生死をかけた二者択一
サハラの薔薇 | |
下村 敦史 | |
KADOKAWA |
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エジプト発掘調査のハイライト、王家の墓に埋葬されていた石棺の中にあったのは、
死後数ヵ月のミイラ状死体だった!
そして、考古学者の峰は何者かの襲撃を受ける。
危うく難を逃れたが講演先のパリへ向かう飛行機が砂漠に墜落し、
徒歩でオアシスを目指すことになった。
同行者は美貌のベリーダンサー・シャリファ、
粗暴で残酷なアフマド。
何かを思い詰めている技術者の永井、
飛行機オタクのエリック、
不気味な呪術師。
誰もが謎を抱え、次々と危険なカードを切ってくる
―やがて一行は分裂し、巻き込まれた戦闘の中で峰は、永井の過去と真実の使命を知る。
果たして「サハラの薔薇」とは何なのか。
それが未来にもたらすものは!?
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主人公は考古学者・峰。
エジプトの王家の墓で発掘調査をし、石棺を発見。
しかしそこにあったのは、死後数ヶ月のミイラの死体だった!!
私は始め密室殺人事件の謎の物語かと思ったのですが、そうではありませんでした。
そのミイラはさておいて、峰がエジプトからパリへ向かおうとする旅客機が砂漠に墜落してしまうのです。
かろうじて生き延びた人々は、
その場に留まり救助を待つものと、近くにあると思われるオアシスを目指すもの、
二手に分かれます。
峰は数人とともにオアシスを目指すことになりますが、
灼熱のサハラ砂漠、今にも行き倒れそうになりながら、
水不足や仲間割れとも戦う苦難の道のり・・・。
そんな中で、この旅客機の墜落の謎や、ミイラの死体の謎も解けてきます。
原子力利用の問題やゲリラとの銃撃戦など、読みどころ満載。
峰の運命やいかに!!
冒険エンタテイメント作品。
一気読みです。
本作の中で、峰が二者択一を迫られるシーンが多々出てきます。
墜落地点で待機するか、または苦難は承知だがオアシスまで行くか。
オアシスまでを先導する男の言う通りの方向を目指すか、または呪い師(?)の言う方角を目指すか。
・・・などなど、まるでRPGゲームのように選択肢が何度も登場します。
そこでの彼の判断基準は、あくまでも自分にとってどちらが有利なのか。
人道的か、皆のためかはさほど重要ではない。
彼は発掘品を横流し密売して多少稼ぐこともあったりして、若干せこいのです。
また、本心とは違うのだけれど同行の美女シャリファにいいところを見せようとする場面もあります。
公明正大、正義の味方では全然ない。
けれども彼自身、同行する同じ日本人・永井の熱い信念に感化され少しづつ変わっていくのです。
そんなところも楽しみつつ・・・。
原子力の問題が出てくるところが見せ所ですが、
まあ、これはエンタテイメントの小道具みたいなものですかね。
まさに「面白い」作品。
図書館蔵書にて
「サハラの薔薇」下村敦史 角川書店
満足度★★★★☆