映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

フラガール

2007年07月01日 | 映画(は行)

新しいことに踏み出す勇気。まず、それが大切なのかも。
楽しい映画なのに、なぜが泣かされる。

             * * * * * * * *

以前から見たいと思っていたのですが、なぜか見損ねていて、やっとDVD鑑賞となりました。
舞台は昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。
時代は石炭よりも石油の需要が増大してきていて、ここの炭鉱も規模を縮小し、人員削減を余儀なくされている。
さて、ブログを見ている多くの方にはまだ生まれる前の出来事かも知れませんが、私はもう小学生の頃なんで・・・(年がばれるなっ!)なんだか、懐かしく感じました。
それでも都市部育ちのもんで、炭鉱のことはよく分かりませんが。
どこの家にも石炭庫があって、秋になると、トラックで石炭を運び入れる風景は風物詩。
(これも、北国だけのことでございましょうが・・・)。
そのような手間もかからず、煙突掃除の必要もほとんどない、石油ストーブに買い換えたのも、確かにこんな時期だったかも知れません。


さて、そこでさびれ行く石炭産業と、リストラであぶれた雇用の解決策として、レジャーセンター「常磐ハワイアンセンター」の計画が立てられたわけです。
今でこそ、このような発想は当たり前にありますが、当時としてはすごく画期的だったのではないかと思います。
だからこそ、そんな怪しげな計画には賛成できないと、町の人たちは猛反対。
仕事とは額に汗して、こつこつと耐えてするもの・・・。
レジャーセンターだ、フラダンスだと、そんな軽薄なことを仕事にするのは許せない。そんな雰囲気。
また、これまで長く続けてきた炭鉱の仕事に誇りをもっていることも分かります。

このようななかでは当然かもしれませんが、新しいことにまず踏み出したのは、心が柔軟で、希望の芽を持っていた高校生の女の子でした。
何かを変えようとするとき、新しいことをしようとするときには、本当にこれでいいのか、先が見えない。
周りの人々も無理解。
そのような中で一歩を踏み出すのはとても勇気がいることだけれど、やがてその一生懸命さは、周りにも伝わるものなんですね。
時には、未知のことにも踏み出す勇気が必要。

松雪泰子演じるフラダンス講師のまどかは、こんな田舎町まで流れてこなければならなかった自分に絶望しており、すっかり投げやりになっていました。
しかし、少女たちのひたむきさに、次第に彼女自身も突き動かされ、やりがいを見出し、彼女自身も成長してゆきます。
はじめに彼女が見せたダンスは、少女たちを感動させるに足る、すばらしいものでした。
腰のフリももちろんですが、あの柔らかに感情を表現する指先の動きが素敵だなあと思いました。
そして、センター完成で披露するフラガールたちのダンスも、見事!
このダンスの完成度が、やはりこの映画の出来を左右しますよね。
相当厳しいレッスンの日々だったのではと、察するところです。
アッパレ、アッパレ!!
ということで、悲しい出来事といえば、炭鉱事故で亡くなった人がいるということくらいなのに、なぜかぽろぽろ泣けちゃったのですね。
何かをやり遂げようとするみんなの気持ちが一つになる。
私は「みんな一緒に盛り上がる!」という体育会系のノリはちょっと苦手なのですが、でも、感動してしまいました・・・。

ちなみに、このハワイアンセンターは、現在も「スパリゾート・ハワイアン」として営業中だとか。競合が激しくて苦戦していそうですが、どうなんでしょう?

2006年/日本
監督:李 相日
出演:松雪泰子、豊川悦司、蒼井優、岸部一徳

「フラガール」公式サイト