tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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大和の地名(4)多と小

2008年07月01日 | 奈良にこだわる
ウチの会社のK部長は、磯城郡田原本町大字多(おお)の出身・在住である。「多」とは珍しい地名なので、『奈良の地名由来辞典』(東京堂出版)で調べてみると、式内社「多坐弥志理都比古(おおにいますみしりつひこ)神社」の鎮座地だそうだ。

多は「飮富(をふ)」を一字化したもので、飮富は「麻生(をふ)の義か」とある。

この神社のことは奈良検定のテキストにも載っていた。当地を本拠地とした古代豪族・多(おお)氏の祖神をお祀りした神社で、通称「多(おお)神社」という。古事記の編纂者である太安万侶は、多臣蒋敷(こもしき)の孫だそうだ。

『奈良の地名由来辞典』を読んでいると、複数の漢字地名を「一字化した」という表現が随所に出てくる。一字化する過程で全く別の漢字が当てはめられ、もともとの字義とかけ離れていくことが多く、それが奈良の地名を複雑なものにしているようだ。だから一字地名のルーツを調べていくと、いろいろ面白いことが分かってくる。

一方、吉野村には「小(おむら)」という地名がある。丹生川上神社(中社)は、ここ(東吉野村小)にある。

『…由来辞典』には載っていないので、『角川日本地名大辞典』の奈良県版を参照すると、この地名は古事記に登場する「袁牟漏が岳」(おむろがだけ=現在の小牟漏岳)に由来するという。これも「袁牟漏」を「小」に一字化したというケースに該当しそうだ。

それにしても、古事記を編纂した太安万侶が「多」氏にゆかりの人物で、その古事記に「小」の語源が登場するというのは、不思議な縁である。全く、知れば知るほど奈良はおもしろい。

※写真は、丹生川上神社(中社)で行われる小川祭りの勇壮な太鼓台。05年10月に撮影。
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