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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ミケランジェロの暗号

2011年10月10日 | 映画(ま行)
ナチスの軍服を着たユダヤ人



             * * * * * * * *

この題名では、どうしてもダビンチ・コードなどのような
歴史ミステリっぽい内容を想像してしまいそうですが、
そういう期待をした方には期待はずれ。
しかし、これがまた期待を裏切る方向に面白い、なかなかの作品です。


第二次大戦下オーストラリア。
ユダヤ人のカウフマンは画商を営んでいます。
しかしいよいよドイツ軍が侵攻。
ユダヤ人の彼らに危険が迫ります。
カウフマンは先に逃亡を図ろうとするのですが、時すでに遅く、
ミケランジェロの素描画を奪われ、カウフマン氏と妻、そして息子のビクトルは収容所へ送られてしまいます。
実はこのことは、彼らの使用人の息子ルディの仕業でした。
ルディはカウフマン家をナチスに売り渡し、自らナチスの一員となってしまった。
ビクトルにとっては、ルディは兄弟同様に育った仲で、
カウフマン家にとしても家族同様、分け隔てなく接してきたつもりだったのですね。
しかし、ルディにとってはカウフマン家はあくまでも雇い主であり、
常にコンプレックスを刺激されてきた、そういう内情があったわけです。
しかし、カウフマン氏はそれさえもお見通しだったように見受けられますが、
それを見抜けていないビクトルは、いかにもお金持ちのお坊ちゃまだ。

カウフマン氏は収容所で死亡。
ビクトルは父が残した謎の伝言を受け取ります。
さて、ミケランジェロの絵を手に入れ喜々としたナチス幹部。
ところがまもなくその絵が贋作であることがわかります。
ホンモノはどこだ!! 
ホンモノのありかを聞き出すために、
ルディがビクトルを収容所から連れ出すことになるのです。



ここから物語は俄然面白くなるのですが、
この二人は途中から服装を入れ替えだだけで、立場が逆転してしまうのです。
「縞模様のパジャマの少年」を思い出してしまいました。
服を取り替えただけでもうわからなくなってしまう、ユダヤ人差別という意味のないもの。
そういう痛烈な皮肉がありますね。
ナチスの軍服を着たユダヤ人。
全く冷や汗ものです。
しかしまたビクトルはルディにこんなことも言います。
「君がこの軍服を脱ぎたがらないわけがよくわかったよ。」
軍服姿はなかなかカッコよくて、しかも少し位の上のものなので、周りには敬われる。
何だか自分が強く偉くなったような気がしてしまうのでしょう。
中身は貧相だとしても・・・。
ミケランジェロの絵のありかについては、単純な暗号なので、
私たちはだいたい想像が付いてしまうのですが、
それよりもビクトルの正体がいつばれてしまうのか、
絵の隠し場所がいつ気づかれてしまうのか、
そして、恋人レナの本当の気持ちは・・・?
など、ちょっぴり可笑しみを交えつつ、ハラハラさせられることが山盛りです。



ということで、この作品はユダヤ人とナチスを描きながらも、
つきものの重苦しさはなく、
ライバルの青年二人の“騙しあい劇”という風合いになっています。
ラストの二人、それぞれの表情がとてもよかったですね。

「ミケランジェロの暗号」
2010年/オーストラリア/106分
監督:ウォルフガング・ムルンバーガー
原作:ポール・ヘンゲ
出演:モーリッツ・ブライブトロイ、ゲオリク・フリードリヒ、ウルズラ・シュトラウス、マルト・ケラー

イル・ポスティーノ

2011年10月09日 | 映画(あ行)
人の心の素朴な暖かさ

イル・ポスティーノ [DVD]
マイケル・ラドフォード,マッシモ・トロイージ
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント


           * * * * * * * *

イル・ポスティーノは、イタリア語で郵便配達人です。
ナポリ沖合の小さな島。
そこへ、チリの共産党員にして偉大な詩人でもあるパブロ・ネルーダが国外追放となり、
妻と共にやってきました。
この島の郵便局へ、世界中から彼宛のファンレターが届きます。
そこで、彼の手紙を届けるためだけに、島のマリオが配達員として採用されたのです。
マリオはやっと字が読めるくらいで、無学で教養もなく、
詩などこれまで読んだこともなかったのですが、
この詩人の詩にふれ、自らの情感を呼び覚まされる気がします。
毎日通ううちに、次第にネルーダと親しくなり、
詩の隠喩について教わったり、恋の悩みを打ち明けたり。
この二人の交流と、マリオの恋の行方を
温かくユーモアに満ちたまなざしで描き出しています。
マリオは非常に貧しく、そして朴訥なのです。
ある女性に一目惚れをしてときめくのだけれど、
どうしていいか全く解らないマリオを、ネルーダは好ましく思い、
応援したくなるのも無理はありません。

しかしやがて、ネルーダの本国で逮捕命令が取り消され、
彼は帰国してしまいます。
マリオや島の人々は、ますます活躍を続けるネルーダに忘れ去られたようで、
ちょっぴり複雑な心境にもなるのですが・・・。


つい笑ってしまうシーンも多いことながら、
背景に思想がからみ、イタリアでは共産党の集会で暴動があったりと、
重苦しい時代ではあるのです。
見事に時代を切り取りながら、人の心の素朴な暖かさに触れるようで、
幸せな気持ちになる作品でした。


このパブロ・ネルーダは、ノーベル文学賞を受賞している実在の詩人です。
一時イタリアに亡命していたのも事実なのでは?と思うのですが、
すみません、そこは確認していません。

また、マリオ役を演じたマッシモ・トロイージは、
イタリアの喜劇俳優だそうですが、
なんと、この作品の撮影終了の12時間後に心臓病で亡くなったのだとか。
何だか、物語にシンクロしているようで、切なくなってしまいます。
もっと、他の作品も見たかったところです・・・。
合掌。


イル・ポスティーノ
1995年/イタリア/107分
監督・脚本:マイケル・ラドフォード
原作:アントニオ・スカルメタ
出演:マッシモ・トロイージ、フィリップ・ノワレ、マリア・グラッツィア・クチノッタ、リンダ・モレッティ

「ポトスライムの舟」 津村記久子

2011年10月08日 | 本(その他)
ただ毎日がむしゃらに生きるのでなくてもいい・・・

ポトスライムの舟 (講談社文庫)
津村 記久子
講談社


            * * * * * * * *

津村記久子さんの芥川賞受賞作です。
ポトスライム。
私、まずは、この題名に心惹かれたのです。
ポトスはよく見かける観葉植物ですが、
ポトスライムは、ライム色(鮮やかな黄緑色とでもいいましょうか?)が瑞々しく、
私の好きな植物の一つ。
これが、コップに水を入れて挿しておくだけで、どんどん増えてしまうという、
大変丈夫でたくましいものなのです。
この物語の主人公ナガセが、職場や家にこのポストライムの水挿しを置いていて、
こまめに水を替えるシーンが出てきます。


さて、だからといってこの物語は、植物愛好家の話ではありません。
ナガセ、独身女子29歳。
現在は工場勤務。
手取り年収163万円。
他に初心者向けパソコン講座の講師や、友人のカフェの手伝いも少々。
実は先に勤めていた職場でうまくいかず退職したとありますが、
詳しくは記されていません。
彼女は職場に貼られた世界一周の船旅のポスターに心惹かれます。
その費用は彼女の年収とちょうど同じ163万円。
一年分の勤務時間を世界一周という行為に換金できる、と気づくのです。
できるだけ生活を切り詰めて163万円を貯めてみようと思いつきますが・・・。
そんな彼女と、友人、職場の同僚、母などの交流を通しながら、
ただ毎日がむしゃらに生きるのでなくてもいい・・・
そういう気づきを得ていくストーリーです。
ポトスライムのようにたくましく、そして瑞々しい感覚を呼び覚ますナガセの生き方に、
思わずエールを送りたくなります。
そしてなおかつ癒しすら感じられるステキな物語でした。


巻末の安藤礼二氏の解説にもありますが、
この作品、主人公の視点で語られながら、
主語は「私」ではなく、「彼女」でもなく、カタカナで「ナガセ」となっています。
自分のことを語りながら、どこか客観的に外から自分を見つめている。
著者独自の手法ですが、その突き放した感覚が、
あまりにもドロドロとした感情の発露から救っているように思います。


この本にはもう一編「十二月の窓辺」が治められています。
こちらの語り手はツガワ。
名前は違うのですが、読んでいるうちに
これは前作「ポトスライムの舟」の前日譚であることが想像できます。
ツガワは職場の上司に毎日のように人格を否定されるような言葉で怒鳴られ、
どんどん気持ちが沈み込み自信をなくしていくのです。
周りの同僚たちも気の毒そうに見るばかりで、職場の中で孤立。
そういう非常に切ない状況を描いた作品です。
けれど、ツガワがこの職場を去り、ナガセのストーリーにつながるのだとしたら・・・。
私は限りなく安堵してしまうのです。
こちらを読むと、何が何でも少しのヒマも惜しむように、
体調の悪さも押して働いていたナガセの心境がよくわかってきます。
自分は無能だから前の職場で怒鳴られていたのではない。
そのように自分で確認したかったのですね。
けれど、いよいよ体調が悪くなって寝込んでしまったときに、ふと周りが見えてくる。
そんなに必死にならなくてもいい。
自然体でいい。


是非2作セットで読むべきストーリーだと思います。

「ポストライムの舟」津村記久子 講談社文庫
満足度★★★★☆

水曜日のエミリア

2011年10月06日 | 映画(さ行)
恋とその他のやっかいなこと



          * * * * * * * *

ニューヨーク、新人弁護士のエミリア。
彼女は既婚者である上司と恋に落ちてしまいます。
彼、ジャックは妻と離婚。
エミリアと結婚し、新家庭がスタートとなるのですが、
問題は前妻との間の子、8歳のウィリアム。
つまりエミリアは継母ということになりますが、ウィリアムは彼女にうちとけず反抗的。
この作品の題名「水曜日のエミリア」というのは、
ウィリアムの学校帰りのお迎え当番に、
水曜日がエミリアと決まっていることから来るんですね。
曜日ごとにお迎えが父ジャックであったり、実の母であったりと振り分けられている。
エミリアは「残念でした。今日は私よ・・・」などと、ウィリアムに言うわけです。
ちなみに原題は”Love and Other Impossible Pursuits”
恋もいいけど、それにはやっかいなこともくっついてくるよ・・・と、
そんなニュアンスでしょうか。
確かに、そのままでは邦題にしにくい。
そこを発想を切り替えて「水曜日のエミリア」としたのは、非常に巧いですね。
昨今、納得できない邦題も多いのですが、こういうのはセンスを感じます。



さて、エミリアが抱えていた問題はそれだけではありません。
実は彼女は妊娠してしまったために、結婚にこぎ着けることができたのです。
ところがその子は、生まれてまもなく突然死してしまう。
その衝撃から、彼女は立ち直れないでいたのです。
また、アメリカ映画ではすっかりお馴染みのパターンですが、
ウィリアムは実の母のところへも頻繁に通うのですね。
それで、エミリアの言動が彼女には筒抜けで、
エミリアの育児に、何かにつけてクレームをつけてくる。

かくのごとく、男女の恋の関係だけなら非常にハッピーなのに、
結婚となるとなんと余計なしがらみの多いこと・・・。
結局エミリアは、この家のもとの家族とはなじめない・・・
自分は平和な家庭に間違って入り込んでしまったライオンだと感じてしまいます。



ところがですね、だからといって全くあきらめてしまうべきものではない。
そこが人と人のつながりの面白いところなんですね。
肌が合わないと感じていた相手とでも、次第に親しみがわいてきたり、
時には助けられたりもするのです。
こうした新たな関係を作り出していくきっかけとなるのが、
愛とか恋であったりもするわけだ。
特に子供は心がしなやかですね。
結局エミリアはウィリアムに救われたような気がします。
よい物語でした。

ウィリアム役のチャーリー・ターハン。
このきれいな子は最近どこかで見た・・・と思ったら、
「君がくれた未来」の弟くんでしたね。
また、何かの作品で是非お会いしたい!!

2009年/アメリカ/102分
監督・脚本:ドン・ルース
出演:ナタリー・ポートマン、スコット・コーエン、チャーリー・ターハン、ローレンス・アンブローズ、リサ・クドロー

007/死ぬのは奴らだ

2011年10月05日 | 007
お楽しみてんこ盛り

            * * * * * * * *

007シリーズ第8作目にして、ロジャー・ムーアのジェームズ・ボンド初登場。
彼の007は意外と違和感がないというか・・・。
そうだなあ、何故かすんなり納得できちゃいました。


冒頭から、英国諜報員が3人、それぞれの地で相次いで殺されてしまいます。
007はCIAの旧友と、そのことについての捜査を開始する。
これは麻薬密輸を狙うミスター・ビッグが関わっているらしい。
潜入の地は、カリブ海のサン・モニク(架空)、アメリカのニューオリンズ。
しかし行く先々、敵の手下がうじゃうじゃいて、ボンドの動向をつかみきっていたりする。
よくもまあ、ご無事で・・・って感じです。


まあ、そうだけれど、スリルとサスペンスてんこ盛り。
そういうところでは非常にサービス精神に富んでいるよね。
えーとね、出てきたのは、毒へびにワニにサメ・・・。
原始的だけど、確かに怖い。
それから、ブードゥー教や、タロットカードでオカルト色を出して盛り上げる。
圧巻は、モーターボートでのチェイスシーンだね。
ちょっとした陸地は飛び越えて通り抜けちゃう。
それが普通に生活している人々の間を、猛スピードで通り抜けちゃうところがおかしいんだよ。
結婚式をしている最中に乗り込んでしまって、ウエディングケーキがめちゃめちゃ。
花嫁が泣き崩れる。
笑っちゃいけないけど、笑っちゃう。
ニューオリンズの保安官のおっちゃんが、すごくよかったよねえ。
徹底して田舎のおっちゃんでね。
愛すべきキャラです。


敵のボスは麻薬市場の支配を狙うカナンガ=ミスター・ビッグ。
彼はまず、ただで麻薬をばらまき、中毒者を多量に作ってから、
やおら麻薬の値段をつり上げて儲けようという、すごい作戦を立てたんだね。
こんなことされたら、どうにもならないな・・・。
カナンガの手下のティー・ヒーというのが、鋼鉄の義手を持つ残忍な男。
ユニークでした。
ボンドの今回の新兵器は、超強力な磁石にもなる腕時計。
小型の丸鋸にもなる。
まあ肝心なところでは役に立ちます。
決して、女性の背中のファスナーを開けるためだけに役立つわけじゃない!
ボンドが、ワニ池を脱出する方法も見所だね。
因幡の白ウサギ戦法か。
全く、絶体絶命のピンチ連続。
命がいくつあっても足りないよ。
というあたりでは、だいぶ近年の映画の手法に近づいてきた感じだね。
ただ、やっぱり女性の描き方が、男性に助けられるお姫様だ・・・。
自ら闘う女性の登場は、まだ後になります。
どうもこの辺りに登場する女性の話し方が、何だか鼻にかかった甘えたような感じがするんで、イヤなんだよね。


さてとそれから特筆するべきなのはこのテーマ曲。
Live and Let Die は、ポール・マッカートニーの曲じゃない!!
映画の中身より、曲の方がよかったかも・・・。

死ぬのは奴らだ (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
ロジャー・ムーア
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


1973年/イギリス/117分
監督:ガイ・ハミルトン
出演:ロジャー・ムーア、ヤフェット・コットー、ジェーン・シーモア、デビッド・ヘディソン

親愛なるきみへ

2011年10月04日 | 映画(さ行)
甘いだけではない、強い愛


             

                * * * * * * * *

ラッセ・ハルストレム監督には珍しいラブストーリーですが、
美しい映像と共に、人と人との心のつながりの強さと不思議さを歌う美しい物語です。


米軍特殊部隊の兵士ジョンは休暇で帰郷中、
女子学生サヴァナと出会います。
たった2週間の休暇中の出会いですが、二人は運命的な恋に陥ります。
あっという間に夢のような日々は過ぎて、
ジョンが仕事に戻るために離ればなれ。
それからは手紙によるやりとりが続きます。
ジョンはこの任期が切れたら除隊して戻ってくると約束していたのです。
ところが、9月11日、同時多発テロ勃発。
アメリカは戦争状態となりました。
除隊を申し出るような雰囲気ではなく、離ればなれの時が長引くばかり。
あるときふっつりとサヴァナからの手紙が途絶え、
ようやく次に来た手紙には別れの言葉が・・・。

では、これは移ろいやすい人の心を描いた作品なのでしょうか。
いいえ、大変なのは戦地のジョンだけではなく、
残ったサヴァナも大変な状況と闘っていたのです。

ほんの2週間の出会いと別れ。
それがこんな風に後の二人の人生と、人生に立ち向かう気持ちを支配する。
人の思いというのは、なんと強く不思議なものなのでしょう。
でも、とても美しいですね。



ジョンはいつも“さよなら”をいうかわりに、
“すぐに会おうね”といいます。
人恋しい気持ちが込められたすてきな言葉。
けれど終盤、本当にこれが最後かと思える別れの時があります。
そのときに、サヴァナは“すぐに会おうね”というのですが、
ジョンから同じ言葉は返ってきません。
二人のこれまでを思うと、切なさ倍増のシーンです。


そしてまた、このストーリーをより深めているのは、ジョンのお父さんの存在です。
何だかとても無口で気むずかしいように思える。
ところがサヴァナは、これはお父さんが『ある種の傾向』にあるのでは・・・?
と指摘するのです。
ジョンは以前、乱暴者として、街の人たちに煙たがられていたようなのですが、
それはこの父親との関係が影響していたのでは?
と思われるフシがあります。
ジョン自身未だに父親を理解しがたいと思っていたのですが、
サヴァナの指摘で、ようやく父を理解できるようになる。
それは確かに普通よりも変わってるということだけなのですが、
その症状の由来を知ることで、ずいぶん本人も周りの人も気が楽になる。
そういうことはありそうです。

お父さんは不良品のコインを集めて、
それはそれは大切にしていました。
ジョンは戦闘中に銃弾を受け負傷するのですが、肩に2つの銃創が残ります。
俺たち二人とも不良品のコインだね・・・。
父親にそっと告げるジョン。

様々なエピソードが、決して無駄なくきちんとかみ合っており、
ただ甘いだけではない強い愛を美しく描いてくれました。

2010年/アメリカ/108分
監督:ラッセ・ハルストレム
原作:ニコラス・スパークス
出演:チャニング・テイタム、アマンダ・セイフライド、ヘンリー・トーマス、スコット・ポーター、リチャード・ジェンキンス

「天才柳沢教授の生活 31」 山下和美

2011年10月02日 | コミックス
華子、病院の先生にびびる

天才 柳沢教授の生活(31) (モーニングKC)
山下 和美
講談社


             * * * * * * * * 

やっとリアルタイムの最新刊です。


まずは、213話「パパさんたるもの」
私は、柳沢教授の長女いつ子さんの長男、まもるくんが出てくる話が好きです。
あまりにも純粋無垢なまもるくんは、
やや障がいがあるのかな?とも思えたのですが、
周りの皆の理解で、状況は少し改善したように思われます。
いつ子さんがすっかり落ち着いた母親ぶりを見せるので、
まもる君のパパの方が焦ってきます。
いつもひどく忙しくて、ろくに遊んでもあげられない。
ある休日、息子とキャッチボールをしようと川原へ出かけますが、
そんなところへもひっきりなしに電話がかかってきます。
そんな時、まもるくんは・・・・。
いつもふんわりおっとりのまもるくんがみせた、
一時の強い感情と実行力には目を見張りますね。
子供はこんな風に成長していくからすばらしい。
・・・などとオバサンは感慨にふけってしまうのでした。
それにしても、この方がケータイなくしたらホントに困るだろうと思いますが・・・。
いやいや、三雄パパもさすがです。
さて今さらですが、教授は孫と川原で遊ぶのもスーツ姿なんですねえ・・・。
チョイわる親父風に着こなしてみて欲しい気がします。
教授はクールビズをどう乗り切るのでしょう・・・??


第215話「こわい先生」
この表紙の絵になっている作品です。
こわい先生というのは、タマが行く動物病院の獣医師。
今までは別の病院にかかっていたのですが、
柳沢教授がどこかから評判を聞いたのでしょうか、
華子と共に新しい病院にタマを連れてきました。
けれど診察室から、先生の大きな怒鳴り声が聞こえてくるので、
華子はこわくてびびってしまいます。

「フェレットはまだ日本ではペットとしての歴史が浅いのに
安易に売ったり買ったりするから、
・・・だから日本のペット業界は!!」
「これだからダックスフントは!! 
また股関節脱臼だよ!!何が品種改良だ!!」


先生は華子に怒っているのではありません。
「いろんな悪いこと、全部に怒ってた・・・」そう気づく華子ちゃんは、
やっぱり賢い子ですねえ。
今時のペット業界や、動物病院のあり方にちくりと釘さす作品であります。


町内の自治会長となり、ゴミ問題に取り組む柳沢教授の話、
216話「あたらしそうな公共」も面白いのですが、
私は最後の218話「ピンぼけの思い出」が好きです。

それはまだ教授の二人目の子供が生まれて間もない頃。
長女いつ子がちょうど華子ちゃんくらいでしょうか。
お母さんは、教授が撮った写真の中に、
一人の女性が写っているのを発見します。
ややピンぼけですが、髪の長い人のアップの写真。
家事と育児に精一杯のお母さんは、
ふと自分の疲れ果てた姿を鏡の中に見て愕然とします。

こんなボロボロじゃ・・・
お父さんだって嫌気がさすわよ・・・
私なんか・・・


そしてお母さんは、子連れで大学に潜入します。
その写真に写った人物を探そうと・・・。
髪の長い美人の正体も傑作ですが、
大学をスパイするお母さんもステキ。
教授とお母さんの若い頃の一コマ。
時を自在に行き来するのも、このシリーズの魅力です。


「天才柳沢教授の生活 31」山下和美 講談社モーニングKC
満足度★★★★☆

「天才柳沢教授の生活 30」 山下和美

2011年10月01日 | コミックス
食事を共にする人がいる幸せ

天才 柳沢教授の生活(30) (モーニングKC)
山下 和美
講談社


             * * * * * * * *

この巻はお気に入り作品が満載でした。


まずは冒頭207話「進化する表情」
教授たちが、自分の娘を嫁がせる時の複雑な心境について話をしています。
悲しいとか、悔しいとか、寂しいとか・・・。
しかし、柳沢教授はきっぱりと
「そんな気持ちは、私にはさっぱりわかりません。」
結婚した3人の娘とも、今まで通り会って話しているから何のかわりもない
というのです。
それを聞いていたヒロミツくんが、おそるおそる
「世津子さんでもそうなんですか?」と聞くと
「そうですよ。たとえ恩田ヒロミツくんが世津子と結婚したとしても
本人同士の自由ですから私は反対しません」
何かが違うと思ってしまうヒロミツくん。

そんな教授が、孫の華子ちゃんが
「どんぐり組の春男君からプロポーズされた」と聞いたとき、
ほんの一瞬見せた動揺。
父は、娘の結婚に動揺なんかしないと割り切っていた世津子なのですが、
この父の表情に考えさせられてしまった。
なんで私なら平気で、華子なら動揺するのだろう・・・。
けれど、その秘密は、さすがのお母さんならわかっています。
教授本人も解っていないのに、
やはり揺れ動いてしまう感情というものがあるんですねえ・・・。
何事にも動じない教授が、ドギマギしてしまうシーンというのが、
実は楽しかったりします。


211話「みんなの番長」
「朝焼け番長 男!!金太郎」
いきなりそういうコミックのページから始まります。
思わず何かの乱丁かと思ってしまいます。
そうしたら、ページの隅の方に小さな字で
「ご覧の作品は"天才柳沢教授の生活"です」
と、注釈が入っていたりする。
つまりこれは華子が読んでいた漫画だったのです。
パパが中学の頃愛読していた漫画なのですが、
すっかりハマって"番長"にあこがれてしまった華子。
どこかに番長はいないのかな・・・
番長を捜し求める華子。
そんなときこんな話を聞きます。
「毎朝同じ時間に起きて、一日中無駄口をたたかず、
夜は家族にたらふく飯を食わせて寝る。
そういう生活を20年一日も休まず続ける。
それが本当のタフガイだ。」

そうです、華子の探していた番長はすぐそこに・・・。
そうですね、
強くてかっこよくて・・・、
私たちはついそういうヒーローを求めるけれども、
本当にカッコいいのは、地道に家族のために働く人々。
偉くなくたって、有名じゃなくたって。
こういう振り返りは時には大切だなあ・・・と感じ入った次第。


212話「ずっとあなたが」
これは、具合が悪くて寝込んでしまったお母さんが見た夢のお話です。
お母さんは大きなお屋敷の令嬢で、教授がなんと執事!
しかし、教授が執事という配役は、ぴったりな感じはしますねえ。
慇懃無礼という感じが・・・。
令嬢は密かにこの執事を好きで、
せめて一緒に食事をとりたいと思っているのですが、
杓子定規な執事はけっしてそうしようとしない。
年月は過ぎ、次第に年をとりしなびていく「お嬢様」は
結婚もせず、お屋敷に住み続けているのですが、
思いは叶わず、いつもたった一人の食事。
何とも切ないのです。

夢から覚めたお母さんは、台所で食事の支度をしている教授に
「一緒に食べましょう」
と言うのですが、その答えは・・・?
こういうのを見ると、結婚も悪くないと思いますね。
食事を共にする人がいる。
本当にささやかだけれど、幸せってそんなものかもしれません。

「天才柳沢教授の生活 30」山下和美 講談社モーニングKC
満足度★★★★★