tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

同時進行!平城遷都1300年(10)

2008年02月13日 | 平城遷都1300年祭
昨日(2/12)、いよいよ平城遷都1300年祭の「実施基本計画(案)」が発表された。実施基本計画は過去にも発表されたことがあるが、今回のものは荒井知事に交代し、事業が見直されたことに伴う「修正計画」だ。奇しくも「同時進行…」シリーズ10回目で全体計画を紹介するめぐり合わせとなった。

柿本前知事時代には協会事業規模は350億円(うち200億円は民間寄付と入場料収入)で計画されていたが、現在は100億円(20億円は民間、80億円は県と奈良市が出捐)と下方修正されている。また名称も、これまでの「平城遷都1300年記念事業」が「…祭」に変更され、やっと呼びやすくなった。ざっと概要を紹介すると、

1.会期…平成22(2010)年 1月1日から12月31日
2.会場…平城宮跡(主会場)、奈良県内、関西等の各地
3.構成…平城宮跡事業、県内各地事業、関連広域事業、事前展開事業の4つ
4.参加者見込み…平城宮跡事業 約200~250万人(記念イベント全体 約1,200~1,300万人)

協会ホームページには《具体的な事業展開としては、平城宮跡の国営公園化と相まって、恒久・継続、全県・広域型に見直し、平城宮跡では、2010年秋の「平城遷都1300年記念祝典」開催のほか、基本的に無料・開放型で、往時の再現された施設活用を中心に、歴史文化を実体験できる展示や催事等を計画します。県内各地では、2010年の1年間を通して、国宝など“本物の魅力”に親しめる周遊型イベント等の展開を図ります。さらに、これらの事業に関連して、県内外の各地において、コンベンション、フォーラム、古京ゆかりの各地等との連携イベントなどの取り組みを進めます》とある。目玉は宮跡のパビリオン「平城京歴史館」で、平城京の造営や暮らしを映像や模型で学ぶという。
http://www.1300.jp/gaiyou/080212kgaiyo.html

新計画の詳細は上記ホームページをご参照いただきたいが、今朝(2/13)の奈良新聞の見出しを追うと《堅実型へ見直し 仮設施設は最低限に 大極殿活用も視野》《継続・全県型に期待の声》《早期具体化望む》《PR積極的に/交通手段は?/周辺地域と連携》、知事会見のタイトルは《主会場は無料/後に残る祭りごとに/赤字出さない》。これだけでも、全体の雰囲気を感じ取っていただけるだろう。

なお朝日新聞の見出しは《企業協賛金集まらず 事業費7割減に》《目玉のパビリオンどこに? 事業規模は? 国待ちであいまいさ 背景に国営公園化》《市町村、独自催しへの不満の声》と手厳しい。100億円の総事業費の内訳がはっきりしないこと、宮跡の整備計画が国抜きでは決められないこと、市町村は関連イベントの開催を求められても(助成金の有無が分からない状態では)動きがとれないことなどを指摘したものだ。同紙は山根一眞氏の《過去に学んで未来をどう構築するかという鮮烈な提案がなければ人々の関心を集めることはできない。今回発表の計画は総花的で、歴史の学習展といった印象だ》という辛口コメントも紹介している。

産経新聞は「視点」(奈良版2/13付)で、県政担当記者が《「急ごしらえ」の感がぬぐえない》、国の整備費負担が決まるのは《今年夏頃になるという。県や市町村の負担割合も現時点では未定。パビリオン2館も、単独施設か複合施設かを決めかねている》、《県民に詳しく説明できないような計画では、先行きに常に不安感がつきまとう》と記している。

極め付きは籔内佐斗司氏(彫刻家・東京芸大教授)制作のマスコットキャラクターで、同記者は《公募することもなく、大手広告代理店を通じて選んだデザイナー候補者の中なかから、すでに昨年3月には1人に絞り込んでいたという》、《デザイン料や著作権料は500万円》、《なぜ公募もなく約1年も前にキャラクターを内定し、かつ公表しなかったのか。愛称募集でも盛り上がりに欠けることが懸念される》とする。確かにこのキャラは、籔内氏の十八番である「童子」(=異界からやってくる不思議な子供)シリーズの延長線上にあるもので、彼に依頼すればこういうキャラになることは予想されたはずだ。
※籔内佐斗司の世界
http://uwamuki.com/j/indexJ.html#Anchor-AMUSEMENT-49575

「まだ服を着ているだけマシ」ともいえるだろうが、このキャラには寺院関係者からも強い反発の声があるという(角を生やしているのは鬼=四天王などの足元にいる邪鬼だから)。これが地元の芳岡ひでき氏の愛らしいデザインだったら良かったのに、とタメ息をつくのは私だけだろうか。
※芳岡ひできのファンタジーアイランド
http://www.socks.co.jp/

なお各紙には、地元の知人たちもコメントを寄せていた。《2010年をスタートラインに考えてもらっているのはうれしい。ただ、ビジネスとして客を誘致するには、わくわくするようなイベントの核が見当たらない》(奈良ロイヤルホテル 八坂豊社長:奈良新聞)。

《宿泊しながら奈良を学ぶ講座を作ってみてはどうか。それが人気を呼び、新たな奈良ファンを産むだろう。大極殿など復元建物だけでなく、滞在型イベントも継続させて、経済活性化へつなげてほしい》(奈良県立大学 安村克己教授:朝日新聞)。

《奈良の歴史遺産に頼りすぎている。もっと地域文化のすばらしさも伝え、観光客に地域へ入り込んでもらわないと真の経済効果につながらないのではないか。(中略)地域の人が主体となってイベントをする。県がそれらをしっかりサポートする形が望ましい》(地域活性局 藤丸正明代表:朝日新聞)

下方修正計画であれ、国の指示待ちであれ、開催2年前というギリギリのタイミングで実施計画案が出てきたことで、私は少し安心した。奈良時代の貴族の衣裳で会見に現れた荒井知事は「平成22年をピークに終わるのではなく、県の観光をグレードアップできる事業を目指している」と語った。市役所南の県営プールを撤去し、高級ホテルを誘致する意向も表明している。

思えば、1997年(平成9年)に「平城遷都1300年を考える奈良の会」が開かれ、この会の提言で99年(11年)「平城遷都1300年記念2010年委員会」が設立された。それから8年が経過して、やっとここまでたどり着いたのだ。異論はあるだろうし私も不満があるが、地元が地域活性化の目玉と期待するイベントであることは間違いがない。県民の知恵と力を合わせて、この事業を成功に導こうではないか。

※参考:同時進行!平城遷都1300年(9)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/4185b8badd29211ae064ac447f2568ea

※写真は平城宮跡・朱雀門(05.4.24撮影)。記念事業協会ホームページのトップ画像をマネてみた。 
コメント (23)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

同時進行!平城遷都1300年(9)

2007年10月30日 | 平城遷都1300年祭
約5か月ぶりに「同時進行…」第9弾をお届けする。前回(6/9)以降の大きな動きといえば、やはり「平城遷都1300年記念事業実施方針案」の決定・発表だろう。

この「案」の前提には、荒井知事が国土交通省に要望すると公表(5/30)した「大極殿回廊」と「朝堂院」(ちょうどういん)の復原、および宮跡の「国営公園化」という3点セットがある。

「案」の概要は8/3付の同協会ニューズレター(第7号)に掲載されているが、その後の情報も合わせて、以下に紹介する。
※参考:平城遷都1300年記念事業協会ニューズレター
http://www.1300.jp/newsletter/index.html

1.記念事業の構成

記念事業は、宮跡の国営公園化と記念イベントで構成。イベントは「平城宮跡事業」(宮跡で行う事業)と「広域連携事業」(県内各地とタイアップして行う事業)に大別する。
(1)平城宮跡事業
・第一次大極殿(=すでに工事中)、大極殿回廊、朝堂院などの施設を復原し、そこで古代衣装・食・音楽等を楽しみながら実体験できる場や機会を提供。
・記念式典をはじめ、催事・展示・物販・飲食、参加体験等の祝祭フェアなどを季節リレーで展開。
(2)広域連携事業
・平城宮跡をゲートウェイ(玄関)として、年間を通じて充実した広域ネットワーク型イベントを開催。
・市町村、社寺・博物館、企業・団体等の多くの人の参加を得て、秘宝・秘仏等の展示・展覧会、伝統行事、国際的なコンベンション・シンポジウムなどのイベントを実施、あるいはコーディネート。

2.推進スケジュール

(1)国営公園化
概算要求(8月)→政府予算案(12月)→国予算成立(3月)→閣議決定(4月)
(2)記念事業実施計画
実施方針の決定(9月)→実施計画案とりまとめ(12月)→県民からの意見募集・関係機関との調整(1~2月)→実施計画決定(3月)

あらましは以上だが、要するに知事が交代して方針が変わり、仮設パビリオンの建設ではなく「復原施設の活用」「国営公園化」をベースとした事業を行うということである。

これに対し、朝日新聞から疑問の声が上がった。9/19付夕刊の《荒井知事「国営公園化」で波紋 遷都祭に完成困難》という記事だ。

《パビリオンを造らず、国営公園として古代宮都の中枢部を復元するとしたが、開会までの工事完了は難しい状況。担当者は頭を抱える》《予想入場者を下方修正し、近鉄奈良線につくる予定だった臨時仮設駅構想も撤廃したため、計画変更後の総事業費もはじき出せないでいる》《県庁内では「年度内に(会場の)設計ができないと間に合わない」と焦りの声も出始めている》

ただ予算面では、8/29には平城宮跡の「国営公園化」が国土交通省の来年度予算の概算要求に盛り込まれ、また10/19には、遷都1300年を機に観光交流を促進しアクセス道路や公園を整備するという事業に、国交省からの補助金(地域自立・活性化交付金)の交付が決まった。タイムスケジュールを別とすれば、知事の目論見は一歩一歩実現に向かって進んでいると言えるだろう。
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/02/021019_.html

先日、同じ朝日新聞に、知事へのこんなインタビュー記事が載った。見出しは《小滝ちひろ記者が奈良県知事 荒井正吾さんに聞く》(10/27付)。

《お金の算段はできる。時間については完成とはいかなくてもそこそこはできる》。「盛り上がりが見えない」という記者の問いには《前もって高ぶらなくて大丈夫。粛々と祝います。事業は奈良の展示力(案内、動線、説明)とは何かを探し、発見する作業》。

しかし、それは《全く完成されていない》《宗教的な精神性の高いものが多い奈良の素材には失礼かも知れないが、おもしろみを加えることに欠けていないでしょうか》と知事は語る。

記事の末尾で小滝記者は、東大寺大仏殿の柱の穴くぐり(=大仏さまの鼻の穴の大きさにくり抜いてある)に行列ができていることを例に、《ちょっとした遊び心をあちこちで形にすれば、展示力の強化はそう難しくないように思えるのだが、どうだろうか》と読者に問いかけている。

この問いは、私がいつも引用する観光コンサルタントの話「女子供を軽んじるな」「東京ディズニーランドに学べ」と、再びダブって頭に響いてくる。

新薬師寺で売っていた200円の絵はがき(バサラ大将像のCG復元画像)には、元画像掲載サイトへの無料アクセス権がついていた、西大寺の大茶盛は、巨大な茶碗でお抹茶をいただくというミスマッチが面白かった、薬師寺の天武忌(於:明日香村)では、菊の御紋のクッキーをいただいた(もらった全員が紙に包んで持ち帰った)、正倉院展では、展示よりミュージアムショップの正倉院グッズに引きつけられた、など、高尚なものからちょっとズレたところが印象に残っている。

観光客を引きつける勘所は、「大仏殿の柱くぐり」のようなちょっとした仕掛け・遊び心にあるのかも知れない。この記事は、奈良への誘客を考える良いヒントになった。

※同時進行!平城遷都1300年(8)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/1051e96909c74e7f374e36456c6814b7

※写真は興福寺東金堂。室町時代の再建だが、天平当時の姿をよく再現している(07年6月撮影)。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

同時進行!平城遷都1300年(8)

2007年06月09日 | 平城遷都1300年祭
久々に「同時進行…」の第8弾をお届けする。前回は昨年9月2日だったから9か月ぶりだが、この間は動きが少なかった。

平城遷都1300年記念事業協会から、「平城遷都1300年記念事業ニューズレター」がこの間に2回出ている。いわば「公式発表」だが、第4号(06.11.24発行)のトップは「自由民主党平城遷都1300年記念事業推進議員連盟設立―会長に森元首相」だった。
※ニューズレター(PDF形式)http://www.1300.jp/newsletter/newsletter4.pdf

第5号(07.3.30)では、森氏など同連盟のメンバーが平城宮跡を訪れたことが、これまたトップニュースで紹介されている。http://www.1300.jp/newsletter/newsletter5.pdf

この時の様子が毎日新聞(奈良版 3/16付)に出ていた。森元首相は《「ここでサミットをやったらいい。それぐらい素晴らしい会場だ」》《約1時間にわたり視察した森元首相が「(記念事業は盛り上がっているんでしょう?)」と話を振ると、柿本善也知事は「左様でございます」と笑顔で答えた》とある。

しかし、残念ながら地元ではさほどの盛り上がりを見せていない。県知事選は3/22告示、4/8投票だったが、荒井正吾氏(当時は自民党参院議員)は遷都事業の見直し(規模縮小)と宮跡の国営公園化をマニフェストに掲げた(国営公園にすれば、会場整備費の県負担はゼロになるという)。対する西ふみ子氏(共産推薦・前生駒市議)は「お祭りに300億円もかけるのはムダ」と、こちらは事業の中止を訴えた。

さて、上記以外の主な動きを新聞スクラップから拾ってみる。
o奈良・平城宮跡に盛り土案「遺構傷む」専門家懸念(12/14 朝日・夕刊)
パビリオン建設予定地約10haに数10cmの厚さで土砂を盛ることや、部分的には厚さ30cmの発泡スチロールを並べた上に板を載せて舗装する方法を協会が検討していることが分かった。《考古学者の間からは「何でそこまでして開くのか」との声が漏れる》。

oパビリオン、建設場所を変更へ 事業費減額(3/2 朝日・奈良版)
柿本知事(当時)は《主会場となる平城宮跡・大極殿前のパビリオン建設を断念したと表明した。事業費も350億円から300億円程度に減額する》《当初計画では、大極殿から約800m南の朱雀門までメーンストリートを設け、両側に奈良時代の建物をイメージした外観を持つパビリオンを建設。しかし、文化庁は「当時そのような大きな建物はなく、来場者の誤解を招く」などと反対していた》《パビリオンは同宮跡東部を中心に分散して建設する》。

o会議場付きホテル、誘致断念 奈良市(3/7 朝日・奈良版)
《JR奈良駅前に大型ホテルの誘致を進めている奈良市は6日、1千人が収容できるコンベンション(会議場)付きホテルの誘致を事実上断念し、「高規格、高品質」のホテルのみを事業者に公募することを明らかにした》《7月に事業者を決める。コンベンション付きホテルを断念した理由について、市は「事業者側から経営上難しい、という声があったため」としている》。

なおホテルに関する情報としては、7月に139室の東横インが新大宮にオープンする予定だが(21室のビジネスホテル ニューたかつじが建替)、来年1月にはJR奈良駅東側に、(株)グリーンズ(本社:三重県四日市市)が経営するコンポートホテル(131室)が竣工するそうだ。

o開催地として奈良市挙手へ 世界歴史都市会議(6/1 朝日・奈良版)
《奈良市は、平城遷都1300年にあたる2010年に、世界68都市が加盟して2年に1度開かれている「世界歴史都市会議」の開催地として名乗りを上げる》《藤原市長は「歴史のある木造建築など奈良はどこにもひけを取らない。1300年の機会に世界の方々に奈良の史的財産をぜひ見てほしい」と話している》。

2010年には上海万博が開かれるので、これとタイアップして訪日客を呼び込もうとの動きが報道されていたが、この年には韓国・忠清南道で「大百済展」(総事業費400億円・うち政府が200億円負担)が開かれるそうで、百済渡来の文化が残る奈良と連携する話が浮上しているという。

最近になって荒井知事は遷都事業の実現に向け精力的に動いており、5月31日からはフランスを訪れ、ユネスコ・世界遺産センターに対し遷都事業の概要を説明した。6月4日には宮内庁を訪れ、遷都事業の期間中に天皇・皇后両陛下のご来県を陳情。5日には国交省公園課に対し、遷都事業では仮設パビリオンは建設せず、復元する大極殿と朝堂院などの恒久施設を中心に据える、という考えを述べたそうだ。
http://www.sankei.co.jp/chiho/nara/070608/nar070608002.htm

さて上記様々な動きはあるが、肝心の文化庁(ひいてはユネスコ)からは、「平城宮跡を遷都イベントの会場にしても良い」との正式認可は下りていない。私見では、盛り土案が出たり、施設の建設場所を変えるという話は認可に向けた動きとも取れるのだが。

カンヌで現地関係者に遷都事業のバッジや大和茶を配った河瀬直美監督は、「カンヌで奈良を知っている人は1人もいなかった」と語った。
遷都イベントを成功に導くとともに、イベント終了後もお客を呼べる仕組みを作り、観光地・奈良を世界に向けてPRしたいものだ。

※同時進行!平城遷都1300年(7)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/7325e2e9985cf7293f43e5e87c3e90f6
コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

同時進行!平城遷都1300年(7)

2006年09月02日 | 平城遷都1300年祭
前回(7/11)以降の動きを、日付順に紹介する。
7/19「平城遷都1300年事業協会」は、平城宮跡における土質調査の実施を発表した。パビリオンが地下遺構に及ぼす影響を調べるのが目的だ。48か所で、ボーリングとサンプリング調査を実施する(8月末で終了)。結果は文化庁との協議に活用するという。
http://www.1300.jp/release/180719tishitsu1.html

これに呼応するかのように、朝日新聞に、こんな主旨の記事が載った。
市民団体「高速道路から世界遺産・平城京を守る会」は7/20、平城宮跡を記念事業のイベント会場として使用しないことや、宮跡近くにルートが予定されている大和北道路(京奈和自動車道)建設計画の中止について国や県に勧告するよう、ユネスコ世界遺産センターへ文書で求めた(7/21付)。

実際のところ、記念事業の実施は決まっていても、平城宮跡を会場に使うことについては、文化庁もユネスコも(正式には)許可していない。平城宮跡周辺(新大宮駅寄り)に作るという近鉄電車の(仮設)駅についても同様だ。これらの点を不安に思っている県民は私以外にも多いと思うので、早期にこの不安を払拭してほしいものだ。

8/14、協会は、音楽家の城之内ミサさんを初の「平城遷都1300年記念事業広報大使」に委嘱すると発表した。
http://www.1300.jp/release/060814ninmei.html

城之内さんは、県の「大和路シンフォニー」(交響曲ではなく、組曲)を作曲していて、奈良に縁があることから選ばれたのだろう。それにしてもこの曲、県内でも一向に普及する気配のないのが、気になるところだ。
http://actbasec.hp.infoseek.co.jp/page007.html

8/30、協会は遷都1300年記念事業として「世界宗教者平和会議・日本委員会発足40周年記念事業」を誘致・実施することを明らかにした。

奈良新聞(8/31付・1面トップ)などによると、協会は8/30、京都国際会議場で開かれた「第8回世界宗教者平和会議世界大会」(8/26~29)に参加した宗教者15人(米国、エチオピアなど10か国)を薬師寺・東大寺・平城宮跡に招き、知事などと懇談した。薬師寺・安田管主は同寺を案内し「宗教の共通の思いは世界平和であることを強調した」。

よくよく考えてみれば、記念事業に関連する具体的な行事の開催が公表されたのは、これが初めてだ。4年後に迫った大イベントの中身がこれだけで、土質調査も始めたばかりとは、心許ない話だ。

協会が、新たなPR用ビデオを制作したり、「平城京フォーラム」を各地(奈良、橿原、大阪、東京)で開いたりと、広報活動に力を入れていることは評価しているが、今後は文化庁やユネスコの許可も含め、もっと具体的な計画の進捗を望みたい。

(参考記事)「同時進行!平城遷都1300年(6)」(プログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/d/20060711

※写真は薬師寺金堂(奈良市西ノ京町)、7/16撮影。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

同時進行!平城遷都1300年(6)

2006年07月11日 | 平城遷都1300年祭
まずは、前回以降の「平城遷都1300年記念事業協会」の活動をまとめておこう。06年5月31日、協会は記念事業のシンボルマークをPRするため、ピンバッジを制作、販売を開始した。

このマークは仏像の「施無畏印」(せむいいん Welcome Hand)と唐草模様(Arabesque Pattern 国際交流の象徴)をモチーフにしたもので、鮮やかな朱色で個人的には気に入っているものの、勤務先で環境保全を担当している私がつけると「ストップ温暖化」のマークと混同されることもある。
※ピンバッジの報道資料http://www.1300.jp/release/pinbadge.html

6月、協会は記念事業PRのため「事業説明会」を開いた。1日は東京・赤坂プリンスホテル(約400人参加)、8日は奈良市・なら100年会館(約800人)、12日は大阪・中之島のリーガロイヤルホテル(約500人)だった。

また協会は「平城京フォーラムin奈良」というイベント(パネルディスカッションと和歌劇コンサート)を、6月25日(なら100年会館)と7月8日(橿原市の県社会福祉総合センター)に開催した。

さて懸案の「奈良市のホテル誘致構想」について、その後の動きを紹介しておく。

5月11日の定例記者会見で、奈良市の藤原昭市長は「近畿地方の建設・コンサルタント会社など数社から、条件面の問い合わせがあったことを明らかにした」「しかし、今年度内に交渉がまとまる可能性について藤原市長は『分からない』と述べた」(いずれも06.5.12付 毎日新聞)

この席で、県旅館・ホテル生活衛生同業組合奈良支部(以下、市旅館組合)が市に対して観光客誘致の具体策の説明を求めている件に関し「藤原市長は、7月オープンの市東京観光オフィスなどを例に挙げ、『誘客に必要な手は打っている。他に何を示せというのか』と話した」(同)。

この周辺の話を、朝日新聞がうまくまとめて紹介している(06.6.17付 長谷文記者)。

市旅館組合に加盟する旅館・ホテルの数は10年前の78軒から66軒に減っており、市旅館組合側は「客が減って苦しいのに、さらに持って行かれては倒産件数がもっと増える」「市にホテルの誘致を考え直して欲しいというのが本音。ねばり強く話し合いを続けていきたい」と語っている。「一方の市は、今年度中に誘致に応じたホテルと契約したいと強気だ」

これに対し「JTB西日本広報室の担当者は『宿泊施設が少ないことは観光客を誘致できない1つの要因でもあるが、客は宿泊施設のサービスの質を重視するのだから、どちらが正しいとは言えない』と話している」(以上いずれも06.6.17付 朝日新聞)

このJTB広報担当者の話を、私流に読み解くと、こうなる。
・奈良で宿泊する観光客が少ないのは、宿泊施設数が少ないことに加え、既存施設が提供する「サービスの質」が低いからだ
・奈良市などが「サービスの質」の高い宿泊施設を誘致(=サービスの良い施設数を増加)すれば、観光客を誘致できる要因となる

つまり「どちらが正しいとは言えない」どころか、「既存施設のサービスの質を高めよ」「誘客で肝心なのは、サービスの良い施設数を増やすことだ」と、(商売上のパートナーである旅館・ホテルに遠慮しながら)言っているのである。

ところで奈良市ホテル協議会は、05年度の市内8ホテルの宿泊状況を発表した。

「宿泊者数は全体で前年度比1.8%増の396,454人となった」「特に3月は25.6%増と急増したが、同協議会は『JR東海の山手線内での奈良キャンペーンの効果が大きかったのでは』と話している」同協議会は「『代官山iスタジオの取り組みも大事だが、県と市は協力して大がかりな仕掛けを考えてもらいたい』と注文していた」(いずれも06.5.2付 奈良新聞)。

「代官山i(アイ)スタジオ」とは、東京で奈良をPRする拠点として、昨年10月にオープンした奈良県の施設である。前述の奈良市の「東京観光オフィス」もここに入居する。オープン以来、熱心に情報発信活動が行われているが、市ホテル協議会はこれでも不満のようで、県と市に対し、JRのようにカネをかけて派手なPRをしてほしいと「注文」している。

観光客が求めるのは、派手なPR競争ではなく、「サービスの質」を高める切磋琢磨であるはずだ。「もてなしの心」を推進しているのは、どこの県の話だったのか。

※同時進行!平城遷都1300年(5)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/542cc55b49eeb688fb175c71a0133641

※写真は、復元中の大極殿(4/29撮影)。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする