映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アルマジロ 

2014年07月29日 | 映画(あ行)
リアルを超えて非現実的



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2009年、アフガニスタン最前線アルマジロ基地に派遣された
若きデンマーク兵たちの7ヶ月に密着したドキュメンタリーです。
よくもこれほどまでの危険地帯に同行し、
撮影を続けられたものだと驚かされます。



それは彼らが、国の実家を発つところから撮影されていますが、
その時の彼らはただ冒険心に燃えるノーテンキな若者でした。
デンマークは国際治安支援部隊の支援国として、
彼らをアフガンに派遣したのです。
アルマジロ基地はタリバンの拠点までわずか1キロ。
死と隣り合わせの地です。
地元住民を守りながらタリバン軍を一掃するのが使命。
しかし、彼らにも地元民とタリバンの区別は容易ではないのです。
それを区別するのは武器を持っているか持っていないかだけ。
根底に緊張や恐怖をたたえながらも、
無為に退屈に過ぎていく日々。
しかしその合間に戦闘があります。
生死が紙一重という戦闘のなかで、
極度の興奮状態に陥っていく彼ら。
戦争が人をどう変えていくのか、納得の行く答えを私達に突きつけます。
7ヶ月が過ぎて帰国した彼らですが、
本作ラストで再びアフガンへ赴くものが多かったことを告げています。
その戦闘の興奮状態が、まるで麻薬のように彼らの心を蝕んでしまったかのようです。



現地住民の淡々とした様子も印象に残ります。
彼らにとってはタリバンも支援部隊も、どちらも迷惑で災難。
戦闘によって家や家族や家畜を失った彼らは、
しかし怒りを露わにもせず、
まるで自然災害にでもあったかのように諦めているようでした。
(実際は、支援部隊から被害の弁済金が支給されているのですが。)



本作でこの基地に来ているのはデンマークとイギリスの兵。
つい想像してしまいました。
そう遠くないうちに、日本もこのような場に武器を持った兵を送り出すのではないかと・・・。
そうではなく、もっと違う形で現地の人々を助ける方法があるような気がします。



アルマジロ アフガン戦争最前線基地 [DVD]
ドキュメンタリー映画
角川書店


「アルマジロ」
2010年/デンマーク/105分
監督:ヤヌス・メッツ

緊迫度★★★★☆
満足度★★★★☆