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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「我が家の問題」奥田英朗

2014年07月20日 | 本(その他)
相手の気持に寄り添うこと

我が家の問題 (集英社文庫)
奥田 英朗
集英社


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夫は仕事ができないらしい。
それを察知してしまっためぐみは、
おいしい弁当を持たせて夫を励まそうと決意し――「ハズバンド」。

新婚なのに、家に帰りたくなくなった。
甲斐甲斐しく世話をしてくれる妻に感動していたはずが――「甘い生活?」。

それぞれの家族に起こる、ささやかだけれど悩ましい「我が家の問題」。
人間ドラマの名手が贈る、くすりと笑えて、ホロリと泣ける平成の家族小説。


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奥田英朗による「家族」のストーリー。
どこにでもありそうな家族ですが、それぞれに『問題』を抱えています。

新婚でよく気のつく妻なのに、夫は帰宅恐怖症。

夫が実は会社では仕事のできないダメ社員だと知ってしまった妻。

両親が離婚しようとしているのに気づいてしまった娘。

夫がUFOを見たと言い出し、困惑する妻。

札幌と名古屋に実家がある東京の新婚夫婦の帰省は?

ランニングに夢中になる作家の妻。


本作でいいなと思うのは、
それぞれの問題に気づいた人々が、
決してそれを投げ出したり、逃げ出したりせず、
真摯に何とかしようとする所。


例えば夫がダメ社員と知った妻は、夫の職場での居心地の悪さを察し、
せめて食事のときだけでも美味しく楽しく過ごして元気をだして欲しいと、
お弁当作りに励みます。


両親の離婚の危機に直面する娘は、友人たちをリサーチ。
親の夫婦仲は?
実際に親が離婚している人の気持ちは? 
いろいろな家族の形があって、たとえ離婚しても子供はそれを受け入れ、乗り越えていく。
彼女は離婚阻止のために必死になったりはしませんが、
親もまた感情のある人間ということがわかってきて、
親の離婚を理解する気持ちを持っていきます。


夫がUFOをみた、と突然言い出したら?
しかも毎日のように交信しているなどと・・・
妻はそれが夫の職場でのストレスによるものだということを突き止め、
ある夜思い切った行動に。


それぞれが問題を持つ相手の気持ちに寄り添い、
理解して、包み込もうとする・・・。
愛を感じますねえ。
結局、本当に夫はダメ社員なのか。
本当に両親は離婚しようとしているのか。
そういう結論めいたことは書かれていないのですが、
それはどうでもいいことなのでしょう。
問題に対して、家族がどのようにアクションしたのか。
そこが大切なストーリーなのです。
こんな風に受け止めてくれる・・・家族。
読後感も心地よい、おすすめの一冊。

「我が家の問題」奥田英朗 集英社文庫
満足度★★★★☆