tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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奈良万葉の旅百首の書評 by 松田度(わたる)さん(大淀町学芸員)

2021年04月22日 | 奈良にこだわる
吉野郡大淀町学芸員の松田度さんが月曜日(2021.4.19)、ご自身のFacebookに『奈良通が選んだ 奈良万葉の旅百首』(奈良まほろばソムリエの会著 京阪奈情報教育出版刊 税込み1,100円 )の書評を書いて下さいました。こんなに詳しくきちんと書いていただいたのは、初めてです。以下に全文を紹介させていただきます。松田さん、ありがとうございました!

【書評】『奈良通が選んだ 奈良万葉の旅百首』
2021年2月、奈良まほろばソムリエの会は、設立10周年を機に万葉集の本を出した。奈良県内の各地域(エリア)ごとに、60名のソムリエが、選りすぐった万葉歌百首を紹介するもの。

まさに「奈良通」のソムリエらしい現地へのいざないであり、万葉集の入門書としても完成度が高い。今年3月で奈良大学文学部を退官された、上野誠名誉教授(現在は國學院大學特別専任教授)の監修。いろいろな意味で記念碑的な一冊だ。目次を紹介する。



○推薦のことば 岡本三千代さん(犬養万葉記念館館長・当時)
○はじめに 米谷潔さん(奈良まほろばソムリエの会会員)

1、初瀬・桜井エリア(泊瀬・泊瀬の山・忍阪・大宇陀への峠道・吉隠)

2、天理・山の辺の道エリア(櫟本・布留川・石上神宮・布留の高橋・引手の山・三輪山・弓月が嶽・巻向川・檜原・大和三山・大神神社・海石榴市)

3、宇陀エリア(宇陀の野・墨坂神社・宇陀・高見山)

4、吉野エリア(吉野川/六田の淀・宮滝遺跡/吉野離宮跡・菜摘の川・夢のわだ・象谷/喜佐谷・象の小川・国栖・吉野の水分山)

5、飛鳥エリア(雷丘・真神の原・飛鳥浄御原宮・橘寺・島の宮/島庄・多武峰の山霧・檜前川・南淵山・飛鳥川の飛び石・飛鳥川・岡宮天皇陵)

6、橿原エリア(竹田の原・磐余の池・天香具山・明日香/藤原京・藤原京の御井・泣沢神社・埴安の池・娘子塚/桜児塚・軽の池/剣池)



本書編集委員の面々(奈良まほろばソムリエの会会員)

7、葛城・御所エリア(二上山/大坂峠・二上山・葛城山・葛城山麓・高天/高間の草野・朝妻山/春日神社・巨勢・宇智の大野・浮田の杜・真土山)

8、奈良盆地中西部エリア(三宅道・百済野・雲梯の杜)

9、生駒・龍田エリア(生駒山・暗越え・因可の池・龍田大社・磐瀬の杜・龍田山/三室山・直越え道)

10、奈良市西部エリア(高の原・平城山越え・佐紀沢・平城京の大宮人・長屋王邸跡・平城宮・菅原の里・勝間田池/大池・平城京/東の市・西の市)

11、奈良市東部エリア(佐保川・奈良山・東大寺大仏・率川・吉城川/宜寸川・春日山・三笠山/御蓋山・春日野・平城の飛鳥・高円山・高円離宮・春日宮天皇陵)

○万葉集の基礎知識 米谷潔さん
○あとがき 鉄田憲男さん(奈良まほろばソムリエの会)

目次だけでも本の充実度がわかる。挿入された15本のコラムも、ほどよいスパイスとなっている。百人百色とでもいおうか、執筆者の思いや個性、掲載写真・イラストへのこだわりも伝わってくる。選ばれた百首には人気の高い万葉歌もあるのだが、櫟本(38頁)、橘寺(116頁)など、たまに〈変化球〉もあるのが楽しい。

とりわけぼくが惹かれたのは、「はじめに」のなかでふれられている<万葉びとが目にし、心を充たしてきたものは、いわば私たちの魂の故郷といっても過言ではありません>の一言(4頁)。「じつに、滋味豊かな本」と上野さんが感服したのも、この奈良万葉にまつわる永遠の問いではないだろうか。

★奈良まほろばソムリエの会(監修 上野誠)『奈良通が選んだ 奈良万葉の旅百首』京阪奈情報教育出版2021年2月刊行(新書版・287頁)
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