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バルーン 奇蹟の脱出飛行

2021年07月09日 | 映画(は行)

スリルたっぷりの脱出劇

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東西冷戦下の東ドイツで、西ドイツへの亡命を目指す家族の脱出劇を
実話を元に描いた作品です。

1979年、東ドイツで抑圧された日常を送る電気技師のペーターとその家族。
手作りの熱気球で西ドイツへ行こうとします。
しかし、国境まであと数百メートルの地点に不時着。
2年をかけた計画が失敗に終わります。
一度は諦めかけたのですが、彼らは親友ギュンターの家族とともに、
再び新たな気球を作り始めます。
そんな中、秘密警察(シュタージ)の捜査の手が迫る・・・。

気球を手作りと簡単には言いますが、
彼ら二家族を運ぶ気球はかなりの大きさが必要です。
監視と密告が横行する社会の中で、大量の布を買い求めるというのは実に危険な行為なのです。
そのため、何件もの店を回り、分散して布を買うのです。
だから気球は図らずもカラフルで美しい・・・。
ミシンがけも大変な作業量ですよね。
糸だって大量に必要になるでしょう。
このとき、ギュンターはまもなく徴兵されるとことになっており、
何が何でもその前までに実行しなければならない。



ペーターの長男は隣家の娘が好きなのですが、
よりによってその父親はシュタージだったりする。
あろうことか長男は彼女に一緒に西に行かないかなどと言ってしまったりする。
おい、おい、それは絶対言ってはダメなヤツ・・・。

等々、そもそも実話を元にしているのだから、結果は分かりきっているのですけれど、
それでもなお、ハラハラドキドキ、やきもきさせられてしまう。
スリルたっぷりの作品なのでした。

この家族を逃さないために、相当数の人員がかり出され、捜査に当たるのです。
なんという労力と時間の無駄。
そんなことをしないと人々をつなぎ止められない国の体制って一体何なのか、
と、このような話ではいつも思ってしまいます。
もっとマシなことに人員や労力を費やせばいいのにね。

結局ベルリンの壁が崩壊したのはそれから約10年後。
今となっては、スリルたっぷりの英雄譚ではありますが、
世界のどこかでは同様の抑圧された日常を過ごす人々が今もいる、
ということを忘れてはいけません。

 

<WOWOW視聴にて>

「バルーン 奇蹟の脱出飛行」

2018年/ドイツ/125分

監督:ミヒャエル・ブリーヘルビヒ

出演:フリードリヒ・ミッケ、カロリーヌ・シュッヘ、デビッド・クロス、
   アリシア・フォン・リットベルク、トーマス・クレッチマン

 

監視社会度★★★★★

ハラハラ度★★★★☆

満足度★★★.5

 



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