映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

オーケストラ・クラス

2018年09月06日 | 映画(あ行)

子どもたちにいろいろな体験の機会を

* * * * * * * * * *


喧嘩ばかりでまとまらないクラスが、ある指導者のおかげで音楽に取り組むことになり、
紆余曲折を経ながらも、次第にまとまって美しい音楽を奏でるようになる・・・と、
似たような話はいくつも見たような気がするのですが、
さて、本作の特色は何処にありや、と若干「お手並み拝見」みたいな気分で見ました。

パリ19区。
ここもよく使われる舞台ですね。
移民が多く住み、人種も入り乱れた貧困層の地域。
そんなところにある学校で、あるプロジェクトが取り入れられるのです。
音楽に触れる機会の少ない子どもたちに無料で楽器を貸し出して、
プロの演奏家が音楽を教えるという、フランスの実在の教育プログラム。


新学期のある日、音楽教室に、多少なりとも音楽に興味のある子どもたちと、
教師と、ヴァイオリン演奏家のダウドが集まりました。
ダウドは演奏家として行き詰まっており、
この講師も仕方なく、という感じで引き受けたのです。
さて、子どもたちはさっそく喧嘩を始めたりして大騒ぎ。
子どもが苦手のダウドの言うことなどとても聞きそうにありません。
しかしそこはさすがにブラヒミ先生が上手く誘導しながら授業が決まります。
そしてブラヒミ先生も子どもたちと一緒にはじめてのヴァイオリンを習うことに。
年度末にはこのプロジェクトに参加する子どもたち合同のコンサートが予定されていて、
それまでに曲を完成させなければなりません。
さて、どうなりますやら・・・。



このクラスのはじめての授業を窓の外から熱心に眺めている少年がいます。
まだヴァイオリンが余っているからと、その子・アーノルドもクラスに加えることにするのですが、
彼こそが素晴らしい才能の持ち主でした。

彼の一生懸命さにダウドも気を良くして、やる気を起こし始めます。
ところで、出演している子どもたちも実際にクラシック音楽などに縁遠いドシロウトの子どもたちで、
もちろん演技経験もなかったとのことです。
撮影の苦労が忍ばれますが、
だからこそ、その練習の大変さや上達のほどが非常にリアルに感じられます。

このクラスは全員ヴァイオリンなのですが、
他の学校ではまた他の楽器を練習しているわけですね。
それが皆集まって初めてオーケストラが完成する。
なかなかおもしろい取り組みです。
曲は「シェヘラザード」。
アーノルドのヴァイオリンのソロパートがなかなかうまく弾けないシーンをたくさん入れて、
最後の本番にはじめて、美しい調べが流れます。
思わず、涙・涙・・・。
にくい演出です。



全く、どこにどんな才能が眠っているかわからないものだから、
子どもたちにはできるだけいろいろなことに触れる機会があるといいですよね、貧富にかかわらず。
子どもたちの日常的な会話シーン(みな愉快そうに笑っている)が結構長く入っていて、
これがまたいい雰囲気だし、リアルなのです。
子どもたちだけでなく、親たちも次第に一致団結していく様、たのしく見ました。
ありきたりのテーマでも丁寧に描けば、やはり感動の物語になるものですね。

<ディノスシネマズにて>
「オーケストラ・クラス」
2017年/フランス/102分
監督:ラシド・ハミ
出演:カド・メラッド、アルフレッド・ルネリー、ザカリア・タイエビ・ラザン、シレル・ナタフ、ユースフ・ゲイエ、サミール・グスミ

成長度★★★★★
満足度★★★★☆