿の葉寿司を目にしたが、これはパクリではなく、これらの土地でも郷土食として柿の葉寿司を作り、食べていたのだろう。このあたりは、もう少し調べを進めておきたい。情報をお持ちの方は、ぜひご教示いただきたい。
われらの伝統的行事食「柿の葉寿司」、ぜひ全国でお食べいただきたい。
秘密のケンミンショーで柿の葉寿司のことが取り上げられると知り、録画し、家族で見ました。番組冒頭では、「奈良県全域の郷土食」のような取り上げられ方でしたね。鉄田さんのおっしゃるとおりだと思います。柿の葉寿司は購入すれば結構高いので、人が大勢集まる時にあんな高い物を購入しません。持ち帰りや宅配のにぎり寿司の方が安くつきます。
子どもの頃は、秋祭りのごちそうでした。サバ以外に焼き鮎を炊いたもの、椎茸、小エビをおぼろにしたもの、時々松茸などもありました。柿の葉も渋柿の葉だと柔らかいので、包みやすかったです。五月に柿の葉を取りに行き、イラガ乃幼虫に指されたこともあります。
このテレビを見た札幌の知人から「給食に出すことができる郷土食があるのがうらやましい。札幌にはそんなのがないから。」というコメントが届きました。
> 番組冒頭では、「奈良県全域の郷土食」のような取り上げ
> られ方でしたね。鉄田さんのおっしゃるとおりだと思います。
はい、これでは今まで普及に努められたたなかさんや平宗さんにお気の毒と思い、わざわざこんな記事を書きました。ディレクターは、もっと勉強してほしいと思います。
> 柿の葉寿司は購入すれば結構高いので、人が大勢集まる時にあんな
> 高い物を購入しません。持ち帰りや宅配のにぎり寿司の方が安くつきます。
「8個完食!」と言っていましたが、これだけで1,000円です。ほかにも唐揚げなどが画面に写っていて、とても違和感を感じました。
> 子どもの頃は、秋祭りのごちそうでした。サバ以外に焼き鮎を炊いた
> もの、椎茸、小エビをおぼろにしたもの、時々松茸などもありました。
大和では6月1日の川開き、紀北では秋祭りのときに作りましたね。ウチでは子供用に、ナルト(カマボコ)を載せたものもありました。紀北の方が大和より種類が多いそうです。
> 給食に出すことができる郷土食があるのがうらやましい。
最近は学校も粋なことをしますね、そうやって伝統食を引き継いでいきたいものです。