tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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観光地奈良の勝ち残り戦略(15)宿泊者を増やすために

2008年07月23日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
奈良新聞の人気コーナー「大和の経済人 ざっくばらん」の第26回(7/21付)に登場したのは、奈良県観光連盟専務理事の三浦建史郎氏だ。見出しは「宿泊者数増加が命題 事業者に学習機会も」で、聞き手は(たまたま同姓の)三浦孝仁記者である。

三浦専務理事は、1945(昭和20)年7月生まれで奈良市のご出身。県立奈良高校から日本交通公社入社・奈良営業所勤務。JTBトラベランド常務などを経て、2005(平成17)年4月にはJTB執行役員・JTB商事代取社長。07年3月に退社し08年5月から現職。つまりバリバリの業界人だったのだ。

県観光連盟は会長が知事なので、現実には空席だ。その実質トップにJTBの生え抜きで元役員、しかも奈良の出身者が就任されたことは、とても頼もしいし、有り難い。そんな三浦氏の話をピックアップしてみる。

《命題は観光振興によって、宿泊者数の増加を促すことだ》《JTBによる県内の宿泊客統計(平成18年度)では、関東からが約57%、東海・中京からが約10%、近畿からが約15%》《首都圏をセールス拠点として位置付け、情報発信基地の機能を強化する》。県の《南は特に関西圏の需要がある。同時に県北部からのお客さまも招き宿泊してもらいたい》。

「平成19年の奈良県の延べ宿泊客数は116万人で、47都道府県中最下位」という話を当ブログ(7/19付)で紹介したが、宿泊者数の増加が焦眉の急だし、首都圏をその拠点にするというのは、とても良いアイデアだ。奈良に憧れを感じる東京人は多い。

別の記事だが、土曜日(7/19)の読売新聞夕刊に「奈良の観光 県企画人気」という記事が載っていた。県の「ならの魅力創造課」が企画した24の滞在型プランが旅行会社10社に採用されたそうだ。プランの例としては、「大和路八十八面観音巡り」(県内8寺院の十一面観音立像を1泊2日で見学)、「大和路八十八重塔巡り」(20寺院の三重塔、五重塔を2泊3日で見学)など。宿泊しないと回りきれないプランを提案したのだという。

このほか《烏帽子や袴を着け、談山神社(桜井市)で蹴鞠をするプランや、龍泉寺(天川村)で滝行体験をする企画》なども用意している。《八十八重塔巡りを採用したJR東日本グループの旅行会社の担当者は「首都圏の旅行会社は、現地調査や寺社との交渉が難しいので助かる。企画も古都の魅力を掘り下げていて、ユニーク」て歓迎している》《同課は「新しい発想でもっと奈良をアピールしたい」と意気込む》。これは、どんどんやっていただきたいものだ。

なお県では、代官山iスタジオでスタッフが東京都内での誘客セールスを行っているが、これはもっとテコ入れしないといけない。セミナーなどには人が集まるというが、顔ぶれが同じでは広がりがない。同スタジオ内にある奈良市の「東京観光オフィス」はJTBでなくKNT(近ツー)出身者が3人体制で動いているが、果たしてどんな成果が上がっているのか、奈良にまで伝わってこない。東京での県と市の連携は、うまく行っているだろうか。

「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産指定以降、近畿圏や(私も含めて)県内から県南部に宿泊旅行に訪れる人が増えた。このあたりの掘り起こしも大切だ。県観光に関するまとまった統計資料がないので、その手当ても必要だ。相手を知らなければ、戦略を立てることができない。

三浦氏の話に戻る。《旅行会社やマスコミとの連携を深める必要を感じる。旅行は滞在型観光へ変遷している一方で、周遊型観光のニーズも依然としてある。この点に留意し、両面の観光を盛り上げたい》《宿泊事業者には宿泊商品の企画、旅行会社への営業、ホームページ作成など営業ノウハウを学ぶ機会を提供していきたい》。

県下の旅館・ホテルのホームページによる情報発信は、他府県に比べて低調だ。一般に、県下の事業者は広告宣伝には消極的だし、マスコミへの売り込みも下手だ。楽天トラベルなどを上手く利用している宿泊業者もあるが、ごく一部にとどまっている。こうした学習機会の提供は、意義のあることだ。

各観光関連団体との連携については《各車両にモーターが付いている新幹線のような姿が理想だ。コミュニケーションを徹底し、行動を起こしてもらう動機付けを行いたい》。

新幹線のように「各車両にモーターが付いている」姿とは、的確な比喩だ。県下では、行政の牽引ばかりを期待したり、「ウチが動かなくても、大勢には影響がないだろう」という業者や団体が多いからだ。もっと自主的に動かなければ、将来はないのに。


東大寺二月堂の舞台(5/11撮影)

修学旅行客の減少については《全国的な行き先は沖縄・北海道、信州・海外で全体の8割を占める》《県では歴史文化が香る観光資源を活用した体験型プログラムが生きる。良好な人間関係の形成ができたり食育知識が高められるような、テーマ性があるプランが必要だ》と提案する。

修学旅行生の行動を観察していると、お寺巡りにウンザリしているような顔が目につく。単なる見物だけではダメなのだ。どこかで「お寺なんか、おもんない(面白くない)し…」という感想文を見たことがある。それが落書きの多さなどにも現れている。まさに「テーマ性があるプランが必要」なのだ。


手向山神社(東大寺境内 同日)

他にも三浦氏は《「観光の奈良」というイメージをブランディング(=ブランド化)できないかもう一度見直すべき》《大和路アーカイブの充実も図りたい》という提案をされている。

奈良は、せっかくの観光地イメージをもっと大切に育てるべきだし、「大和路アーカイブ」(観光連盟が提供する奈良県の観光総合サイト)は、「京都おこしやす.com」などにならって、リニューアルすべきである(肝心の「仏像アーカイブ」に仏像写真が出ていないのは、致命的だ)。
http://www.kyoto-okoshiyasu.com/index.html

奈良観光の問題点をズバリ指摘し、その対策まできちんと言及される方には、これまであまりお目にかかったことがない。素晴らしい人材を得て、県観光連盟は、これから大いに奈良の観光振興をリードしていただきたい。それに刺激されて動き出す業者や団体は、多いはずだから。

※写真は浮見堂(奈良公園内)。07.7.25撮影。
コメント (9)
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