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「殺人鬼がもう1人」若竹七海

2020年06月11日 | 本(ミステリ)

ダークポリスの町

 

 

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都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。
20年ほど前に“ハッピーデー・キラー”と呼ばれた連続殺人事件があったきり、
事件らしい事件もないのどかな町だ。
それがどうしたことか二週間前に放火殺人が発生、空き巣被害の訴えも続いて、辛夷ヶ丘署はてんてこまい。
そんななか町で一番の名家、箕作一族の最後の生き残り・箕作ハツエが
ひったくりにあうという町にとっての大事件が起き、
生活安全課の捜査員・砂井三琴が捜査を命じられたのだが…。
(「ゴブリンシャークの目」)
アクの強い住人たちが暮らす町を舞台にした連作ミステリー。
著者の真骨頂!!

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若竹七海さんの、連作ミステリ。
舞台は都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。
かつては一戸建てが夢で、都心までの通勤時間の長さも何のその、
多くの人がここに家を新築して移り住んできた。
しかし今は、その人たちもすっかり高齢化。
若い人は都心のマンションに住むようになって、
こんな街には寄りつかない・・・と、今時どこにもある町。

そんなところにあるのが辛夷ヶ丘署。
そこの生活安全課の捜査員・砂井三琴が主な登場人物の一人です。
身長180センチにも届こうかという大女で三白眼。
しかも7センチほどもあるハイヒールを愛用。
署内では「不倫をして飛ばされてきた」などと噂をされている。
・・・というほどの、左遷先にうってつけの寂れた警察署。
いえいえ、警察署が寂れているのは、大きな事件がないということで
良いことではありませんか!!


ところが、この三琴さん、常なるミステリとはちがってなかなかダークなのであります。
頭が良く推理力も抜群。
そして抜け目がない。
様々な詐欺事件などを片付ける傍ら、
ちゃっかり差し支えのない範囲で上前をはねたりします・・・。
実際それで困る人が出るわけでもない。
クールでドタバタでユーモラス。
実にいい味が出ています。
ここのところが、若竹七海さんの持ち味ですものね。


また、ここでホームクリーニング業を営む向原理穂も、
仕事熱心ながら、これまたなかなか抜け目がないようで・・・。
そう、女が自立して生きていこうと思ったら、真面目で誠実だけではやっていけないのです!!
妙にここの人々が気に入ってしまった私。

巻末の表題作「殺人鬼がもう一人」では、本当に殺し屋の女性が登場。
ある殺人の依頼を受け、現場に向かうと、
なんとすでに標的の人物は殺されていた・・・。
20年前に辛夷ヶ丘で起きた連続殺人事件<ハッピーデー・キラー>にもつながる事件の始まり・・・。
意外性ではピカイチ、そして本巻のラストを飾るにふさわしい一作。


このシリーズ、続きがあればまた読みたいです。
葉村晶シリーズに続いて、ファンになりそうです。

図書館蔵書にて
「殺人鬼がもう一人」若竹七海  光文社
満足度★★★★☆



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