映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

スイッチ・オフ

2018年09月26日 | 映画(さ行)

電力のない世界を考える

* * * * * * * * * *


カリフォルニア北部の森。
父親と一緒に自然に包まれた暮らしを送るエバとネル。
ある夜、突然電気が停止してしまいます。
それは一夜のみならず、その後ずっと続き、
しかもこの地域だけではなく、全世界で起こっていることのようなのです。

始め聞こえていたラジオもやがて何も聞こえなくなり、情報も何も入らない。
10日目くらいに残り少ないガソリンを心配しながら街まで出てみるのですが、
街は何やら殺伐とした様相に変わっています。
商店に品物は殆どありません。
危険を感じ、やはり山の家に戻って暮らすことにした3人。
ところが事故で父親が亡くなってしまい、
姉妹二人は互いの力だけで生きることを決意しますが・・・。

単に、まだ見たことがないからというだけでチョイスした作品なのですが、
先日丸一日の停電を体験した身には、ひどく身近で切実に感じてしまった作品でした。



まあそれにしても、一体何が起こったのか、
停電の原因は作中でも明らかにされないのですが、
こんなに長期でも電力が復旧しないというのは、現実的な話ではないような気がします・・・。
また、「東部では電力が復旧し、ガソリンも手に入って人々は普通に暮らしている・・・」
という噂が流れたりしているのですが、
それが本当なら、そちらからの援助がないはずがない。
嘘に決まっています。
幸いここの家にはかなりの食料が貯蔵されており、燃料は薪を用い、水も湧き水か何かがあったようで、
しばらくはしのげたのです。
しかし、街では治安が悪くなり、そんな人々がやって来たりもするので、
女二人ではいかにも心もとない・・・。



本作ではこの二人の女性に焦点が当てられているわけですが、
私は町の人々がどうやって生きているのか、気になって仕方がない。
少し前に見た邦画の、「サバイバル・ファミリー」でも、
電力がすべて失われたという状況の中で一家族に焦点を当てていました。
彼らはやはり都会には住んでいられなくなり、田舎に住むようになるわけです。
そうなんです。
本当に電力が失われたとしたら、都市は機能しなくなります。
エレベーターも動かなく、水が出ない状態で、人は高層ビルでは生活することができません。
物流も途絶えるのでスーパーに品物がなくなり
(札幌のほんの1~2日の停電でもそうでした)
食料品の入手はほとんどできなくなってしまうでしょう。
過疎の田舎ならば、それでも自給自足と物々交換でなんとかできる。
都市ではあまりにも人が多く、土地がない・・・。
電力が途絶えると都市はどうなってしまうのか、
こういうことを本気でシュミレートした作品を見てみたい気がします・・・。


江戸時代でも人は立派に生きていたわけなので、人類滅亡はしないでしょう。
けれどある程度の流通とか販売ルートが定着するまでにどんな大混乱があるのか。
大量生産、大量消費の文化がすべて崩壊して地産地消の世の中に落ち着くまで・・・。
その前に絶対餓死する人が出ると思うし、
真夏の日本なら熱中症でなくなる人も出そうです・・・。
北海道の冬ならば、凍死者も・・・。
どれだけの人が失業して、どんな職業の人が生き延びるのか・・・。

う~ん、考えるべきことは多々ありそう。
つい、映画とは直接関係ないことをあれこれと想像してしまう私なのでした。

スイッチ・オフ [DVD]
エレン・ペイジ,エヴァン・レイチェル・ウッド,カラム・キース・レニー,マックス・ミンゲラ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント



<WOWOW視聴にて>
「スイッチ・オフ」
2015年/カナダ/101分
監督:パトリシア・ロゼマ
原作:ジーン・ヘグランド「森へ 少女ネルの日記」
出演:エレン・ペイジ、エバン・レイチェルウッド、マックス・ミンゲラ、カラム・キース・レニー、マイケル・エクランド

電気の文化を考える度★★★★☆
満足度★★.5