海老蔵さんの一人勝ち

* * * * * * * *
時は江戸時代初頭。
大名のお家取りつぶしが相次ぎ、
そこに仕えていた武士達が行き所なく浪人となって困窮、と、そんな時代です。
そんな浪人が、裕福な大名屋敷に押しかけ、切腹のために庭先を借りたいと申し出る。
面倒を避けたい屋敷では、幾ばくかの金を包んで、その浪人を追い払う。
そんなおかしな流行のようなものがあった、というのが背景です。
つまりは、死ぬ気もないのにそのふりをして、
まんまと金をせしめようという、苦肉の策なのですね。
さてある日、名門井伊家を訪れた一人の眼光鋭い浪人が、例によって切腹を申し出ます。
しかし、井伊家では「またか」と思うのです。
実は以前にも同じことがあった。
家老はその時のことを浪人に語り始めるのですが・・・。

この浪人、市川海老蔵さんが、画面に登場するなりすごいオーラを放っておりまして、
その迫力にすっかり魅入られてしまいました。
いや、さすが・・・これが海老蔵さんなのか、と思いましたね。
考えてみたら私は海老蔵さんをTVのワイドショーでしか知らなかったかも。
(そういう方は多いのではないかな?)
なにしろ、落ちぶれた浪人なのに、かさ張りをしていてもカッコいいんだもの・・・。
ちょっとかっこよすぎではあります。
もう少し背中を丸めて、うらぶれた雰囲気があった方がいいのでは?と思えるくらいに。
でも、「武士は食わねど高楊枝」などと言う言葉もあるくらいですから、
どんなに落ちぶれても武士のプライドは持ち続けるという、信念の表れなのかもしれませんね。
自分は食べなくても子供達には食べさせるというような。
一番ぎょっとしたのは、彼がいよいよ切腹というときに、
介錯をここの誰それに頼みたい、と申し出たこと。
何故かその名を上げた3名が、無断で出仕しておらず、行方も解らなくなっている。
こ、これはなにかある。
この3人がいないことを知っているこの男は何者?!?
これまでこの浪人を見下していた屋敷の侍達が、やおら緊張を高める。
そして見ていた私たちも、同じく。
もしやこの男がその3人を殺してしまったのだろうか・・・と、想像してしまします。
実はそうではなかったのですが。
ともあれ、ここの演出は、最高でした。

しかし、自らに落ち度はないのに、
食うや食わずの生活を強いられてしまった武士というのも哀れです。
なにやら、大手企業に長年勤めながらいきなりリストラにあった、みたいな感じですね。
竹光で切腹・・・そこまで窮地に陥りながらも、
武士のプライドを守り抜いた千々岩。
それに対して、武士の情けは何処へ・・・と憤る津雲。
武士道が形骸化していると言いますが、ここの設定は関ヶ原の戦いから30年足らず。
では幕末の頃はどうなっていたものやら・・・。
武士道は、日本の“魂”とも思えるくらいに、凛として美しいですが
形だけで、中身がなくなってしまうのも早い!
これはやはり、動乱の戦国の世で保てるもので、
平和の中では本当は必要のない物なのでしょうね。
一命
2011年/日本/126分
監督:三池崇史
原作:滝口康彦
出演:市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、竹中直人、役所広司

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時は江戸時代初頭。
大名のお家取りつぶしが相次ぎ、
そこに仕えていた武士達が行き所なく浪人となって困窮、と、そんな時代です。
そんな浪人が、裕福な大名屋敷に押しかけ、切腹のために庭先を借りたいと申し出る。
面倒を避けたい屋敷では、幾ばくかの金を包んで、その浪人を追い払う。
そんなおかしな流行のようなものがあった、というのが背景です。
つまりは、死ぬ気もないのにそのふりをして、
まんまと金をせしめようという、苦肉の策なのですね。
さてある日、名門井伊家を訪れた一人の眼光鋭い浪人が、例によって切腹を申し出ます。
しかし、井伊家では「またか」と思うのです。
実は以前にも同じことがあった。
家老はその時のことを浪人に語り始めるのですが・・・。

この浪人、市川海老蔵さんが、画面に登場するなりすごいオーラを放っておりまして、
その迫力にすっかり魅入られてしまいました。
いや、さすが・・・これが海老蔵さんなのか、と思いましたね。
考えてみたら私は海老蔵さんをTVのワイドショーでしか知らなかったかも。
(そういう方は多いのではないかな?)
なにしろ、落ちぶれた浪人なのに、かさ張りをしていてもカッコいいんだもの・・・。
ちょっとかっこよすぎではあります。
もう少し背中を丸めて、うらぶれた雰囲気があった方がいいのでは?と思えるくらいに。
でも、「武士は食わねど高楊枝」などと言う言葉もあるくらいですから、
どんなに落ちぶれても武士のプライドは持ち続けるという、信念の表れなのかもしれませんね。
自分は食べなくても子供達には食べさせるというような。
一番ぎょっとしたのは、彼がいよいよ切腹というときに、
介錯をここの誰それに頼みたい、と申し出たこと。
何故かその名を上げた3名が、無断で出仕しておらず、行方も解らなくなっている。
こ、これはなにかある。
この3人がいないことを知っているこの男は何者?!?
これまでこの浪人を見下していた屋敷の侍達が、やおら緊張を高める。
そして見ていた私たちも、同じく。
もしやこの男がその3人を殺してしまったのだろうか・・・と、想像してしまします。
実はそうではなかったのですが。
ともあれ、ここの演出は、最高でした。

しかし、自らに落ち度はないのに、
食うや食わずの生活を強いられてしまった武士というのも哀れです。
なにやら、大手企業に長年勤めながらいきなりリストラにあった、みたいな感じですね。
竹光で切腹・・・そこまで窮地に陥りながらも、
武士のプライドを守り抜いた千々岩。
それに対して、武士の情けは何処へ・・・と憤る津雲。
武士道が形骸化していると言いますが、ここの設定は関ヶ原の戦いから30年足らず。
では幕末の頃はどうなっていたものやら・・・。
武士道は、日本の“魂”とも思えるくらいに、凛として美しいですが
形だけで、中身がなくなってしまうのも早い!
これはやはり、動乱の戦国の世で保てるもので、
平和の中では本当は必要のない物なのでしょうね。
一命
2011年/日本/126分
監督:三池崇史
原作:滝口康彦
出演:市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、竹中直人、役所広司