得がたい経験をさせていただいた。6月28日(木)、キヤノン株式会社が談山神社(桜井市多武峰)に、狩野派の筆になる「秋冬花鳥図」の高精細複製品を奉納したのである。同神社に奉職されるHさんからお声かけいただき、奉納式の一部始終を拝見させていただいた。キヤノンのニュースリリースによると、
※トップ写真は長岡千尋(せんじ)宮司のご挨拶
大英博物館が所蔵する文化財の高精細複製品を奈良県の談山神社へ奉納
特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第11期作品として、英国大英博物館所蔵の「秋冬花鳥図」(狩野派筆)の高精細複製品を、6月28日に奈良県桜井市の談山神社へ奉納します。
参道の燈籠(重文)は、後醍醐天皇が寄進されたもの
「秋冬花鳥図」の高精細複製品を制作
「秋冬花鳥図」は、江戸時代(17世紀)の狩野派の作と伝えられており、雁や鴨、白椿や千両など秋冬の景物が描かれた襖絵です。オリジナルは、「大化の改新」の中心人物である藤原鎌足を御祭神とする奈良県の談山神社旧蔵という来歴が明らかな点や、桃山時代から江戸時代初期にかけての狩野派の特徴を顕著に伝える点で重要であり、大英博物館が所蔵する日本美術品の中でも代表的な作品と位置づけられています。
ガクアジサイが咲いていた。気温は奈良盆地より3℃は低く、吹く風が心地よい
「綴プロジェクト」では、今期の作品より、複製品の制作過程で使用するカメラやレンズなどの機材を刷新し、これまで以上に高精細な複製品を実現しています。「秋冬花鳥図」の高精細複製品を旧蔵元である談山神社に奉納することで、日本絵画の名品の“里帰り”が実現します。
見事に再現された襖絵。インクジェットによるプリントとは思えない
奉納作品は談山神社で常設展示
本作品は、談山神社の重要文化財である神廟拝所(しんびょうはいしょ)に常設展示される予定です。参拝者は随時、鑑賞できます(拝観料は別途必要)。また、「綴プロジェクト」第11期「秋冬花鳥図」の活動に関する記録映像も展示場所およびキヤノンのホームページで8月中旬から公開予定です。
キヤノンCSR推進部長の木村純子さん
奉納式の模様は、翌日(6/29付)の読売新聞奈良版でも紹介された。
国外流出の襖絵 複製
◇京都文化協など 談山神社に奉納
桜井市多武峰(とうのみね)の談山(たんざん)神社から明治時代初め、廃仏毀釈によって失われ、現在は英国の大英博物館が所蔵する襖絵(ふすまえ)「秋冬花鳥図」の高精細な複製品が28日、同神社に奉納された。神廟しんびょう拝所で常設展示される。
長岡宮司のお礼の言葉
同神社は明治初期以前は多武峯妙楽寺だった。襖絵は廃仏毀釈で壊された学頭屋敷にあったと伝わり、4枚組みで、高さ1・7メートル、幅5・6メートル。江戸時代初期に狩野派の絵師が描いたとされ、金箔や顔料を多用し、ガンやカモ、ツバキ、センリョウなど秋冬の花鳥が華やかに表現されている。
奉納したのは、NPO法人・京都文化協会と大手精密機器メーカー・キヤノン。両者は2007年から、国外流出した美術品などを複製するプロジェクトを行ってきた。同社のデジタルカメラで撮った高精細画像を基に、伝統工芸士らが漆塗りや金箔を施して、現状そっくりに再現した。約150年ぶりに同神社に戻ったことになり、長岡千尋宮司は「大きな時代の流れで失われたものが、複製されて展示できるのは感慨深い」と話した。
奉納式では、写真家の野本暉房(てるふさ)さんや、奈良まほろばソムリエの会理事の雑賀耕三郎さんにもお目にかかった。この襖絵は、同神社の「神廟拝所(しんびょうはいしょ)」(坂の上の受付から入ってすぐ右手)に常設展示される。表絵は大英博物館で見つかったが、裏絵は剥ぎ取られてシアトルに渡ったそうだ。桃山時代~江戸時代初期の狩野永徳の次男・孝信の作かといわれる。昭和初期に大英博物館に渡ったようだ。「春夏 花鳥図」があったかどうかは分からない。
金具や建具は、一流の伝統工芸士が再現した
襖絵は間近で拝見したが、レプリカとは思えない見事な出来映えだ。キヤノンの撮影・印刷(インクジェットプリンタ)および色校正の技術には驚いたし、襖の金具・建具の制作、金箔の吹き付けには一流の伝統工芸士が携わっていて、本物さながらに再現されている。京都でも「綴プロジェクト」によるこのようなレプリカを拝見したが、これは素晴らしいキヤノンのCSRである。
明治150年(150周年)の今年は、神仏分離令(慶応4年・明治元年=1868年)が出されてから150周年に当たる。廃仏毀釈の嵐の中で談山神社の学頭屋敷(同社を管理するために幕府から派遣された役人が住んだ場所、いわば最も格式の高いところ)から流出した襖絵が今年、このような形で戻ってきたとは誠に感慨深いものがある。
Hさん、ありがとうございました。またお客さまを談山神社にご案内いたします!
※トップ写真は長岡千尋(せんじ)宮司のご挨拶
大英博物館が所蔵する文化財の高精細複製品を奈良県の談山神社へ奉納
特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第11期作品として、英国大英博物館所蔵の「秋冬花鳥図」(狩野派筆)の高精細複製品を、6月28日に奈良県桜井市の談山神社へ奉納します。
参道の燈籠(重文)は、後醍醐天皇が寄進されたもの
「秋冬花鳥図」の高精細複製品を制作
「秋冬花鳥図」は、江戸時代(17世紀)の狩野派の作と伝えられており、雁や鴨、白椿や千両など秋冬の景物が描かれた襖絵です。オリジナルは、「大化の改新」の中心人物である藤原鎌足を御祭神とする奈良県の談山神社旧蔵という来歴が明らかな点や、桃山時代から江戸時代初期にかけての狩野派の特徴を顕著に伝える点で重要であり、大英博物館が所蔵する日本美術品の中でも代表的な作品と位置づけられています。
ガクアジサイが咲いていた。気温は奈良盆地より3℃は低く、吹く風が心地よい
「綴プロジェクト」では、今期の作品より、複製品の制作過程で使用するカメラやレンズなどの機材を刷新し、これまで以上に高精細な複製品を実現しています。「秋冬花鳥図」の高精細複製品を旧蔵元である談山神社に奉納することで、日本絵画の名品の“里帰り”が実現します。
見事に再現された襖絵。インクジェットによるプリントとは思えない
奉納作品は談山神社で常設展示
本作品は、談山神社の重要文化財である神廟拝所(しんびょうはいしょ)に常設展示される予定です。参拝者は随時、鑑賞できます(拝観料は別途必要)。また、「綴プロジェクト」第11期「秋冬花鳥図」の活動に関する記録映像も展示場所およびキヤノンのホームページで8月中旬から公開予定です。
キヤノンCSR推進部長の木村純子さん
奉納式の模様は、翌日(6/29付)の読売新聞奈良版でも紹介された。
国外流出の襖絵 複製
◇京都文化協など 談山神社に奉納
桜井市多武峰(とうのみね)の談山(たんざん)神社から明治時代初め、廃仏毀釈によって失われ、現在は英国の大英博物館が所蔵する襖絵(ふすまえ)「秋冬花鳥図」の高精細な複製品が28日、同神社に奉納された。神廟しんびょう拝所で常設展示される。
長岡宮司のお礼の言葉
同神社は明治初期以前は多武峯妙楽寺だった。襖絵は廃仏毀釈で壊された学頭屋敷にあったと伝わり、4枚組みで、高さ1・7メートル、幅5・6メートル。江戸時代初期に狩野派の絵師が描いたとされ、金箔や顔料を多用し、ガンやカモ、ツバキ、センリョウなど秋冬の花鳥が華やかに表現されている。
奉納したのは、NPO法人・京都文化協会と大手精密機器メーカー・キヤノン。両者は2007年から、国外流出した美術品などを複製するプロジェクトを行ってきた。同社のデジタルカメラで撮った高精細画像を基に、伝統工芸士らが漆塗りや金箔を施して、現状そっくりに再現した。約150年ぶりに同神社に戻ったことになり、長岡千尋宮司は「大きな時代の流れで失われたものが、複製されて展示できるのは感慨深い」と話した。
奉納式では、写真家の野本暉房(てるふさ)さんや、奈良まほろばソムリエの会理事の雑賀耕三郎さんにもお目にかかった。この襖絵は、同神社の「神廟拝所(しんびょうはいしょ)」(坂の上の受付から入ってすぐ右手)に常設展示される。表絵は大英博物館で見つかったが、裏絵は剥ぎ取られてシアトルに渡ったそうだ。桃山時代~江戸時代初期の狩野永徳の次男・孝信の作かといわれる。昭和初期に大英博物館に渡ったようだ。「春夏 花鳥図」があったかどうかは分からない。
金具や建具は、一流の伝統工芸士が再現した
襖絵は間近で拝見したが、レプリカとは思えない見事な出来映えだ。キヤノンの撮影・印刷(インクジェットプリンタ)および色校正の技術には驚いたし、襖の金具・建具の制作、金箔の吹き付けには一流の伝統工芸士が携わっていて、本物さながらに再現されている。京都でも「綴プロジェクト」によるこのようなレプリカを拝見したが、これは素晴らしいキヤノンのCSRである。
明治150年(150周年)の今年は、神仏分離令(慶応4年・明治元年=1868年)が出されてから150周年に当たる。廃仏毀釈の嵐の中で談山神社の学頭屋敷(同社を管理するために幕府から派遣された役人が住んだ場所、いわば最も格式の高いところ)から流出した襖絵が今年、このような形で戻ってきたとは誠に感慨深いものがある。
Hさん、ありがとうございました。またお客さまを談山神社にご案内いたします!