植え付けられた「良識」がぶっ飛ぶ
* * * * * * * *
話し手・吉本隆明氏、聞き手・糸井重里氏、として行われたインタビューをまとめたものです。ちょっとありきたりではない展開がありそうで、興味を持って手に取りました。
まえがきで糸井氏がこんなことを言っています。
正しそうに見えることば、
りこうそうに見える考え方、
ほめられそうなことば、
自分の価値を高めてくれそうな考え方
・・・・そういうものばかりが目立ってしかたがない。
吉本隆明さんのことばが、ザラザラしていたり意表をつくような逆説に見えても、
聞いていて気持ちがいいのは、ごまかしたりウソをついていないからなのだと思う。
私自身も、ブログ記事を、わかりきったようなことや、
ありきたりの道徳的なことばでまとめてしまうことがあったりするので、
冒頭でそれを指摘されて、いきなりガツンとやられた気分でした。
有識者とされる人が絶対に言わないようなことも、何のためらいもなく口にできる。
それはやはり、自分自身の思考の基準を持った強い人なのだろうと思います。
「清貧の思想」とか、そういうのはダメ。
遊んで暮らせて、やりたいことができてっていうのがいちばんいい。
泥棒して食ったっていいんだぜ
「純粋ごっこ」の時期を除けば、この世は全部ひとりひとり
専門家の言う「正常」の範囲は、もう現実には通用しない
会社で上司よりも大切なのは建物
欧米から学ぶものはもう何もない
真剣に考える自分の隣の人が、テレビのお笑いに夢中になっていたり遊んでいたりすることが許せなくなるのは間違っている。
自衛戦争以外のことをしない憲法をもつ日本にとっての積極的な国防とは、
核保有国に核兵器を減らす提案をすること。
円満な家庭なんて、そんなものはない
ざっとはじめの方をめくってみただけでもこのような名言の数々。
けっして、奇をてらって言っているのではない。
様々な知識を下敷きとして得た自身の実感の言葉なので、いっそ気持ちがいいのです。
いかに自分自身が植え付けられた良識の中に捕らえられているのか、
思い知らされる気がします。
最後には、吉本氏が入院中に考えた様々なことが述べられています。
その中では、「病院は完璧な管理社会」といっている。
看護婦さんは自分のやることは親切いっぱいだけれど、
こちらが聞いたことに対しては情報を遮断。
病院の中のことは管理に便利なことばかりで、
患者側に便利なもの、心地よいものは何もない。
よほど、いやな目にあったと見えて(?)なかなか辛辣ですが、実際その通りですよね。
しかし、さすが吉本氏の思考はそれだけでは終わらない。
なぜ管理社会はつまらないのか
人の気持ちを内側からわかるためにはその人と同じことをするしかない。
時には、私などには理解の及ばない話もあるのですが、
ナビゲーター糸井氏の解説と感想により、要点がまとめられ、
私たちの興味をそらさないような工夫も凝らされています。
最終の入院のくだり以外は2001年にまとめられたものなので、
若干話題の古い部分もありますが、今なお通用する"真理"に満ちています。
手応えのある一冊です。
「悪人正機」吉本隆明×糸井重里 新潮文庫
満足度★★★★☆
![]() | 悪人正機 (新潮文庫) |
吉本 隆明,糸井 重里 | |
新潮社 |
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話し手・吉本隆明氏、聞き手・糸井重里氏、として行われたインタビューをまとめたものです。ちょっとありきたりではない展開がありそうで、興味を持って手に取りました。
まえがきで糸井氏がこんなことを言っています。
正しそうに見えることば、
りこうそうに見える考え方、
ほめられそうなことば、
自分の価値を高めてくれそうな考え方
・・・・そういうものばかりが目立ってしかたがない。
吉本隆明さんのことばが、ザラザラしていたり意表をつくような逆説に見えても、
聞いていて気持ちがいいのは、ごまかしたりウソをついていないからなのだと思う。
私自身も、ブログ記事を、わかりきったようなことや、
ありきたりの道徳的なことばでまとめてしまうことがあったりするので、
冒頭でそれを指摘されて、いきなりガツンとやられた気分でした。
有識者とされる人が絶対に言わないようなことも、何のためらいもなく口にできる。
それはやはり、自分自身の思考の基準を持った強い人なのだろうと思います。
「清貧の思想」とか、そういうのはダメ。
遊んで暮らせて、やりたいことができてっていうのがいちばんいい。
泥棒して食ったっていいんだぜ
「純粋ごっこ」の時期を除けば、この世は全部ひとりひとり
専門家の言う「正常」の範囲は、もう現実には通用しない
会社で上司よりも大切なのは建物
欧米から学ぶものはもう何もない
真剣に考える自分の隣の人が、テレビのお笑いに夢中になっていたり遊んでいたりすることが許せなくなるのは間違っている。
自衛戦争以外のことをしない憲法をもつ日本にとっての積極的な国防とは、
核保有国に核兵器を減らす提案をすること。
円満な家庭なんて、そんなものはない
ざっとはじめの方をめくってみただけでもこのような名言の数々。
けっして、奇をてらって言っているのではない。
様々な知識を下敷きとして得た自身の実感の言葉なので、いっそ気持ちがいいのです。
いかに自分自身が植え付けられた良識の中に捕らえられているのか、
思い知らされる気がします。
最後には、吉本氏が入院中に考えた様々なことが述べられています。
その中では、「病院は完璧な管理社会」といっている。
看護婦さんは自分のやることは親切いっぱいだけれど、
こちらが聞いたことに対しては情報を遮断。
病院の中のことは管理に便利なことばかりで、
患者側に便利なもの、心地よいものは何もない。
よほど、いやな目にあったと見えて(?)なかなか辛辣ですが、実際その通りですよね。
しかし、さすが吉本氏の思考はそれだけでは終わらない。
なぜ管理社会はつまらないのか
人の気持ちを内側からわかるためにはその人と同じことをするしかない。
時には、私などには理解の及ばない話もあるのですが、
ナビゲーター糸井氏の解説と感想により、要点がまとめられ、
私たちの興味をそらさないような工夫も凝らされています。
最終の入院のくだり以外は2001年にまとめられたものなので、
若干話題の古い部分もありますが、今なお通用する"真理"に満ちています。
手応えのある一冊です。
「悪人正機」吉本隆明×糸井重里 新潮文庫
満足度★★★★☆