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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「キネマの神様」 原田マハ 

2014年07月28日 | 本(その他)
映画愛が感じられるブログを・・・

キネマの神様 (文春文庫)
原田 マハ
文藝春秋


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無職の娘とダメな父。
ふたりに奇跡が舞い降りた! 
39歳独身の歩(あゆみ)は突然会社を辞めるが、
折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。
ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに、
歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。
"映画の神様"が壊れかけた家族を救う、
切なくも心温まる奇跡の物語。
第8回酒飲み書店員大賞受賞作!


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映画ブログが登場するので、個人的には非常に興味をそそられます。
本作でブログ記事を書くのは、79歳、円山郷直。
趣味はギャンブル。そして映画。
とにかく子供の頃から無類の映画好き。
同じく映画好きの娘である歩(あゆみ)は、
父の何気なく書き散らした「ニュー・シネマ・パラダイス」の感想めいた文章に心惹かれます。
そんなことが発端で、老舗の映画雑誌「映友」の運営するブログに郷直の文章を載せることに。
実のところブログが何ぞやも知らない郷直氏であったのですが。


郷直氏の文章は、「評論」とは違うのです。
著者は娘・歩の視点を借りて、これは淀川長治さんのようだと述べています。
淀川さんのような評論こそが映画ファンの心にも届くのではないか。
「解釈」ではなくて、「理解」だ。
映画に対する深い愛情が伺える。
ここのところで私は、ウン、それそれ、と思わず膝を叩くのです。
私も何も難しい評論を書きたいのではない。
淀川長治さんのように、愛を持って映画を語り、
その映画の良い所を人に知ってもらいたい・・・
そんな気持ちから始めたのでした。
しかし近頃本当にそうなっているだろうかと自戒の念も湧いてきます。
自らの原点を振り返るための良い機会となりました。


本作中のブログは国内でも多くの人の共感を呼びましたが、
なんと米国にも羽を広げます。
そして、謎の米国人とのやり取りがまた評判を呼び・・・。


やっぱり映画はいいなあ・・・。
毎日映画浸りで暮らせたらいいのに・・・。
そんな風に思ってしまう本なのでした。

「キネマの神様」原田マハ 文春文庫
満足度★★★★☆