映画と本の『たんぽぽ館』

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「聖なる遺骨」 マイクル・バーンズ

2007年07月23日 | 本(SF・ファンタジー)

キリストに遺骨はアリか?!
キリストの遺伝子の謎とは?!

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「聖なる遺骨」 マイクル・バーンズ 七搦理美子 訳 ハヤカワ文庫

ダビンチ・コード以来、このような歴史もの、特にキリスト教関連のものは、多く見られます。
ところが、これがまた、二番煎じなどではなくて、とても興味深く、楽しく読めました。
この題名で、そのものずばり。
イエス・キリストの遺骨をとりまくストーリー。
キリストの遺骨?!
ちょっと、盲点でしたね。
聖杯とか、イコンとか、キリストにまつわるモノの、伝承・行方を捜すストーリーはそれこそ、以前から数多くありました。
この本は、遺骨。
そのものずばり。
なぜはじめから、それを探す物語がなかったのかといえば、それは、ないはずのものだからなのですね。

息を引き取り、十字架からおろされたイエス・キリストは、その後復活し、天に昇っていった。
それが聖書による正しい教えです。
遺骨など残っているはずがない。
でも、現実的に考えれば、とりあえず、人々に教えを説き、磔刑に処されて死んでいったイエス・キリストは実在の人物で、そうであれば、どこかに遺骨が残っていてもおかしくはありません。
ただ、このような言い方は、正統なキリスト教の教えからすると大逆的。
そもそも、キリストは神なのだから、人間とは違う。
遺骨などあるわけがない。
このような宗教的妄執をまもりつづけるバチカン側と、コンピュータを駆使し、DNA鑑定など最新技術で科学的に謎を解き明かそうとする主人公たちとに敵対関係が生じ、サスペンス的展開を見せます。
キリスト教を語るとき、やはり省くことはできないらしい十字軍やテンプル騎士団の話も興味深い。

このなかで、キリストが受けた磔刑について実に詳しい描写があります。
ちょっとショッキングです。
どのような経緯を経て死にいたるか。
それはできるだけ苦痛が長く続くようにという残酷な刑。
以前見た「パッション」の映画もなかなか強烈でしたが、ここでまた、医学的見地から説明されるといっそう怖さが増します。
こんな死に方をした神様は他にはいませんものねえ・・・。
ほぼ完全に残っていた遺骨をコンピューターが解析し、生前の人物像の3D映像ができあがります。
その姿は・・・?! 
そしてまた、解き明かされた、キリストのDNAの謎とは?!。
やはり神は神であったらしい・・・。
物語としては最上のラストのように思います。

満足度★★★★★