特養老人ホームのあれこれ
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派遣切りに遭い、やむなく特養老人ホーム「まほろば園」で働く康介。
体に染みつく便臭にはまだ慣れない。
それに認知症の人や言葉が不明瞭な人相手の仕事は
毎日なぞなぞを出されているかのようだ。
けれど僅かなヒントからその謎が解けた時、康介は仕事が少し好きになり……。
介護する人される人、それぞれの声なき声を掬すくうあたたかな連作短編集。
丸山正樹さんの連作短編集。
特養老人ホーム「まほろば園」で働く介護士、康介のストーリーです。
2012年から2018年にかけて書かれたもの、ということで、
今私が知る著者の作品とは少しテイストが異なります。
ちょっぴりコメディタッチ。
でも、大切なことはしっかり描かれています。
きついばかりで給料はさして高くもなし。
せっかく得た仕事ではあるものの、
康介はきっとすぐにやめることになりそうだと自分でも感じていました。
ホームにいるのは、多くが認知症の老人で、
意思疎通もままならなくて、やりがいを感じられない・・・、
そう思っていたのです。
でも、仕事熱心な先輩に教えられることも多く、
そして次第にここの老人たちも、ただ何も分らないのではなくて、
感情があって、それぞれの事情を抱えながら、
ここのままならない状況に耐えているのだということが分ってきます。
このような施設の抱える問題点を挙げながら、
現場で働く人々の気持ち、またそこで暮らす老人たちの気持ち、
何もかもが切実に響いてきます。
私は元々お仕事小説が好きなのですが、本作はその中でもピカイチの一つだと思います。
「ウェルカム・ホーム!」丸山正樹 幻冬舎文庫
満足度★★★★☆
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