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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

チャプター27

2011年10月29日 | 映画(た行)
自分一人の思いにがんじがらめ



             * * * * * * * *

ジャレット・レトつながりで見た作品ですが、正にジャレッド・レト主演、出ずっぱり。
しかし、その姿には驚かされます。
1980年12月8日、ニューヨーク。
ジョン・レノンが凶弾に倒れた日です。
この作品はその犯人マーク・デイビッド・チャップマンが
犯行に至るまでの三日間の心境を綴ったもの。
ジャレッド・レトがそのチャップマン役なのですが、
なんとこの役のために30㎏体重を増やしたというのですから、凄まじい。
これが、ジャレッド・レト・・・!? 
思わず絶句です。
しかし、次第にジャレッド・レトを見ているという意識が薄れて、
私たちはチャップマンその人の心の闇に引き込まれてしまいます。


チャップマンは、ジョン・レノンの熱狂的なファンであり、
そしてJ・D・サリンジャー著「ライ麦畑でつかまえて」を愛読していました。
彼は「ライ麦~」の主人公ホールディンに自らを重ね合わせます。
世間に対しての鬱屈した感情。
クリスマスに近いニューヨークで過ごす3日間。
この作品の題名は、
「ライ麦~」が全26章までとなっていることに関連してつけられたわけです。
チャップマンはジョン・レノンが住むダコタ・ハウスに3日間通い続け、
彼に直に対面する機会を待ちます。
銃を持ち、ジョン・レノンを殺害する決心を固めながら。
しかし、絶えず彼の気持ちは揺れ動きます。
そう決めたのだから、やらなければ。
いや、今引き返すんだ・・・。

しかし、3日目についにジョン・レノンと対面がかない、
LPジャケットにサインまでもらいながらも、彼の決意は変わりませんでした。


これまで私は、この事件の犯人像を単に「狂人」ととらえていたと思うのです。
まあ、確かに尋常ではないのですが、
その思考は、常人の域をほんの少し外れているだけのように思えるのですね。
現にそのときまで、ダコタ・ハウス前で出会った人たちとは
きちんと会話を交わし、意見を述べていました。
ただ少し、変わった人とは思われたようですが。
正常と異常の紙一重の差。
犯行の実行と空想の紙一重の差。
自分一人の思いにがんじがらめで脱出不能に陥っているようにも思います。
しかし、なんとリアルな人間像でしょう。
この作品ではまさに、ジャレッド・レトではなく、チャップマンを見たのだと思いました。


今作は、監獄にいるチャップマンが事件の当時を回想して語る
という形式になっているわけですが、これは「ライ麦~」の構成と同じ。
並々ならない、作り手の意図と熱意が伝わります。

チャプター27 [DVD]
ジャレッド・レト,リンジー・ローハン,ジェダ・フリードランダー
角川エンタテインメント


「チャプター27」
2007年/カナダ/85分
監督・脚本:J・P・シェファー
制作総指揮:ジャレッド・レト
出演:ジャレッド・レト、リンジー・ローハン、ジュダ・フリードランダー