映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「正体」染井為人

2024年08月02日 | 本(ミステリ)

無実を晴らそうとしながら逃亡生活

 

 

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埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、
死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した!
東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、
新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。
様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、
必死に逃亡を続ける彼の目的は?
その逃避行の日々とは?
映像化で話題沸騰の注目作!

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私、本作は映画かドラマで、割と最近見たヤツではないかな?
・・・と思いつつ手に取りまして、読んですぐ思い出しました。
WOWOWのドラマで見たものでした。
主演は亀梨和也さん。

 

その、亀梨くん演ずるところの鏑木慶一は、
一家3人の殺人事件の犯人として死刑判決を受けて
拘留中だったのですが、脱獄し、逃亡中。
その彼が、様々なところで潜伏生活を送る様子が描かれます。

 

東京オリンピック施設の工事現場、
スキー場の旅館の住み込みバイト、
新興宗教の説明会、
人手不足のグループホーム。
彼はなるべく人と関わりを持たないように過ごすのですが、
でも仕事というのは人との関わりの中でするものです。
そこで様々な人と過ごす内に、いろいろなできごとがあって、
そしてなぜかお人好しにも人助けをしてしまう彼。
・・・ドラマではわかりにくいのですが、
小説だとそれぞれの章が鏑木とかかわった人物の視点で描かれているのが興味深いところです。

ふらりと同じ職場にやって来た一見目立たない青年が、
次第に真面目で頭が良く、気持ちの温かい人物であることが感じられるようになっていく。

 

そうなんですよ、残虐な殺人を犯した死刑囚のはずなのですが、実は無実。
鏑木は潜伏生活を送りながら、なんとか自分の無実を晴らそうと奮闘しているのです。

無実であるのに死刑などと、こんなに理不尽なことがあるでしょうか。
自らの運命に抗い新たな運命を切り開こうという、
鏑木慶一の応援団にならないではいられません。

 

が、しかし・・・。
言葉をなくすような結末が待ってはいるのですが。

読み応えたっぷり。

 

ところで本作、映画化されこの11月に公開予定となっていますが、
主演、つまり鏑木慶一役が誰なのかが発表されていません。
亀梨くんではなさそうですが、では一体誰???

お楽しみ。

 

「正体」染井為人 光文社文庫

満足度★★★★☆



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