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「私の少女マンガ講義」萩尾望都

2018年09月28日 | 本(解説)

少女マンガ史=私の生活史

私の少女マンガ講義
萩尾 望都
新潮社

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少女マンガの神様が、ついに少女マンガを語った!
日本の少女マンガは、世界で唯一つのメディアだ
――マンガ界をつねに牽引するハギオモトが少女マンガ史をひもといた、
イタリアの大学での講義を完全収録。
創作作法や『ポーの一族』の新作『春の夢』など注目の自作についてもたっぷりと語り下ろす。
少女マンガってなんでこんなに楽しいの?
魅力の秘密を萩尾先生が教えてくれます。

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一応、著者「萩尾望都」となっていますが、
ライターの矢内裕子さんが構成執筆したものです。
2009年に萩尾望都さんがイタリアのナポリ東洋大学、ボローニャ大学、ローマ・日本文化会館で行った
「戦後少女マンガ史」の講演を中心にまとめたもの。
日本でなく、イタリアで講演が行われたというのは驚きです。
つまり、本当に日本の漫画は世界中で愛され、ファンが大勢いるということなのでしょう。


萩尾望都さんの少女漫画史は手塚治虫さんの「リボンの騎士」から始まって、
牧美也子さん「マキの口笛」、
水野英子さん「こんにちは先生(ハロー・ドク)」、
西谷祥子さん「マリイ・ルウ」、
里中満智子さん「ナナとリリ」の作品などに触れて進んでいきます。
更に流れに沿えば、
わたなべまさこ「ガラスの城」、
楳図かずお「へび少女」、
神保史郎・望月あきら「サインはV!」,
浦野千賀子「アタックNo.1」、
山岸凉子「アラベスク」、
池田理代子「ベルサイユのばら」、
萩尾望都「ポーの一族」、
山本鈴美香「エースをねらえ!」、
いがらしゆみこ「キャンディ・キャンディ」、
美内すずえ「ガラスの仮面」、
細川智栄子「王家の紋章」、
青池保子「エロイカより愛をこめて」、
木原敏江「摩利と新吾」、
大島弓子「綿の国星」、
くらもちふさこ「いつもポケットにショパン」、
大和和紀「あさきゆめみし」、
槇村さとる「愛のアランフェス」、
山岸凉子「日出処の天子」、
吉田秋生「BANANAFISH」


・・・きりがないのでこの辺にしますが(というか、私が非常に思い入れがあるのがこのあたりまで)、
なるほど、少女漫画の歴史というのは、そのまま私の生活史でもあったのでした。
上記でも一部読んでいないものもありますが、未だに懐かしく忘れられない名作揃い。
そして、萩尾望都さんはこの流れの最後によしながふみ「大奥」を持ってきます。
「リボンの騎士」から「大奥」まで。
なるほど、どちらも男女逆転の物語です。
でも、「リボンの騎士」はヒロイン・サファイアは男装して王子にならなければ活躍できなかった。
「大奥」では女将軍たちが女性として、人間として、自分の生き方に悩む。
ということで、少女マンガにはその時代ごとのフェミニズムが流れているような物語が節目節目に生まれている。
というまとめも、見事です。


本巻ではこの講演記録のほか、萩尾望都さんが語る「少女マンガの魅力」のこと、
「自作のコマ割り」の仕方、そして、3.11以降の自作作品解説等、
ファンにとっては魅力いっぱいの内容となっています。


図書館蔵書にて
「私の少女マンガ講義」萩尾望都 新潮社
満足度★★★★☆