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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ペイルライダー

2010年03月12日 | クリント・イーストウッド
蒼ざめた馬に乗ってきた男

             * * * * * * * *

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久しぶりに西部劇ですね。
うん、やっぱりにあいますねー。騎乗のイーストウッド。かっこいい。
この作品の舞台はゴールドラッシュに涌くカリフォルニア。
地方を牛耳るボスと、彼らに追い出されようとしつつある開拓民。
その弱者に味方するヒーローがイーストウッドの役どころです。
これって、あの「荒野の用心棒」に似てるんですね。
いやいやそれより、世間では「シェーン」との類似を言う人が多いようですよ。
ああ、そういえばラスト、少女が去りゆく彼を呼ぶシーンね。
思わず「シェーン!」と叫ぶかと思っちゃった。


でも、この作品の特異性は、イーストウッド演じるこの男にあるんだと思う。
そうそう、結局最後まで名前が出てこないのね。
牧師のスタイルをしているので、皆は彼を牧師(プリーチャー)と呼ぶ。
牧師にしては、なんと背中にいくつもの銃弾の痕があって、めっぽう強い。
何かちょっと陰りがあって雰囲気が危険な感じ・・・?
そうです。何しろペイルライダーだから。
えー、そもそも、そのペイルライダーってなんなの?
よくぞ聞いてくれました。
これは彼が乗っている馬に関係するんだね。
「蒼ざめた馬」ってのを知ってる?
二日酔いの馬・・・ってわけじゃないよね。
聞いたことはある気がするけど。
これは、ヨハネの黙示録にある言葉。
「見よ、蒼ざめたる馬あり。これに乗る物の名を死といい、黄泉これに随う。」
・・・つまり、死を象徴する馬。
このプリーチャーが乗っていた馬は、まあ、グレイの細かなぶち模様だったけれど。
これ、いわゆる連銭葦毛っていうやつなんじゃない?
あー、平家物語で出てくるヤツ。
・・・そうなのかな? とにかく美しい馬です・・・。
この映画では、ちょうどサラとミーガン母娘がこの黙示録の下りを読んでいるところへ
この馬に乗った男がやってくる。
蒼ざめた馬に乗った男・・・。
なんて不吉な。きっと彼には死がまとわりついている・・・。
それが彼女たちの第一印象だったのだけれど、やがてそれは事実になっていく
・・・という訳なのね。
そうそう、ここの下りが非常にステキなのだわ・・・。
この地域のボスが雇ったストックバーンという男。
これがプリーチャーの傷を作った宿敵であるらしいのですね?
そうそう。でも、このあたりの詳しい事情も、特に説明がありません。
おそらくプリーチャーは、過去にコイツのために傷を負い、生死の境をさまよった。
もしかすると、悪いことをした仲間同士だったのかも・・・。
ただ、そこで彼は荒くれ稼業がすっかりいやになり、
牧師となって銃を封印していたのだろうね。
そういう事情は一切説明なしで、見る者の想像に任せるあたりがちょっとしゃれています。


それから、金鉱を掘る様子も、あんなのは初めて見たなあ・・・。
うん、イーストウッドが味方についたところの人たちは、
よく私たちが映画などで見るように、川で砂をさらうんだよね。地道に。
けれど、ここの実力者は、ダイナマイトを使い、
水圧式のノズルで水を噴射して山を削る。
この強引な方法が、彼がココまでのしあがった所以なんだね。
こんなことをやったからたちまち鉱脈が枯れてしまった訳ね。
自然破壊・・・なわけですよ。
まあ、それを言ったら、今なんかどこもかしこもそれ以上の自然破壊が平気でおこなわれているんだけどね。
まあ、それはおいておくとして、このあたりにちくっとイーストウッドの反骨精神がのぞいているわけです。
大資本の金持ち対社会の底辺。自然破壊と自然との融和。

ということで、ストーリー自体はそう、珍しいわけではないのですが、
いろいろ考えると面白い部分がたくさんある。そういう作品でしたね。


1985年/アメリカ/116分
制作・監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、キャリー・スノッドグレス、マイケル・モリアーティ、リチャード・キール


恋するベーカリー 

2010年03月11日 | 映画(か行)
込み入った事情・・・いや、情事



* * * * * * * *

この作品、先にやはりメリル・ストリープの「ジュリー&ジュリア」を見た雰囲気で、
これも、パン作りに励みつつロマンスもある、
ハートウォーミングストーリーかと思ったのですが・・・。
しかし、それにしてはR15+。
なぜ???
この「恋するベーカリー」の題名がくせものです。


3人の子供を育て上げたシングルマザーのジェーン(メリル・ストリープ)。
有名ベーカリーの経営者です。
ようやく離婚の痛手も癒えて、商売も軌道に乗り、
長女の結婚が決まり、次女も長男も自立している。
そんなところへ、再婚して妻子もある前夫ジェイクが登場。
彼がやたらとジェーンに接近し、悪い気はしないジェーンとついにはベッドイン。
これまで感じたことが無いほどに燃えてしまう二人。
元夫婦とはいえ、これは立派に不倫なのです。
この辺のやたら明るく開けっぴろげなセックスシーンが、R15の所以なのですが。




さてつまりはこの二人が縁を戻すのかどうか・・・、そこが問題となるわけです。
どちらも実はまだお互いをあきらめ切れていなかった・・・というのですが。

近頃、こういう中高年の恋愛ものは多いですね。
ほとんど私くらいの年齢層のラブストーリー。
こういうの、若い方が見て楽しいでしょうか?
私はどうも、これにロマンスは感じません。
長く連れ添って仲むつまじい夫婦ならステキだなあ・・・と思えるのですが、
不倫だなんて、この年して何を今更・・・、
って感じの方が強いですけどねえ・・・。

もちろんこの年でも、愛とか恋とか、瑞々しい感情にあこがれはしますよ。
いくつになっても女はロマンスにあこがれはする。
だからこそ性懲りもなくラブロマンスを見る。
でも、なんだかちょっとこの作品はナマナマしすぎるかなあ・・・。
いくらメリル・ストリープとはいえ、この年代の激しいベッドシーンってどうなのか・・・。

まあ、結局このストーリーのジェーンの決断は当たり前。
始めから見えていると思いました。
あの夫なら、また同じ過ちを繰り返すのは目に見えていますよ。
少なくても私は嫌いなタイプ。
自分の気持ちだけが先走っている。

うーん、どうもこの作品に対しては辛口になってしまうのですが・・・
よく考えてみると、私、同じ日にこれと「しあわせの隠れ場所」を連続して見たのでした。
そうすると、あの感動作とこの下ネタロマンスと・・・
比べる種類のモノではないですが
母として、人間として、本当に大事なモノは何か・・・と
比べてしまいますねえ・・・。
あまりにも違いますねえ・・・。

また、どうもこの辺の主題と邦題がミスマッチなのです。
原題は”It’s Complicated” 込み入った事情・・・とでもいうのでしょうか。
まあ、こちらの方がきっちり状況を捉えていますね。

この映画中、最もステキだったのは長女のフィアンセ。
すべての事情を知りながら、せっせとかばい、繕おうとする、
なんて心が広く気遣いの出来る人なんでしょう!! 
こういう人と結婚できれば、絶対幸せだと思います。

2009年/アメリカ/120分
監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ
出演:メリル・ストリープ、アレック・ボールドウィン、スティーブ・マーティン、ジョン・クラシンスキー、リタ・ウィルソン



フライド・グリーン・トマト

2010年03月10日 | 映画(は行)
固定観念に縛られないで・・・自分なりに生きよう

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中年主婦エブリンが老人ホームを訪ねると、一人の老婦人が話しかけてきます。
退屈な老人の繰り言・・・と思って聞いているうちに、
その老婦人の昔語りに次第に引き込まれてゆく。


南部の片田舎の出来事です。
男勝りのイジーとその親友ルースの特異で前向きな生き様。
精一杯生きた証の物語なんですね。


エブリンは、子供が独立して夫と二人暮らし。
夫は帰るなりテレビの前に釘付けでビールを飲んでいる。
自分の生き甲斐は何なのだろう・・・・。
所在なくついチョコバーを食べ続けて太ってしまっている自分に見切りをつけたくて、
いろいろなセミナーなどにも通っているのですが。
老婦人が語る強い女性や友情のこと、人との信頼のこと。
ニュースにも本にもならないほんの田舎の片隅の出来事だけれど、
いつでも、人々は一生懸命生きているんだなあ・・・。
エブリンも勇気をわけてもらった気がしてくるのです。

映画の始めと終わりのエブリンの服装や化粧の変化で、それは十分に伝わります。
それから、この老婦人が実は誰なのか。
たぶん私たちはラストを見るまでもなく気がつくのですが、この含みもいいですね。
つまり、イジーがその後どういう人生を歩んだのかも、それとなくわかるのです。
もちろん、イジーが本当に殺人を犯したのかどうか。
それも、最後まで秘密。

現代に生きる主婦エブリンの日常と、
約50年前の南部の伝統の中で新しい生き方を生きようとする2人の女性を
交互に描いていきます。


この作品には、
かつて幸せだったはずの結婚の末、倦怠に包まれている主婦。
幸せなはずの結婚が、暴力をふるう夫により地獄と化した女性。
そして、ハナから結婚には夢を持てない女性。
様々な形の「結婚」が描かれています。
結局、結婚=幸福という図式は幻想でしかない。
結婚という道を選択しようがしまいが、
幸福であるかどうかは全然別のことだと思うわけです。
結局、自分自身でどう判断してどう進むのか。
または、これではだめだと思ったときに、きちんと修正できるかどうか。
そういうことなんだろうなあ・・・。
だから、自分の道をきちんと歩んでるイジーがとても魅力的。
女性たちの様々な生き方に心打たれる感動作です。


さて、この題名のフライド・グリーン・トマト。
そのままずばり、イジーとルースが営んでいた駅前カフェの目玉料理、
青いトマトのフライですよね。
どうもおいしそうな感じがしないのですが・・・。
どうなんでしょうねえ・・・???

1991年/アメリカ/130分
監督:ジョン・アブネット

出演:キャシー・ベイツ、ジェシカ・ダンディ、メアリー・スチュアート・マスターソン、
シシリー・タイソン、メアリー・ルイーズ・パーカー

「サクリファイス」 近藤史恵

2010年03月09日 | 本(その他)

サクリファイス (新潮文庫)
近藤 史恵
新潮社

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トップにならなくても勝利できる

             * * * * * * * *

この本を手に取ったのは、自転車ロードレースがテーマであったためです。
・・・自慢じゃありませんが、自転車ロードレースのことなど何も知らなかった私なのですが、
以前に読んだ「Story Seller」の中の短編「プロトンの中の孤独」という作品にいたく感動し、
興味を持っていました。
同じ著者によるこの作品、
実はこちらの「サクリファイス」が先で、
「プロトン・・・」の方はこの外伝とも言うべき作品だったわけです。
こちらに登場するある人物の若い頃の物語。


さて、この本ではプロのロードレースチーム、
チーム・オッジの白石誓(ちから)が語り手となっています。
彼は以前陸上選手だったのですが、
ただ自分のためにゴールを目指すことに違和感をもち、転身しました。

自転車ロードレースは団体戦。
チームにはエースと、
エースのために尽くすアシストという役割分担がはっきりとしているのです。
アシストはエースの前を走ってエースの体力温存を図ったり、
団体の前に飛び出して他チームのペースを崩したり。
結果、自分が最下位となっても、チームのために尽くせばそれでよいという立場。
自分がトップにならなくても、チームのために役立つこと、
そういう役割を良しとする白石の生き方には、なんだか共感が持てるのですね。
また、こういうところが、この競技の魅力でもあるわけです。

それでこの作者なので、基本はミステリなんです。
白石が尊敬する先輩石尾。
一見温厚そうな彼が、影ではライバルをつぶしていく恐ろしい男と噂されています。
かつて、彼のせいで事故に遭い半身不随となった者がいるとか。
その石尾が、あるレース中に悲惨な事故で命を亡くします。
この事故の真相は?
そして、彼は本当にそのような冷酷な男だったのか・・・。


ちなみに「サクリファイス」とは「犠牲」の意味なんですが、
アシストはある意味、そういう立場にあるわけです。
けれども、このストーリーを読めば、
私たちはもっと大きな「サクリファイス」の意味を知ることになるでしょう。
ロードレースの過酷さやスピード感、
そしてレーサーたちの熱い思いが伝わるすばらしい作品です。


さて、最近「Story Seller2」が出ていまして、
こちらにもこの自転車ロードレースストーリーが載っています。
早速読まなければ。
それと、単行本で「エデン」というこの本の続編が3月刊行だそうで。
うーん。
これは文庫化が待ちきれずに買ってしまいそう・・・。

満足度★★★★★

ハート・ロッカー

2010年03月07日 | 映画(は行)
恐怖と緊張の中で・・・



             * * * * * * * *

まさに現在の戦争映画。
イラク、バグダッド。
米軍爆発物処理班の新リーダーとして、ジェームズ2等軍曹が着任します。
これまでも数々の成果を上げてきた彼は、
向こうみずな行動をし、部下サンボーンとエルドリッジをいらだたせる。


映像はまるでドキュメンタリー作品のように揺れて兵士に肉薄します。
爆弾処理という最も緊張を強いられる場面。
重い防爆スーツに身を包み、一人作業にあたるジェームズ。
不意の銃撃や思いがけない爆発。
そこは常に死と隣り合わせ。
今、ここで会話を交わしていた同僚が、次の瞬間には死体となって転がっている。
こういう怖さは、私たちは映画などで知った気になっていますが、
本当のことは何もわかってはいないのですよね。きっと。
映画なら一瞬ですが、
現実はとてつもなく時間は長いのでしょうね。
映画にあったように、
どこから銃弾が飛んでくるかわからないような中で
敵と対峙するじりじりした時間。
緊張。恐怖。
その後は立ち上がることも出来なさそうです。


そしてまた、兵士でなくとも、
日々このような戦場のただ中で生活している人々がいるというのも、
全く信じられないような話ですが・・・。
これを信じられないなどという方が平和ぼけもいいところなのかもしれません。
彼ら兵士は、任務満了まであと○○日・・・などと、限りがあることですが、
そこの住人にとってはいつ果てるともない地獄なんですね。
そのような状況も見につまされます。




さて、この作品の冒頭で、「戦争は麻薬に似ている」という言葉が示されます。
戦場という恐怖と緊張の中で、兵士は異様な高揚感に見舞われるのです。
アドレナリンの大放出とでも言うのでしょうか。
正確なことはよくわかりませんが・・・。
こういうことが繰り返されると、その高揚感が一種快感のようになってくる。
危険であり命取りとわかっていても、
まるで麻薬のようにそこから逃れることが出来なくなってくる。
ここでは、ジェームズは決して戦場のヒーローではありません。
結局は戦果を上げ生還したとしても、彼の心は深い傷を負っている。


いったい何のための戦争なのか。
誰のための戦争なのか。
兵士にはそんなことはどうでもいいのですね。
ただ国の方針と上からの命令に従うのみ。
この作品にも、そんなことへの疑問はつゆほども出てきませんが・・・。
でも、もうそろそろ考えてみた方がいい。
肉体の傷のみならず、このように心まで傷つき、
ぼろぼろになっていく人が後を絶たないのでしょう。
それは相手方でも同じこと。


この作品は、死と隣り合わせの戦場の緊迫感と、
そんな中で「敵」というよりはむしろ
「恐怖に負けそうになる自分」との戦いを強いられている兵士たちの姿を
描き出していると思います。
今投げかけられるべき、戦争への問いかけの一つとなるでしょう。




2008年/アメリカ/131分

監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、ガイ・ピアーズ、レイフ・ファインズ


映画『ハート・ロッカー』予告編



しあわせの隠れ場所

2010年03月06日 | 映画(さ行)
相手が幸せなら自分も幸せ



             * * * * * * * *

全米アメリカンフットボールリーグNFLに所属するマイケル・オアー選手の実話です。
ミシシッピのスラム街に生まれた黒人青年マイケル。
ほとんどホームレスに近い生活をしていたのですが、
ある時裕福な白人女性リー・アンに拾われ家族として迎え入れられることになる。
「拾われ」というのは、まさに野良犬が拾われたみたいなんですが、その通り。
ある寒い夜、凍えそうな服装でとぼとぼ歩いていた彼が気になってしまったから・・・。
しかし、犬ならともかく、巨漢の黒人。
素性も定かでない彼を自宅に招き入れるというのは、かなりの英断であることは確かです。
実のところ、彼女はちょっぴり後悔するんですね。
何か盗まれたりはしないだろうかと。
けれども翌朝、マイケルはソファの上にきちんと毛布をたたんで黙って出て行こうとしていた。
この子は大丈夫。
彼女はそこで確信するのです。




それにしても、この心の広さと決断力。
なんとすばらしい女性なのでしょう。
そしてそれをそのまま同意して受け入れてしまうこの家族。
たぶん事実はこんなに簡単ではなかったのだろうとは思いますが、ステキなことです。
ところが、こういう善意を世間は素直に受け取らない。
偽善であるとか、何か他に裏があるのだろうとか、
いらぬ詮索までされてしまうのが実情かもしれません。



けれど、映画ではこんなシーンがあるんですよ。
ずっとおどおどしていたマイケルがようやく家族となじんで笑顔を見せ始めた頃。
リーは「今、すごく幸せな気分・・・」と夫に語りかける。
血のつながりなんかなくても信頼と友愛で家族の絆は出来る。
これまで自分の部屋もベッドも机も持ったことがない、安心して寝る場所もなかったマイケル。
しかし、その彼が安心してやすらかな表情を浮かべたときに、
自分まで幸せをわけてもらった気がしてしまう。
ここなんですよね。
相手が幸せならば自分も幸せ。
この気持ちが原動力ということをこの作品では言っていて、
本当にそれは大事なことだと思います。
そこで私たちも共に、幸せになってしまうのです。
このマイケル、大きくて威圧感があって、一見ちょっと怖い。
でも、心はとても穏やかで優しい。
まさに「はなのすきなうし」なんですね。
この絵本のたとえがステキです。



エンドロールには、実際のこの家族とマイケル・オアーの写真が紹介されています。
皆の笑顔。
家族たちがマイケルを誇りに思っていることが伝わります。
オススメの感動作です。

2009年/アメリカ/126分
監督・脚本:ジョン・リー・ハンコック
出演:サンドラ・ブロック、ティム・マッグロウ、クィントン・アーロン、キャシー・ベイツ


映画『しあわせの隠れ場所』予告編



「クローズド・ノート」 雫井脩介

2010年03月05日 | 本(その他)
万年筆とマンドリンとクローゼットのノートと・・・・

クローズド・ノート (角川文庫)
雫井 脩介
角川グループパブリッシング

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              * * * * * * * *

うーん、極上の感動作。
大学生、堀井香恵。
文具店のアルバイトとマンドリンのサークル活動に励む普通の女の子。
ある時バイト先の万年筆売り場で、ちょっと気になる男性と会いました。
絵を描いているらしいその人は、以前にも家の近くで見かけたことがある。
またある日、香恵は自室のクローゼットに、前の住人が置き忘れたらしいノートを見つけます。
それは若き小学校教師、真野伊吹の日記。
受け持っているクラス4年2組の子どもたちのことや、
恋人の隆のことがつづられている。。
人の日記など見てはいけないと思いながらつい引き込まれて、
香恵は明るく頑張り屋の伊吹先生の大ファンになってしまいます。


このストーリーのネタは、意外と早くに読者にはわかりますね。
けれど、ニブチンの香恵は最後まで気づかない。
ちょと、もー、いつになったら気づくのよ・・・って、
やきもきしながら読むのが楽しいところです。

そしてまた、石飛さんのニブチンさも相当な物。
しかし、彼は絵のことで頭がいっぱい。
そちらに集中するあまり、女の子の気持ちにまで気が回らないと見えます。
まあ、そういうドンカンなところも彼の魅力のうちなんですけどね。

そういう人には、いきなり愛を告げたりしてはいけない。
少しずつ、自分のラブストーリーを彼に語らなければ・・・。
なるほど、思っているだけでは気持ちは伝わらない。
伝わっているはず、と思ってもやはり伝わらないことの方が多いのですよね。
教育大にいながら教師を目指すことにさほど思い入れを持てなかった香恵が、
次第に教師の魅力に惹かれていきます。
それは楽しいことばかりではなく、
多忙さや不登校の子の対応など、大変さもよくわかった上で。


作中、万年筆についての記述がとても多いのです。
香恵もお父さんから大学の入学祝いにもらった愛用の万年筆を持っている。
石飛さんとの出会いも万年筆。
いやあ、万年筆なんて、何十年も持ったことがないですね。
そもそもこんな具合で、キーボードで文を書くことがほとんどですもん。
でも、この本を読んだら、万年筆が欲しくなってしまいました。
本当にいい物を。
今度、文具店に行ったら、じっくり見てしまいそうです。
でも、やっぱり買わないだろうなあ。
使うことないですよね。
美しい字でラブレターでもかければいいですけど。
・・・出す相手もないし。


さて話はもどりまして、この本のおもしろさは、最後の急展開。
その優しさと悲しさ切なさ。
泣けます。
バスの中では読まない方がいいですね。

このストーリーは著者の亡くなったお姉さまが残したものを元にしているとのこと。
教師をされていたそうで、
文集や子供たちからの手紙、連絡帳などから伊吹先生のイメージができあがったとのことです。
みんなの様子がとても活き活きとして、
こんなクラスなら私も楽しく学校に通えただろうなあ・・・。

しかし、ここに登場する「お嬢様」が、
まさに少女漫画に登場するようなベタな「お嬢様」なのがちょっと・・・。
まあ、ご愛敬ということにしましょう。

満足度★★★★★



スター・トレック

2010年03月04日 | 映画(さ行)
若き日のカーク、スポット



            * * * * * * * *

1966年にTVシリーズが開始されたというこのおなじみの作品。
私は、それほど夢中になった記憶はないのですが、
それでも、何となく馴染みがあって親しみを感じます。
この映画は、スタートレック・ビギンズとでも言いましょうか、
つまり私たちの知っているスター・トレックの前日譚となっているのです。
カークやスポックたちの出会い。
どのようにしてエンタープライズ号に乗るようになったのか・・・。
私のように、さほどスター・トレックに馴染みがなくてもたのしめましたので、
ファンの方ならなおさら面白いと思います。




ジェームズ・T・カークが初めて惑星連邦艦隊へ入隊したときのこと。
カークは、向こう見ずで生意気。
若くてまだ血気盛んなんですね。

こういうのが見られるのがおいしいところです。 
その出生時の受難。
そして無鉄砲な少年時代。
こういうエピソードはファンなら見逃せません。

一方スポックは地球人とバルカン人のハーフだったんですね。
この人のイメージがあまりにかつて見たスポックそのままで、驚いてしまいます。
まあ、耳と髪型と眉毛さえ似せれば一丁上がりのような気もしますが。

地球人を中心として、様々な姿の異星人が同居しているその世界観は、やっぱりいいなあ・・・。
けれど、今の地球上と同じく、
それぞれの習慣とか文化、宗教、そして何より利害関係が必ずしも一致せずに、
戦争が起こってしまうのでしょうね。

今、当初のTVシリーズを見ればたぶん物足りなく思うのでしょうけれど、
CG技術などの進化によって、
今も興奮を持って見ることが出来る作品に生まれ変わるのはうれしいことです。

でも、今でもやっぱり手が届かない未来のようですね・・・。
宇宙の旅は庶民にとってはまだまだ夢だなあ。

2009年/アメリカ/126分
監督:J.J.エイブラムス
出演:クリス・パイン、ザッカリー・クイント、エリック・バナ、ブルース・グリーンウッド、ぞーいサルダナ、カール・アーバン


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「海街Diary3/陽のあたる坂道」 吉田秋生

2010年03月03日 | コミックス
それぞれの揺れる思い

               * * * * * * * *

海街diary / 3 / 陽のあたる坂道 (flowers コミックス)
吉田 秋生
小学館

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でました。お待ちかね海街Diaryの3巻目。
古都鎌倉で暮らす異母姉妹の物語。


一作目、「思い出蛍」
四人姉妹は亡父の一周忌のために山形へ向かいます。
ああ、そうなんですね。
三姉妹がすずちゃんと出会ったのがちょうどこの一年前、という物語の設定です。
あの一番始めの物語が鮮烈でした。
行き場のない思いと行き場のない身を一人で抱え込んでいたすず。
本当に彼女の嗚咽が聞こえるような気がしたのです。
お父さんとの思い出の地は、やっぱり苦い思いを呼び起こすけれども、
今きちんと自分の居場所があるすずは、思い出は思い出として割り切ることが出来る。
あの始まりのストーリーに、このような後日談があるのは何ともうれしいのです。


さて、この巻では四姉妹それぞれの思いがそれぞれに語られていきます。
特に、妻子ある医師と不倫の関係にある幸。
そしてすずが同じサッカーチームの裕也に寄せるほのかな思い。
それぞれの年齢に見合った揺れる女心。
それがやや変化をみせるのです。
緩やかな時の流れ。
変わらないように見える古都。
変わらないように見える彼女らの生活。
でも、それも少しずつ緩やかに変わって行く。

私はやっぱり風太君がオススメですけどねー。
よく気がつくし、いつも家の手伝いをしている働き者。
しかも家が酒屋なんて、もー言うことなし!!
さて、その酒屋さん。
やはり今風でHPなんか作っている。
そこにコラムを書いている「弁天」さんが、なんと次女の佳乃。
なるほど、ダテに大酒飲みではないわけなんですね・・・。
しかし、吟醸酒に「熊うっちゃり」や「熊おとし」は
ネーミングセンスがやや違うのではないだろうか・・・??? 
吟醸酒は「強さ」というよりは繊細な香りを楽しむ物、と私は解しておりますが。

しかしこの佳乃さん、意外にもきっちり仕事をこなすオツボネ信金職員だったのです。
それぞれですねー。
この巻では相変わらず三女千佳が未だにつかみ所がない。
もう少し先を期待しましょう。
一番年が近いすずにとっては、一番親しくつきあえるお姉ちゃんのようですが。


やっぱり大満足の一冊でした。
さて、いつも名前だけ出てくるドジな看護師アライさんとは、いったいどんな人なんでしょうね。
一度ちゃんと見てみたいものです!!

満足度★★★★★

明日に向かって撃て!

2010年03月01日 | 映画(あ行)
★何度見てもすごい50本より★

行き着く先は・・・破滅



              * * * * * * * *

実在の銀行強盗ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの物語です。

列車強盗や銀行強盗で名を馳せた「壁の穴強盗団」。
あまりにも被害が大きいので、ある銀行の手配で最強の刺客が放たれた。
首領各のブッチ(ポール・ニューマン)とサンダンス(ロバート・レッドフォード)は
執拗な追跡に会うのですが、辛くも逃れることが出来ました。
2人は、サンダンスの恋人エッタ(キャサリン・ロス)を伴い、南米ボリビアへ逃亡します。
やがて、そこでも始めた強盗稼業。
けれども取り締まりは厳しくなり、ある日・・・・・・・・・。


アメリカン・ニューシネマと呼ばれる作品群の一つですね。
1960年代後半から70年代にかけて、
反体制的人間(主に若者)の心情を綴った映画が好まれ多く作られたのです。
反体制を謳うからには、どうしてもラストは破滅方向。
代表作「俺たちに明日はない」、あの壮絶なラストシーンが印象深いですね。
こちらはそれに対抗したのかどうかはわかりませんが、ラストはストップモーション。
その壮絶なラストはご想像ください・・・と言うわけです。

このバート・バカラックによるテーマ曲「雨に濡れても」は
当時いやというほど聞いた覚えはあるのですが、
実のところ私、この映画はみていませんでした!
アメリカン・ニューシネマを味わうにはやや若すぎたようです・・・。
これらにはまったのはやはり団塊世代でしょうか。


このブッチとサンダンス、2人のアウトローはかっこいいです。
何にも属さず自由。
法にさえも縛られない。
こういうところにあこがれる部分は確かにあります。
しかし、世間はそれを許さないのです。
これはいつの世でも同じですね。
そうして次第に追い詰められていく。
この苦しさをどう描くか、そこがポイントですよね。

2人はもう強盗稼業から足を洗って堅気になりたいと思ったのです。
しかし、今更何が出来るのか。
そこで思考停止になってしまう。
畑なんか耕せない。
牧場の仕事はきつすぎる・・・。
本気なら実は何だって出来るのだろうと思うのですが、
これまでの気ままでスリルがあって一攫千金を夢見る様な、
そんな生活を変えることが出来なくなってしまっているのです。
これがもうこの2人の生き様になっていて、こうでなければ死んだも同然。
しかし、これではやはり行き着く先は破滅しかない、と。
何となくこの映画制作当時の時代色をも感じさせられる名作です。

原題はButch Cassidy and the Sundance Kid と、ずばりそのままなのですが、
この邦題はすごいですね。
どなたが考えたか知りませんが、すばらしい!
「明日に向かって撃て」とは、まさにラストシーンの2人に向けた言葉。
こういうネーミングセンスは最近全く見られないのが残念です。
英語そのまま、意味不明のカタカナという物が多いですから・・・。

1969年/アメリカ/110分
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス


明日に向かって撃て!〈特別編〉 [DVD]

20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

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