映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

グランド・マスター

2014年08月27日 | 映画(か行)
格調高く、強く、美しく



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カンフー映画は、特別興味があるわけではありませんが、
ウォン・カーウァイ監督作品ということで、拝見。
ブルース・リーの師匠として知られる伝説の武術家イップ・マンの物語です。



1930年代中国。
引退を決意した八卦掌の宗師ゴン・バオセンは、
一番弟子のマーサンと詠春拳の宗師イップ・マン(トニー・レオン)を
後継者の候補と考えていました。
しかしそんな時、日中戦争が勃発。
それが彼らの運命をも変えていきます。



マーサンがバオセンを殺害。
バオセンの娘であるルオメイ(チャン・ツィイー)は
ライバルでもあるイップ・マンに惹かれていたのですが、
その心を封印し、父の復讐を誓います。
本作はイップ・マンの半生を描いているようで、
実はイップ・マンとルオメイのラブストーリーが軸となっています。



超絶的な技を持った男女が、
店の中の物を壊さないという制約の中で戦いを繰り広げる。
お互いの力と技を確かめ合うように。
それはまるでダンスをしているようでもあり、
言葉を交わさずとも、互いのすべてが分かり合うようでもあります。
空中で互いの身をかわす刹那、
互いの眼差しが交差。
それが、最後まで体を重ねることのない二人の、
最も深く結びつくシーンなのでした。
・・・痺れます。



ほの暗い画面に美貌の男女二人の顔をアップで浮かび上がらせる。
いいですねえ。
戦闘も雨のしずくも、計算されて芸術的に美しい。
まあ、ストーリー自体は平板かもしれませんが、
画面の美しさ、格調の高さは格別です。


結局日中戦争が、武術家たちの生きる場所を奪ったというわけですが、
でも反戦映画ではないので、そのへんはあっさり。
戦後、香港と内陸との遮断があって、
イップ・マンは香港に残り、
だからこそ、ブルース・リーのカンフー映画へとつながっていくのです。
なるほど、歴史ですねえ・・・。


「グランド・マスター」
2012年/中国/123分
監督・脚本:ウォン・カーウァイ
出演:トニー・レオン、チャン・ツィイー、チャン・チェン、マックス・チャン、ワン・チンシアン
歴史発掘度★★★★☆
映像美★★★★★
満足度★★★☆☆