「三度目」の意味

* * * * * * * * * *
殺人の前科がある男、三隅(役所広司)の弁護を引き受けた重盛(福山雅治)。
三隅は、解雇された工場の社長を殺害し死体に火をつけた容疑で、
本人も犯行を自供しています。
このままだと死刑判決の可能性が高い。
なんとか死刑を回避し、無期懲役に持ち込めればよし、と当たりをつける重盛。
しかし接見を重ねる都度、三隅の話は二転三転。
果たして三隅の犯行動機は?真実は?
事態は混迷を深めていきます。

始めのうち重盛は後輩川島(満島真之介)にこのようなことを言っています。
「真実はどうでもいいんだ。
被告に有利な材料は何か、肝心なのはそれだけだ。」
ところが、三隅と接見を重ねるうちに、彼自身が自分の言葉を裏切り、
真実を知りたくなっていくのです。
いや、事件の真実というよりも、三隅の真実の心を知りたくなったというべきでしょうか。
三隅の故郷留萌へは、始め行く必要なんかないと言っていたのに、
結局訪ねていますもんね。

ラストで重盛が彼自身の推測する真実らしきものを述べるシーンがあるのですが、
三隅にうまくはぐらかされてしまいます。
私たちは、でもやはり重盛の推測が答えなのか・・・?
と、もやもやしながら劇場をあとにするわけですが、
ふと三度めの殺人の「三度目」に引っかかります。
一度目が北海道で起こした昔の事件。
二度目がこの度の事件。
では三度目は?
三隅の、真の意図が浮かび上がります。
結局この度の事件はやはり三隅の犯行なのだろうなあ。
問題はその動機ということになりますね。
とすれば、三隅のあののらりくらりの、二転三転の、接見での言葉は、
実はとても用意周到だったのかもしれない。
本当のことと言うのは、本人の心の中にしかない。
それが沈黙として守られれば守られるほど、
その人のある種の「強さ」が浮かび上がるような気がします。
さてそれから本作で思ったのは、
裁判というのはどうも、はじめから期待されるストーリーが出来上がっていて、
誰もがそれにそって質問したり、証言したりするもののようだ・・・
ということ。
本当はそれではいけないのだろうけれど、
裁判官も検事も弁護士も、すっかり裁判がルーティンになっていて、
道筋からそれることを嫌うようになってしまっているのかもしれません。

何にしても色々と考えてしまう作品なのでした。
何と言っても、面会室で対峙する2人のシーンが
緊張感たっぷりで恐ろしくさえある、
すごかったです。
<シネマフロンティアにて>
「三度目の殺人」
2017年/日本/124分
監督・脚本:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介、市川実日子、吉田鋼太郎
混迷度★★★★★
満足度★★★★☆

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殺人の前科がある男、三隅(役所広司)の弁護を引き受けた重盛(福山雅治)。
三隅は、解雇された工場の社長を殺害し死体に火をつけた容疑で、
本人も犯行を自供しています。
このままだと死刑判決の可能性が高い。
なんとか死刑を回避し、無期懲役に持ち込めればよし、と当たりをつける重盛。
しかし接見を重ねる都度、三隅の話は二転三転。
果たして三隅の犯行動機は?真実は?
事態は混迷を深めていきます。

始めのうち重盛は後輩川島(満島真之介)にこのようなことを言っています。
「真実はどうでもいいんだ。
被告に有利な材料は何か、肝心なのはそれだけだ。」
ところが、三隅と接見を重ねるうちに、彼自身が自分の言葉を裏切り、
真実を知りたくなっていくのです。
いや、事件の真実というよりも、三隅の真実の心を知りたくなったというべきでしょうか。
三隅の故郷留萌へは、始め行く必要なんかないと言っていたのに、
結局訪ねていますもんね。

ラストで重盛が彼自身の推測する真実らしきものを述べるシーンがあるのですが、
三隅にうまくはぐらかされてしまいます。
私たちは、でもやはり重盛の推測が答えなのか・・・?
と、もやもやしながら劇場をあとにするわけですが、
ふと三度めの殺人の「三度目」に引っかかります。
一度目が北海道で起こした昔の事件。
二度目がこの度の事件。
では三度目は?
三隅の、真の意図が浮かび上がります。
結局この度の事件はやはり三隅の犯行なのだろうなあ。
問題はその動機ということになりますね。
とすれば、三隅のあののらりくらりの、二転三転の、接見での言葉は、
実はとても用意周到だったのかもしれない。
本当のことと言うのは、本人の心の中にしかない。
それが沈黙として守られれば守られるほど、
その人のある種の「強さ」が浮かび上がるような気がします。
さてそれから本作で思ったのは、
裁判というのはどうも、はじめから期待されるストーリーが出来上がっていて、
誰もがそれにそって質問したり、証言したりするもののようだ・・・
ということ。
本当はそれではいけないのだろうけれど、
裁判官も検事も弁護士も、すっかり裁判がルーティンになっていて、
道筋からそれることを嫌うようになってしまっているのかもしれません。

何にしても色々と考えてしまう作品なのでした。
何と言っても、面会室で対峙する2人のシーンが
緊張感たっぷりで恐ろしくさえある、
すごかったです。
<シネマフロンティアにて>
「三度目の殺人」
2017年/日本/124分
監督・脚本:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介、市川実日子、吉田鋼太郎
混迷度★★★★★
満足度★★★★☆