5/22、東京奈良県人会総会で、奈良県東京事務所長の上田龍嗣氏が「ポスト1300年祭構想案」という講演をされたという記事が、奈良新聞(5/25付)に出ていた。「これは面白そうだ」と、総会に出席した知人に配布資料を送ってもらった。
資料には見覚えがあった。今年の2月、荒井知事の講演を聴く機会があったが、その時に配布・説明された資料のアップデート版だった。県人会の資料は、「奈良の未来を創る 5つの構想案集」のうち、「(仮称)ポスト1300年祭構想(観光振興)」の部分を抜粋して作られていた。 県のHPにも載っているので、誰でも読むことができる。ざっと抜粋してみる。
http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-16382.htm#itemid36907
ポスト1300年祭構想
Ⅰ.目指す姿
1.じっくり楽しみ、また訪れたくなる奈良
2.世界に通じるブランド力のある奈良
3.あらゆる産業と結びついた観光集客地・奈良
Ⅱ.課題解決のための基本戦略
1.“巡る奈良”をテーマに周遊型観光地としての魅力を高めます
2.オフシーズンを解消し、通年型観光地をめざします
3.奈良の奥深い魅力を効果的に発信します
上記Ⅰ、Ⅱは、その通りだ。方向性に間違いはない。これらを単なる「願望」に終わらせないためには、具体策が必要だ。それが以下のように示されている。
Ⅲ.カテゴリー別構想
1.“巡る奈良”をテーマに周遊型観光地としての魅力を高めます
§ 1 世界に誇れる奈良公園を目指します
§ 2 「平城宮跡歴史公園」の整備の促進を図ります
§ 3 ホテルを核とする賑わいと交流の拠点を整備します
§ 4 中南和の魅力振興に取り組みます
§ 5 明日香をはじめとする奈良県の歴史展示力を強化します
§ 6 「食」の集客力に着目した奈良の食の魅力向上に取り組みます
§ 7 観光振興を支える交通施策を進めます
§ 8 新しい魅力ある土産物の開発・研究に取り組みます
2.オフシーズンを解消し、通年型観光地をめざします
§ 9 「光と灯り」を活用した賑わいを創出します
§10 コンベンション誘致を促進します
§11 スポーツを活用した誘客を促進します
3.奈良の奥深い魅力を効果的に発信します
§12 首都圏情報発信戦略に基づき、首都圏からの誘客を進めます
§13 多彩なツールを利用し情報を発信します
§14 「歩くなら」の新しい取り組みを進めます
§15 官民一体となった外国人観光客誘致戦略を展開します
§16 記紀・万葉集を題材とした記念事業を実施するためのプロジェクトを立ち上げます
奈良を周遊してもらい、泊まってもらう、という戦略はそのとおりだ。しかし「§ 3 ホテルを核とする賑わいと交流の拠点を整備します」は、あまり奈良らしくない。県や奈良市が望んでいた大型ホテル誘致は実現できていないが、奈良には、民宿・ペンション、宿坊、簡易宿泊所(B&B)などの小規模な宿泊施設が似合うのではないか。
大型ホテルが奈良進出に二の足を踏むのは、春秋のオンシーズンと、夏冬のオフシーズンの繁閑の差が激しいことと、企業数が少ないので宴会部門の収益が望めないことである。家族経営などの小規模な施設は、オンシーズンのお客を吸収してくれる(オフシーズンには、店仕舞いしていれば済む)。「§14 『歩くなら』の新しい取り組みを進めます」とあるが、歩いて奈良を巡る観光客は、こういう所に泊まってくれるのではないだろうか。
また周遊型観光地としての魅力を高めるためには、ボランティアガイドなど「人」によるサポートが欠かせない。県下各地で「語り部」の養成や「もてなしの心」の推進が行われている。平城遷都1300年祭の宮跡会場では、ボランティアガイドによる「平城宮跡探訪ツアー」が引っ張りだこの人気だ。今春には、県下で初の学生による社寺案内グーループ「南都古社寺研鑽会」も発足した。奈良県民には引っ込み思案な人が多いが、ほとんどは心根が優しく親切な人だ。1300年祭終了後も、観光客に対して「もてなしの心」を大いに発揮していただきたいものだ。また、これをサポートする公的な仕組みも作ってほしいと思う。
奈良の奥深い魅力を情報発信するには、ランドオペレーター(観光プランナー)的な人や組織が必要だ。当ブログ(6/5付)で紹介した第四銀行の調査の中で《「チェックアウト後にどこにいったらいいのかわからない」「観光地の情報がほしい」「観光地ならではの情報がほしい」という要望》《観光地において、観光の行程をサポートするプランナーのような人が不在なため、多くの観光客が観光情報の入手や観光スポットへのアクセスを手助けするプランニング的なサービスを求めている》とあった。松之山温泉は、自分たちでツアーを催行できる旅行会社を立ち上げたが、奈良県下でもこの種のニーズを満たす手だてが求められている。
※第四銀行の観光支援事業(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/f4dcf8dced57dde1bab59771321e834d
※奈良に「ランドオペレーター」を!(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/fa0f7a902e18a70a7670b2d99ed017aa
ともあれ、県の資料にある中南和の振興、「食」の魅力の向上、魅力的な土産物の開発、外国人誘致、歩く奈良の取り組み、記紀・万葉集を題材とした記念事業などは面白いし、とても大切なことである。
奈良県は人口が減少傾向にあるが、国交省のデータによると、定住人口が1人減ると、年間の消費額は121万円減るそうだ。これを埋め合わすには、交流人口を増加させることが必要となる。旅行消費額の調査結果によると、1年間に外国人旅行者なら7人、国内宿泊旅行客なら22人、国内日帰り旅行客なら77人誘致すれば、年間消費額の減少を埋められるという。いかに外国人誘致や宿泊旅行誘致が大切か、分かっていただけるだろう。
平城遷都1300年祭、前半は予想を上回る好評で折り返した。後半はお祭りの成功だけでなく、「奈良は、こんな素晴らしいところだったのか」「ぜひ来年も、友だちを誘って訪ねよう」と思っていただき、「じっくり楽しみ、また訪れたくなる奈良」にできるような“もてなし”に努めたいと思う。
資料には見覚えがあった。今年の2月、荒井知事の講演を聴く機会があったが、その時に配布・説明された資料のアップデート版だった。県人会の資料は、「奈良の未来を創る 5つの構想案集」のうち、「(仮称)ポスト1300年祭構想(観光振興)」の部分を抜粋して作られていた。 県のHPにも載っているので、誰でも読むことができる。ざっと抜粋してみる。
http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-16382.htm#itemid36907
ポスト1300年祭構想
Ⅰ.目指す姿
1.じっくり楽しみ、また訪れたくなる奈良
2.世界に通じるブランド力のある奈良
3.あらゆる産業と結びついた観光集客地・奈良
Ⅱ.課題解決のための基本戦略
1.“巡る奈良”をテーマに周遊型観光地としての魅力を高めます
2.オフシーズンを解消し、通年型観光地をめざします
3.奈良の奥深い魅力を効果的に発信します
上記Ⅰ、Ⅱは、その通りだ。方向性に間違いはない。これらを単なる「願望」に終わらせないためには、具体策が必要だ。それが以下のように示されている。
Ⅲ.カテゴリー別構想
1.“巡る奈良”をテーマに周遊型観光地としての魅力を高めます
§ 1 世界に誇れる奈良公園を目指します
§ 2 「平城宮跡歴史公園」の整備の促進を図ります
§ 3 ホテルを核とする賑わいと交流の拠点を整備します
§ 4 中南和の魅力振興に取り組みます
§ 5 明日香をはじめとする奈良県の歴史展示力を強化します
§ 6 「食」の集客力に着目した奈良の食の魅力向上に取り組みます
§ 7 観光振興を支える交通施策を進めます
§ 8 新しい魅力ある土産物の開発・研究に取り組みます
2.オフシーズンを解消し、通年型観光地をめざします
§ 9 「光と灯り」を活用した賑わいを創出します
§10 コンベンション誘致を促進します
§11 スポーツを活用した誘客を促進します
3.奈良の奥深い魅力を効果的に発信します
§12 首都圏情報発信戦略に基づき、首都圏からの誘客を進めます
§13 多彩なツールを利用し情報を発信します
§14 「歩くなら」の新しい取り組みを進めます
§15 官民一体となった外国人観光客誘致戦略を展開します
§16 記紀・万葉集を題材とした記念事業を実施するためのプロジェクトを立ち上げます
奈良を周遊してもらい、泊まってもらう、という戦略はそのとおりだ。しかし「§ 3 ホテルを核とする賑わいと交流の拠点を整備します」は、あまり奈良らしくない。県や奈良市が望んでいた大型ホテル誘致は実現できていないが、奈良には、民宿・ペンション、宿坊、簡易宿泊所(B&B)などの小規模な宿泊施設が似合うのではないか。
大型ホテルが奈良進出に二の足を踏むのは、春秋のオンシーズンと、夏冬のオフシーズンの繁閑の差が激しいことと、企業数が少ないので宴会部門の収益が望めないことである。家族経営などの小規模な施設は、オンシーズンのお客を吸収してくれる(オフシーズンには、店仕舞いしていれば済む)。「§14 『歩くなら』の新しい取り組みを進めます」とあるが、歩いて奈良を巡る観光客は、こういう所に泊まってくれるのではないだろうか。
また周遊型観光地としての魅力を高めるためには、ボランティアガイドなど「人」によるサポートが欠かせない。県下各地で「語り部」の養成や「もてなしの心」の推進が行われている。平城遷都1300年祭の宮跡会場では、ボランティアガイドによる「平城宮跡探訪ツアー」が引っ張りだこの人気だ。今春には、県下で初の学生による社寺案内グーループ「南都古社寺研鑽会」も発足した。奈良県民には引っ込み思案な人が多いが、ほとんどは心根が優しく親切な人だ。1300年祭終了後も、観光客に対して「もてなしの心」を大いに発揮していただきたいものだ。また、これをサポートする公的な仕組みも作ってほしいと思う。
奈良の奥深い魅力を情報発信するには、ランドオペレーター(観光プランナー)的な人や組織が必要だ。当ブログ(6/5付)で紹介した第四銀行の調査の中で《「チェックアウト後にどこにいったらいいのかわからない」「観光地の情報がほしい」「観光地ならではの情報がほしい」という要望》《観光地において、観光の行程をサポートするプランナーのような人が不在なため、多くの観光客が観光情報の入手や観光スポットへのアクセスを手助けするプランニング的なサービスを求めている》とあった。松之山温泉は、自分たちでツアーを催行できる旅行会社を立ち上げたが、奈良県下でもこの種のニーズを満たす手だてが求められている。
※第四銀行の観光支援事業(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/f4dcf8dced57dde1bab59771321e834d
※奈良に「ランドオペレーター」を!(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/fa0f7a902e18a70a7670b2d99ed017aa
ともあれ、県の資料にある中南和の振興、「食」の魅力の向上、魅力的な土産物の開発、外国人誘致、歩く奈良の取り組み、記紀・万葉集を題材とした記念事業などは面白いし、とても大切なことである。
奈良県は人口が減少傾向にあるが、国交省のデータによると、定住人口が1人減ると、年間の消費額は121万円減るそうだ。これを埋め合わすには、交流人口を増加させることが必要となる。旅行消費額の調査結果によると、1年間に外国人旅行者なら7人、国内宿泊旅行客なら22人、国内日帰り旅行客なら77人誘致すれば、年間消費額の減少を埋められるという。いかに外国人誘致や宿泊旅行誘致が大切か、分かっていただけるだろう。
平城遷都1300年祭、前半は予想を上回る好評で折り返した。後半はお祭りの成功だけでなく、「奈良は、こんな素晴らしいところだったのか」「ぜひ来年も、友だちを誘って訪ねよう」と思っていただき、「じっくり楽しみ、また訪れたくなる奈良」にできるような“もてなし”に努めたいと思う。