龍之進の成長はちょっぴりさみしい
* * * * * * * * *
北町奉行所町方同心見習い組には六人の若者がいる。
伊三次の仕える不破友之進の嫡男、龍之進を始め、
緑川鉈五郎、春日多聞、西尾左内、古川喜六、橋口譲之進という面々。
俗事に追われ戸惑いながらも、江戸を騒がす「本所無頼派」の探索に余念がない。
一方、伊三次とお文の関心事は、少々気弱なひとり息子の成長だが。
* * * * * * * * *
シリーズ7巻目。
前巻に引き続き、不破龍之進たち同心見習い組と、
江戸を騒がす「本所無頼派」のことが縦軸となってストーリーは進みます。
この辺り、伊三次はすっかり脇役的存在になっているのですが・・・。
いや、私自身龍之進くんの大ファンになってしまっているので、別に構いません。
若いっていいなあ・・・と、
つい、いかにもオバサン的感慨にふけってしまいます。
また、龍之進の幼い妹・茜と伊三次の息子・伊与太の様子もとっても微笑ましい。
冒頭で茜は人買いにさらわれかけるのですが、なんとか無事でした。
ハラハラしますね・・・。
でもその影には、借金のため身売りさせられようとしている娘の悲しい運命が・・・。
茜はものすごく活発で言葉も早い。
ちょっぴり積もった雪の上で転げまわるので、
体中どろどろになって、大人たちをうんざりさせたりします。
(北海道のさらさら雪で遊ばせてあげたい!!)
一方伊与太はおとなしく言葉も遅い。
実際茜のほうが少し歳上なので仕方ないところはあるのですが。
でもちょっぴり気持ちがくさくさしているいなみさん(茜の母)が
茜を連れてお文さんのところに立ち寄り、
女同士のおしゃべりでストレス解消、などというシーンも、いいですねえ。
母二人のおしゃべりの間、子供たち二人は仲良く家の前で砂のお山作り。
肉食女子と草食男子か。
さて、この先どうなりますか。
表題の「雨を見たか」は、龍之進が心のなかの暗く寂しい気持ちを
「雨」と言い表しているのです。
空は晴れても心のなかは土砂降りということもあるよね・・・と。
着々と大人への階段を登っている龍之進。
こんなシーンもあります。
伊三次が珍しくドジを踏んでガセネタを掴んできた。
そのことを龍之進が軽蔑したように見るのです。
幼いころから知っている龍之進。
そして、身分が下である伊三次に対してもどこか頼りにしている感のあった龍之進が、
この時初めて上から目線。
伊三次はそのことにショックを受けてしまうのです。
でも、どうにもならない当時の身分制度と言うもの。
落ち込む伊三次をお文さんがそっと慰めます。
「わたしも雨を見ましたよ。」
龍之進にそのように言う伊三次は、ちょっぴり割りきりましたね。
「雨を見たか 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理 文春文庫
満足度★★★★☆
![]() | 雨を見たか―髪結い伊三次捕物余話 (文春文庫) |
宇江佐 真理 | |
文藝春秋 |
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北町奉行所町方同心見習い組には六人の若者がいる。
伊三次の仕える不破友之進の嫡男、龍之進を始め、
緑川鉈五郎、春日多聞、西尾左内、古川喜六、橋口譲之進という面々。
俗事に追われ戸惑いながらも、江戸を騒がす「本所無頼派」の探索に余念がない。
一方、伊三次とお文の関心事は、少々気弱なひとり息子の成長だが。
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シリーズ7巻目。
前巻に引き続き、不破龍之進たち同心見習い組と、
江戸を騒がす「本所無頼派」のことが縦軸となってストーリーは進みます。
この辺り、伊三次はすっかり脇役的存在になっているのですが・・・。
いや、私自身龍之進くんの大ファンになってしまっているので、別に構いません。
若いっていいなあ・・・と、
つい、いかにもオバサン的感慨にふけってしまいます。
また、龍之進の幼い妹・茜と伊三次の息子・伊与太の様子もとっても微笑ましい。
冒頭で茜は人買いにさらわれかけるのですが、なんとか無事でした。
ハラハラしますね・・・。
でもその影には、借金のため身売りさせられようとしている娘の悲しい運命が・・・。
茜はものすごく活発で言葉も早い。
ちょっぴり積もった雪の上で転げまわるので、
体中どろどろになって、大人たちをうんざりさせたりします。
(北海道のさらさら雪で遊ばせてあげたい!!)
一方伊与太はおとなしく言葉も遅い。
実際茜のほうが少し歳上なので仕方ないところはあるのですが。
でもちょっぴり気持ちがくさくさしているいなみさん(茜の母)が
茜を連れてお文さんのところに立ち寄り、
女同士のおしゃべりでストレス解消、などというシーンも、いいですねえ。
母二人のおしゃべりの間、子供たち二人は仲良く家の前で砂のお山作り。
肉食女子と草食男子か。
さて、この先どうなりますか。
表題の「雨を見たか」は、龍之進が心のなかの暗く寂しい気持ちを
「雨」と言い表しているのです。
空は晴れても心のなかは土砂降りということもあるよね・・・と。
着々と大人への階段を登っている龍之進。
こんなシーンもあります。
伊三次が珍しくドジを踏んでガセネタを掴んできた。
そのことを龍之進が軽蔑したように見るのです。
幼いころから知っている龍之進。
そして、身分が下である伊三次に対してもどこか頼りにしている感のあった龍之進が、
この時初めて上から目線。
伊三次はそのことにショックを受けてしまうのです。
でも、どうにもならない当時の身分制度と言うもの。
落ち込む伊三次をお文さんがそっと慰めます。
「わたしも雨を見ましたよ。」
龍之進にそのように言う伊三次は、ちょっぴり割りきりましたね。
「雨を見たか 髪結い伊三次捕物余話」宇江佐真理 文春文庫
満足度★★★★☆