物言わぬ女の情念
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先日見た「ブライトスター」のジェーン・カンピオン監督作品です。
19世紀半ば、スコットランドに住むエイダ(ホリー・ハンター)は、
結婚のために娘を連れてニュージーランドに渡ります。
スコットランドからニュージーランドとはまた大胆な、と思いましたが、
ニュージーランドはカンピオン監督の母国なのですね。
なるほど。
今やニュージーランドは自然が美しい観光の名所という印象ですが、
この当時のニュージーランドは原住民の住む未開の地。
彼女が嫁いだ夫・スチュワート(サム・ニール)はそこの入植者で、
土地の売買をしているようです。
エイダは口を利くことができず、
父親から厄介払いのようにこの地に嫁がされたようです。
6歳から自分の意志で話すことを止めたというエイダは、
ピアノを弾くことで自分の感情を示すのです。
いわばピアノこそが彼女の声であり分身。
ところがスチュワートは重すぎるから、と、
ピアノを海岸へ置き去りにしてしまいます。
確かに家まではろくな道路もなく、
ぬかるんだ森のなかを長く歩かねばなりません。
さて、スチュワートの友人ベインズが、
土地と引き換えにピアノを譲り受け、
自分の小屋にピアノを運び入れます。
そしてエイダにピアノを習うこととして、彼女を家に引き入れるのですが・・・。
ピアノの鍵盤を1つずつエイダに返すとい約束で、
ベインズはピアノを弾く彼女に触れていく。
おずおずと、はじめは見つめるだけ。
上着を脱がせ、肩に触れ・・・。
エイダは始めのうち、そんなベインズに嫌悪を覚えています。
ピアノを取り戻すためにこんな破廉恥なことをしているのだ・・・と、
自分に言い聞かせている。
しかし、ベインズの視線に、触れる指に、
興奮を覚えずにいられない。
次第にベインズのもとに通う意味の主客が転倒していく・・・。
なんと見事な性愛の描写。
プラトニックとは対局の愛の形がそこにあります。
エイダが物言わぬからこそ、余計にその情念が引き立てられる。
その様子を密かに見つめる娘の視線もまたちょっぴり怖いのですよ・・・。
そして妻の愛を全く受けることができない夫・スチュワートの激情もまた・・・。
う~ん、唸ってしまいたくなるほどの、すごい作品でした。
最後は、結局エイダが“分身”であるピアノと運命を共にするのか?と思わせ、
意外な結末を見せるところがなんとも心にくい。
計り知れないエイダの意志の強さは、
確かにこういうふうに作用するはずです。
映画ファンを自称するなら、本作は外せない作品でした。
見てよかった~。
あのふんわりドレスのスカートの下のホネ
(クジラのひげで作るのではなかったでしたっけ?)を丸見えにして
スカートをまくり上げ、
男が顔を突っ込むというシーン。
なんて淫らなんでしょ・・・。
夫が逆上するのも無理はないと思う・・・。
「ピアノ・レッスン」
1993年/オーストラリア/121分
監督・脚本:ジェーン・カンピオン
出演:ホリー・ハンター、ハーベイ・カイテル、サム・ニール、アンナ・パキン
確固たる女性の輪郭★★★★★
大人の性愛度★★★★★
満足度★★★★★
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先日見た「ブライトスター」のジェーン・カンピオン監督作品です。
19世紀半ば、スコットランドに住むエイダ(ホリー・ハンター)は、
結婚のために娘を連れてニュージーランドに渡ります。
スコットランドからニュージーランドとはまた大胆な、と思いましたが、
ニュージーランドはカンピオン監督の母国なのですね。
なるほど。
今やニュージーランドは自然が美しい観光の名所という印象ですが、
この当時のニュージーランドは原住民の住む未開の地。
彼女が嫁いだ夫・スチュワート(サム・ニール)はそこの入植者で、
土地の売買をしているようです。
エイダは口を利くことができず、
父親から厄介払いのようにこの地に嫁がされたようです。
6歳から自分の意志で話すことを止めたというエイダは、
ピアノを弾くことで自分の感情を示すのです。
いわばピアノこそが彼女の声であり分身。
ところがスチュワートは重すぎるから、と、
ピアノを海岸へ置き去りにしてしまいます。
確かに家まではろくな道路もなく、
ぬかるんだ森のなかを長く歩かねばなりません。
さて、スチュワートの友人ベインズが、
土地と引き換えにピアノを譲り受け、
自分の小屋にピアノを運び入れます。
そしてエイダにピアノを習うこととして、彼女を家に引き入れるのですが・・・。
ピアノの鍵盤を1つずつエイダに返すとい約束で、
ベインズはピアノを弾く彼女に触れていく。
おずおずと、はじめは見つめるだけ。
上着を脱がせ、肩に触れ・・・。
エイダは始めのうち、そんなベインズに嫌悪を覚えています。
ピアノを取り戻すためにこんな破廉恥なことをしているのだ・・・と、
自分に言い聞かせている。
しかし、ベインズの視線に、触れる指に、
興奮を覚えずにいられない。
次第にベインズのもとに通う意味の主客が転倒していく・・・。
なんと見事な性愛の描写。
プラトニックとは対局の愛の形がそこにあります。
エイダが物言わぬからこそ、余計にその情念が引き立てられる。
その様子を密かに見つめる娘の視線もまたちょっぴり怖いのですよ・・・。
そして妻の愛を全く受けることができない夫・スチュワートの激情もまた・・・。
う~ん、唸ってしまいたくなるほどの、すごい作品でした。
最後は、結局エイダが“分身”であるピアノと運命を共にするのか?と思わせ、
意外な結末を見せるところがなんとも心にくい。
計り知れないエイダの意志の強さは、
確かにこういうふうに作用するはずです。
映画ファンを自称するなら、本作は外せない作品でした。
見てよかった~。
あのふんわりドレスのスカートの下のホネ
(クジラのひげで作るのではなかったでしたっけ?)を丸見えにして
スカートをまくり上げ、
男が顔を突っ込むというシーン。
なんて淫らなんでしょ・・・。
夫が逆上するのも無理はないと思う・・・。
ピアノ・レッスン DVD HDリマスター版 | |
ホリー・ハンター,ハーヴェイ・カイテル,サム・ニール,アンナ・パキン | |
東宝 |
「ピアノ・レッスン」
1993年/オーストラリア/121分
監督・脚本:ジェーン・カンピオン
出演:ホリー・ハンター、ハーベイ・カイテル、サム・ニール、アンナ・パキン
確固たる女性の輪郭★★★★★
大人の性愛度★★★★★
満足度★★★★★