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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ゴスフォード・パーク

2016年02月22日 | 映画(か行)
普段は意識されないけど、ちゃんと「いる」人々



* * * * * * * * * *

本作、実は公開時に見たのですが、大半を寝て過ごしてしまい、
それなのにラストだけしっかり見て、犯人だけわかってしまったという
最悪の体験をした苦い思い出があります。
それがもう15年も前だというのにも我ながら驚いてしまうのですが、
遅まきながらこのたびリベンジ。
(が、それにしても何故かやっぱり犯人だけ覚えているのだなあ・・・残念)


その15年前、よほど体調が悪かったのだろうと私は思っていたのです。
決して作品のせいではないのだろうと・・・。
しかしこのたび見てもやっぱり少し眠気が・・・。
が、まあ一応内容は把握しました。
全体の色調が暗いし、登場人物があまりにも多いので、
誰が誰やらわかりにくい(特に私は見分けが苦手!)、
こんなところが眠さを誘う要因のようです。



が、それにしても興味深いところはたしかにあります。
1932年英国。
郊外の貴族のカントリーハウスである、ゴスフォード・パークに、
何組かのお客が狩りのために集まりました。
貴族たちとその召使いたち、
そしてハリウッドから来た映画プロデューサーたち。
ところがまもなくこの館の主が変死。
果たして犯人は誰?というミステリ。
舞台はあのアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」に近いのですが、
本作はそういうミステリにつきもののおどろおどろしさがありません。
名探偵も出てきません。
この館に集う様々な人達の言動を見聞きする、伯爵夫人の付き人であるメアリーが、
密かに真相を突き止める、そういう物語です。


特筆すべきなのは、通常このようなストーリーに召使はほとんど登場しませんが、
本作は彼・彼女らがむしろ主役なのです。
実際には貴族の優雅な生活を支える下層の人々がたくさん働いています。
召使、キッチンのまかない、それぞれのお客の付き人・・・。
地下であったり、屋根裏であったりしますが、
彼らの生活スペースははっきりと貴族たちとは隔てられているのです。
そしてこの事件の真相も、そういう貴族と下層の人々の関係性が深く絡んでいるという、
考えさせられてしまうストーリー。


ハリウッドから来た客の一人がピアノの弾き語りをはじめます。
貴族たちはトランプをしながら、半ばうるさそうにしているのですが、
ドアの影や階段の下で、召使いたちがうっとりと聞き惚れています。
普段の生活の中で、ゆっくりと生の音楽を聞くなどということがほとんどないのでしょう。
興味深いシーンでした。


時代は二次大戦前夜。
イギリスの貴族と言っても、もうほとんどが没落しかけています。
こんなに大勢の人を雇わねばならないので、確かにやりくりは大変そう。
でも体面は取り繕わなければならないし、
なのに気持ちだけは尊大で傲慢。
こうした貴族の生活を皮肉に描いてもいるわけです。
この階級の有り様を、アメリカ人たちが珍しそうに見ているというのもまた面白いですね。
このように実際、良い作品ではあるのですが・・・
あまりにも刺激が少ない。
ちょっと残念。

「ゴスフォード・パーク」
2001年/アメリカ/137分
監督:ロバート・アルトマン
出演:ケリー・マグドナルド、マイケル・ガンボン、クライブ・オーウェン、マギー・スミス、ヘレン・ミレン、クリスティン・スコット・トーマス
「ゴスフォード・パーク」
身分制度の問題度★★★★☆
ミステリ度★★★★☆
満足度★★★.5