映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

コレット

2020年06月10日 | 映画(か行)

いつまでも夫の影ではいられない

* * * * * * * * * * * *


フランスの女性作家、シドニー・バブリエル・コレットの人生を描きます。



フランスの片田舎で生まれ育ったコレット(キーラ・ナイトレイ)。
14歳年上の人気作家ウィリーと結婚し、パリにやって来ます。
1980年代、ベル・エポックまっただ中のパリ。
サロンでは様々な芸術家たちが集い、活動を繰り広げています。
ウィリーは、コレットの文才に気づき、
自身のゴーストライターとして彼女に小説を書かせます。
そして、彼女の「クロディーヌ」シリーズはベストセラーに。
しかしコレットは、いつまで経ってもウィリーの影であることに納得できなくなり・・・
彼女はこの保守的で男性優位の当時の社会の中で、
ありのままの自分を貫き才能を開花させて行くのです。

「クロディーヌ」は、ほとんどコレットの分身。
当時「女性は慎ましくあるべき」というお約束を打ち破り、
赤裸々な女性の生活を描いたものであるようです。
だから実のところこれはコレットでなければ描き得なかった本。
でも、それを書くように言ったのはウィリーなんですね。
はじめ彼は大人の余裕でコレットに書くことを教えたのです。
確かに彼は14歳も年上で、大人だった、初めは。
けれど、さして文才も商才もなく、散財をつくし、女遊びに暇なくという、実はダメ男。
大人などというものではない、全く子どものような男でありました・・・。
彼は面白がってコレットを自由にさせていましたが、
単に夫らしい責任感も、まともな愛情も、持ち合わせていなかっただけなのかも。



コレットも普通の「夫人」よりも自由にさせてもらっているとは自覚していましたが、
それも所詮は夫の手のひらで転がされているだけ、とわかってきます。
何よりも、いつまでも自分はゴーストライターで、人々の賞賛はすべて夫のものなのですから。
そして、いくら本が売れても、夫が散財するために、いつまで経ってもお金がないのです・・・。
これで反逆しない方がムリというものです。
でも、この夫がいなければ、作家としてのコレットもいなかった、と言うことでもありますね。
だから世の中は面白い。



作中、スカートをはいていることに違和感を憶えていたと言う男装の女性が登場。
今で言うトランスジェンダーです。
男女の恋ばかりでなく、レズビアンやトランスジェンダーも登場。
19世紀末の物語ではありますが、LGBTの問題は今に始まったわけではなく、
いつの世にも「偏見や差別」という形で存在していたわけです。
そんなところにも興味が持たれる作品。

Amazonプライムビデオにて
「コレット」
2018年/イギリス・アメリカ/111分
監督:ウォッシュ・ウエストモアランド
出演:キーラ・ナイトレイ、ドミニク・ウエスト、デニース・ゴフ、フィオナ・ショウ

女性の自立への道度★★★★☆
満足度★★★.5

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿