ユダヤ人の末裔の物語
* * * * * * * * * *
診療所の留守電に「殺される」という女性からの伝言。
不吉な言葉を残し行方をくらました女性を捜して―
友人の医師から頼みを受けた私立探偵ヴィクは、
消えた女性ジュディの複雑な家庭事情を知る。
彼女は家出後ろくでもない男と出逢い、薬に溺れた。
ジュディにも希望の星があるはずだった。
最先端企業で働く息子のマーティンだ。
だが、彼も姿を消したことがわかり
…家族関係の中に隠された闇にヴィクが鋭く切り込む!
* * * * * * * * * *
V・I・ウォーショースキーシリーズ。
実は先日本棚の奥から発掘した「アンサンブル」と共に隠れていました。
同時期に買ったものですが、
2冊あるからこそ余計によむのが億劫になっていたようです。
しかし、思わぬ拾い物で儲かったとでもいいましょうか、
本作、本当に"掘り出し物"でした!!
ヴィクは友人ロティから、彼女の知人の娘ジュディから助けを求める電話があり、
その後行方不明との相談を受けます。
ジュディは薬に溺れるろくでもない人物ですが、
その息子マーティンもまた姿を消していることがわかり、
ヴィクは捜査に乗り出します。
それは次第にオーストリアのドイツ統治時代に根を持つ問題であることがわかってきます。
そして現米国の核爆弾やコンピューター開発にもつながるという・・・。
壮大ではありながら、単に机上の空論ではなく、
ヴィクが一つ一つ体を張ってナゾを紐解いていくので、
身近で説得力があります。
そして、本作を通して一人の女性の姿が浮かび上がってきます。
これは架空の人物なのですが、描かれる歴史はホンモノ。
マルティナ。
物理学の天才だけれどもユダヤ人であるため、
虐げられ、報われず、しかし鉄の意志を持って生き抜いた女性。
本作に登場するジュディの祖母です。
この人の人物造形にすっかり魅入られてしまいました。
しかし研究に熱意を向けるあまりに、自分の娘のことはおざなりとなり、
その娘ケーテ、そして孫ジュディは米国に渡ってからさえも、
心も金銭的にもどん底の生活を送っている・・・というのが、物悲しい。
しかし、4代目となるひ孫マーティンは
曾祖母の才能を受け継ぐ若き希望の星。
ここに来て運命の歯車が回り出す。
うーん、なんて奥深い物語。
読後はしばしぼーっとしてしまいました。
ラストで、主要人物が実際にオーストリア、ウィーンのゲットーの跡を訪れ、
あるものを見つけるシーンにはぐっと胸に迫るものがあります。
登場人物は老人から若者、子供までそれぞれ個性的で魅力的。
もちろん、おのれの利益しか頭にないゴチゴチの経営者やら
国土安全保障省のツワモノも登場しますが。
さて実は、このシリーズ、この後にもう一冊出ているのです。
この際なので、近いうちにそちらにもチャレンジしようと思います。
「セプテンバー・ラプソディ」サラ・パレツキー ハヤカワ文庫
満足度★★★★★
![]() | セプテンバー・ラプソディ (ハヤカワ・ミステリ文庫) |
Sara Paretsky,山本 やよい | |
早川書房 |
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診療所の留守電に「殺される」という女性からの伝言。
不吉な言葉を残し行方をくらました女性を捜して―
友人の医師から頼みを受けた私立探偵ヴィクは、
消えた女性ジュディの複雑な家庭事情を知る。
彼女は家出後ろくでもない男と出逢い、薬に溺れた。
ジュディにも希望の星があるはずだった。
最先端企業で働く息子のマーティンだ。
だが、彼も姿を消したことがわかり
…家族関係の中に隠された闇にヴィクが鋭く切り込む!
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V・I・ウォーショースキーシリーズ。
実は先日本棚の奥から発掘した「アンサンブル」と共に隠れていました。
同時期に買ったものですが、
2冊あるからこそ余計によむのが億劫になっていたようです。
しかし、思わぬ拾い物で儲かったとでもいいましょうか、
本作、本当に"掘り出し物"でした!!
ヴィクは友人ロティから、彼女の知人の娘ジュディから助けを求める電話があり、
その後行方不明との相談を受けます。
ジュディは薬に溺れるろくでもない人物ですが、
その息子マーティンもまた姿を消していることがわかり、
ヴィクは捜査に乗り出します。
それは次第にオーストリアのドイツ統治時代に根を持つ問題であることがわかってきます。
そして現米国の核爆弾やコンピューター開発にもつながるという・・・。
壮大ではありながら、単に机上の空論ではなく、
ヴィクが一つ一つ体を張ってナゾを紐解いていくので、
身近で説得力があります。
そして、本作を通して一人の女性の姿が浮かび上がってきます。
これは架空の人物なのですが、描かれる歴史はホンモノ。
マルティナ。
物理学の天才だけれどもユダヤ人であるため、
虐げられ、報われず、しかし鉄の意志を持って生き抜いた女性。
本作に登場するジュディの祖母です。
この人の人物造形にすっかり魅入られてしまいました。
しかし研究に熱意を向けるあまりに、自分の娘のことはおざなりとなり、
その娘ケーテ、そして孫ジュディは米国に渡ってからさえも、
心も金銭的にもどん底の生活を送っている・・・というのが、物悲しい。
しかし、4代目となるひ孫マーティンは
曾祖母の才能を受け継ぐ若き希望の星。
ここに来て運命の歯車が回り出す。
うーん、なんて奥深い物語。
読後はしばしぼーっとしてしまいました。
ラストで、主要人物が実際にオーストリア、ウィーンのゲットーの跡を訪れ、
あるものを見つけるシーンにはぐっと胸に迫るものがあります。
登場人物は老人から若者、子供までそれぞれ個性的で魅力的。
もちろん、おのれの利益しか頭にないゴチゴチの経営者やら
国土安全保障省のツワモノも登場しますが。
さて実は、このシリーズ、この後にもう一冊出ているのです。
この際なので、近いうちにそちらにもチャレンジしようと思います。
「セプテンバー・ラプソディ」サラ・パレツキー ハヤカワ文庫
満足度★★★★★